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アートは僕らに気づきをくれる NEW ENERGY

 石だと思って、触ったらそれが和紙だった。奇想天外な発想は、ちぎり絵と建築という一見混ざり合わない二つの要素が重なり合って生まれたのだという。僕が訪れたのは、そんな素材や才能へのリスペクトを大事にするイベント『NEW ENERGY』。この精巧な作りの「Kay」というブランドに足を止めて、発想は無限であることを思い知らされた。

素材を活かした着想がアート

1.祖母との思い出がきっかけ

 実は、この石のようなインテリアは、容器になっている。製作者である内田久美子さんと話をしていると、彼女は「一級建築士」であると言われた。いよいよ、何が何だか分からなくなってきた。

 この容器が生まれる原点には、彼女の祖母がちぎり絵を趣味にしていたことがある。紙をちぎって風景画などを描いていた。彼女は、それを見ながら育ったから、その魅力や可能性を幼心ながら感じ取っていたのだ。

2.建築の知見が活きて進化する

 とはいえ、彼女が進んだ道は、先ほど書いた通り、建築の世界。一見遠ざかったように見えて、最近になってその二つが結びついたというわけなのだ。彼女はいう。「建築は好きだけど、そこでできないことをやってみたかった」と。

 実は、建築では、「モデリング」と言って、平面の建物データを立体的にする仕事にも関わっていた。だから、彼女は、立体物のイメージを3Dプリンターなどで作り出すのは得意だったのだ。

 そこで彼女はまず、この石のような容器の形を思い描く。次に、それを3Dプリンターでつくり、それを型にしたわけだ。あとはちぎり絵の要領で和紙を貼り付け、和紙の容器を作ったというわけだ。

 和紙はその性質として、水につけた後、乾かすとキュッと締まって硬くなる。だから、それを利用して、自ら作った型にあわせて、和紙からは想像のつかない形状に仕上げるのである。普段、平面を立体にしている専門性と、和紙の風合いによって、その石のような見た目をよりリアリティのあるものにしているわけである。

 つまり、祖母のちぎり絵の発想の立体版は、こうして彼女の建築での知見によって、時を超えて、進化することになった。

3.染めの必要性

  素材の良さという意味では、老舗の頑張りも目の当たりにした。時にアート的な思考は昔ながらの原料の良さに気づかせてくれる。僕が話したのは、「みやこ染」という創業明治5年の老舗の塗料会社。何故、彼らの商品が今につながる提案につながるのかというと、それがエシカルという文脈でのことなのだ。

 かつて、染めはごく一般的なことであった。彼らは当初、ガラス瓶に入った塗料を展開しヒットを掴んだ。それは、あらゆる家庭で浸透して、話題を集めることになったからだ。ところが、今やその習慣が薄れた。ところが、彼ら曰く、今また脚光を浴びていると。

 洗濯したことで色褪せた服などを今一度、その塗料を塗るのである。すると、新品のような美しくはっきりした色合いへと戻る。幸にして、今の時代は、物を大事にしようという風潮が強い。だから、彼らの塗料はそれらのニーズに応える受け皿となって、今こそ奮起するべき時と意気軒昂。

左がtint print set 右が染料を入れて振るほど生地に色がつく小瓶

4.時代を受け、自らも考える

 「みやこ染」は、だから今にふさわしい新商品を用意して、少しでも裾野が広がることを意図している。例えば、上左側の写真は、家でスクリーン版を作れる「tint print set」という。Tシャツなどの生地にオリジナルの柄をプリントできる。要は絵を描き、そこに微細な穴を作って、そこから染料を通すことで、その柄のイラストがプリントできる。下の動画を見ればわかるが、これも染めを応用したものである。

 また、上の右側の写真で、瓶の中に「生地」が入っていることにお気づきいただけるだろうか。実は、この中に染料を入れて、振ると生地から絵柄が浮かび上がるという設計。振る度合いによって、印象はまるで変わる。先ほどの絵柄をプリントできる商材然り、こういうエンタメ性を通して、染色の魅力を感じてほしいと語る。彼らは塗料を提案しつつ、同時に塗料を身近に使うシーンを提案して、生活に馴染ませる工夫をしているのである

奇抜な発想もまたアート

1.デジタルとアートを融合させて販促的要素も

 アートにデジタルが融合して、顧客体験を向上させるというのも面白い。AIで絵を認識させて、それと同じ作家のイラストをサイネージに映し出すという技術。下の写真のとおりである。

 未来のクリエイターの卵も。バンタンデザイン研究所の学生の姿もあって、彼ら自身が出品している。そのブランド名は「Fresh products」。シーズンテーマは「魚屋」だそう。

 海に生息する魚などの生物にインスピレーションを得て、それを連想させる色合いとモチーフである。販売もしているそうだが、プレスなど様々なところに貸出すなどして、着用を呼びかけ、服の可能性を模索するそうだ。

 その場でスルーできない存在感は「LOVE LOVE LOVE」。実は複数の尖った服を重ね着して、このようにアブノーマルなテイストを演出しているのだそうだ。全身、衣装で観にまとい、異彩を放つ。モデルを務める彼女自身がアートである。

 視点を変えて素材を活かし、発想を変えて楽しい雰囲気を醸成する。まさに、それがこのイベントの真骨頂であり、感度を刺激される空間であった。素材や才能を尊重することで、また一段と、感受性豊かに、世界の見え方が変わって見えそうである。

 今日はこの辺で。 

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