渋谷で張り切る『「おさるのジョージ」キッチン』 多くが食べて夢見て、作品の奥深さを感じて
ストーリーへの浸り方というのは色々ある。このカフェは老若男女をそこへと“没入”させる優しさと思いやりがある。「おさるのジョージ」キッチンのことである。これまでもその時々、その場所、季節に合わせて新しいモチーフを持ち込んでくれた。そして、2023年夏、満を持して張り切ってやってきたのは大都会、渋谷。「Curious George Kitchen」(「おさるのジョージ」キッチン)」はその名所で華々しく、鮮やかに夏の時を迎える。
・ずっとストーリーは続いていく
初めに「おさるのジョージ」について触れておく。1941年に、刊行された絵本「Curious Geoge」に登場するキャラクターである。その後日本でも1954年に出版され、歴史は長く、世代を超えて支持されてきた。特に2008年からはNHKEテレでTVアニメーションのシリーズがスタート。ゆえに絵本、アニメ双方から接点が生まれて活気付いている。2021年に80周年を迎えてなお、この“おさる”は元気が良い。
そして僕がこの日、足を運んだのは「RAYARD MIYASHITA PARK」のsouth2F。渋谷駅からすぐの所にその建物があって、入り口にあるエスカレーターで2階に上がれば一目でわかるはずだ。大きく開かれた空間の先にこのカフェがあって、一際目立っている。オープンは2023年7月5日だけど、少し早めに見させてもらった。
そもそもダイニングカフェのコンセプトは何か。おさるのジョージが黄色い帽子のおじさんのために、腕を振るって準備をしたのがこのカフェ。これまで「東京ソラマチ」で期間限定オープンして、行列ができるほどの人気を博した。まさに、そこで成功を収めたジョージはこの夏に備えていたのだ。それが、渋谷の「おさるのジョージのダイニングカフェ」であり、その時よりもすっかり料理も上手になって、自信満々。もっと喜んでもらいたいと、張り切るわけである。
・店からストーリーへの敬意を感じる
そんな風にして、絵本などのストーリーを尊重していて、成立するのがこの拠点なのだ。このカフェの素晴らしいのはこの拠点単体でも別のストーリーが広がっていて、感情移入できることにある。だから、演出に触れ、飲食を堪能するほど、それらが絵本などへの興味、関心へと誘う。その独自のストーリーは絵本風のメニューの最初のページに記載。それらがこのカフェのメニューとリンクしている。
カフェは明るく太陽の光に照らされ、開放的。目を凝らすと、やっぱり、、、。ジョージの跡があちらこちらに。そこに姿はなくとも存在感を持って、僕らをおもてなししてくれる「ジョージ」だ。
すやすや、寝ている。。。。ここで僕が注文した『「ジョージ」オムライス&ハンバーグプレート』を見て、思わずニッコリ。写真を見ての通りである。
顔と体の部分はチーズとケチャップライスでできている。そこに布団に見立てた卵焼きが覆い被さっている。それでいて、味にも手を抜かない。それがこのカフェの真骨頂である。オープンに合わせてテーマを考え、そこから専門のスタッフと味と世界観とを考慮しているからこそのレベル感。味も格別であり、心もお腹も満たしてくれる。
・作品を強力に支える深い味わい、込められた思い
素敵だなと思うのは、ジョージが作品と同様に、このカフェでも想像を超える楽しさを提供してくれていること。「プリンアラモード」というメニューでそれを思う。その名の通り、プリンがはいっている。上にはクリームの他、ロールクッキーやりんごなどがあって、カップを飛び出さんばかりのボリュームだ。
すごいですね。スタッフの人にそう言いつつ、スプーンで中身を取り出し、口に入れると、あれ???
プリンの下には更にブラウニーが入っているのだ。この事はメニューにも触れられていない。だから何故か、ニンマリしてしまう。得した気分で口の中では3つの甘さが贅沢に折り合う、至福の時。そのことに気づくや否や「これ、とても美味しいんです」とスタッフ。うなづく僕。
嬉しくなるお客さんを、微笑むジョージの姿が思い浮かぶようである。ジョージらしい、想像を超えた楽しみをメニュー。それはここでも実践されているわけだ。これこそが、このカフェの最大の魅力。作品と連携してカフェを展開することの意義ではないかと思う。
それは、絵本やアニメも十分、人の心を打つものだ。けれど、そこだけでは伝えきれない、感動があるのだ。しかし、それは逆にいうと、ここに関わる人たちによる作品へのリスペクトがあって成立すること。それぞれが補完し合うことで、魅力的な世界観を生み出しているという現実が大事なのである。
・夏仕様にチェンジしているのもファンには嬉しい
さて、僕は以前、この期間限定カフェについては、東京ソラマチでやっていた時にも伺っている。しかし、その時とは絵のモチーフも変えていて、流石だなと思った。この日、注文した「アートコレクションラテ」も絵柄がチェンジされていた。そのラテアートは夏用のかき氷のメニューを手にしたジョージになっているのである。
実際に、このカフェにも「いろどりフルーツのかき氷」があって、常にストーリーと現実が紐づく。このメニューすら、起点となっているのは本家のストーリーで奥が深い。
「夏の雪だるま」というアニメの話があり、ジョージが砂で雪だるまのようなもの作ろうとしているというのだ。そこに着想を得て、生まれたこのメニュー。よく見れば、黄色い帽子のおじさんを連想させる帽子とネクタイがあって、そこに愛がある。
・グッズにも夏エッセンスと新たなモチーフ
そして、物語性を感じた後はそれを思い出に変えるべく、グッズを購入するのもいいだろう。オープンに合わせて、新しいアートを取り入れた新商品や、お土産にふさわしいものを並べた。体験はグッズにより深い価値を持ったものへと昇華する。
例えば、筆のようなフォルムをしたパッケージと、ペンキを思わせる飴玉。これは、カフェ内に至る所、見られるジョージのペンキの足跡をリンクしているわけだ。
改めて、絵本やアニメの作り手の思いに溢れていることを痛感する。そして、それにリスペクトするこの店のレシピ、内装に至るまでのプロデュース。何よりそれを楽しむ、老若男女の笑顔。それらが揃って成立するのがこのカフェだということ。世界中の人が集まるこの渋谷の地で、ジョージは老若男女、あらゆる人をレシピと演出で、キュートに物語とは違った形で人を虜にしてやまないのである。
今日はこの辺で。
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