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キャラクター 業界の DX 革命 はいかにして推進するか Mintoの挑戦

 以前、僕はキャラクター業界の記者をやっていたから、最近ネット通販の人たちと話していて思う事があって、語弊を恐れず言えば、キャラクター業界の人たちの話すことは周回遅れなのかもしれない(怒られそうだが。。)ということだ。だから、先日立ち上がったばかりのMintoという会社の構想に関心を抱き、代表取締役 水野和寛さんを直撃したのだ。そこにキャラクター業界における DX 革命がありそうだと。©︎WeWork the ARGYLE aoyama

キャラクター の DX 革命 今こそデジタルで世界へ

1.合併に見るキャラクター新時代

 この水野さんは異なる業種から来ているから、常識にとらわれなく、その行動はライセンス事情を熟知する人にとっては型破りに映るはずだ。彼は10年前にクオンという会社を立ち上げ、下で詳しく話すがメッセンジャーアプリ上に存在するキャラクターをプロデュースして、マネタイズに繋げた。この業界では手付かずだったデジタルプロモーションをテコに、キャラクターのポテンシャルを引き上げ、ライセンスに繋げた先駆者だ。

 そのクオンは今月に入りwwwaapという会社と合併している。実はwwwaapには共通する点があって、それは同社がSNSなどで活躍するクリエイターに目を向け、そこでの影響力を広告に反映させて、マネタイズに繋げている事である。つまり、デジタルをテコに埋もれていたキャラクターの価値を拾い上げて、裾野を広げたという点で両社の価値観は繋がる。だから一緒になって何をするのかに僕は深い関心を持った。

2.DX にほはど遠い キャラクター 業界

 まず、僕が思うところ、これまでライセンスビジネスというのは当然にしてリアルの商品に紐づいて発展してきたから、視点がどうしてもリアルに依存しやすく、それが邪魔してデジタルは後付けになりがちだ。しかも、ここの難しさは深刻。なぜなら、ライセンスに詳しい人は、どうやってデジタルをテコにそのキャラクターの可能性を開花させればいいか分からない一方で、デジタルに詳しい人はライセンス事情を知らないのである。

 結果、世の中が圧倒的にスマホを持ち歩き、デジタルが日常に浸透しているというのに、キャラクター業界がポツンとそこに取り残されているようにも感じることがあって、だからデジタルをテコにキャラクター革命を起こす必要があると思っている。そこでシンパシーを感じるのがこの新生Mintoの姿勢である。

 前置きが長くなったけど、その水野さんの変わった経歴を辿ると、ライセンスを知らずに入りながらも、独自の切り口で後発ながら存在感を発揮し得た理由が見えてくるし、合併にかける意図も、未来のことも見えてくるのでピックアップしたいと思う。

チャットに可能性を見出した過去

1.チャットの価値を知ればこそのスタンプの意義

 まず、この日話して驚いたのは、正直言うと、当初水野さんはデジタルを使ってのキャラクター戦略を意図していなかったという事なのだ。話はそこから始まる。

 え?どういうことですか。

 遡ること、10年以上前に、彼が着目していたのは「チャット」である。だから、そのプラットフォームを構築したいと会社を立ち上げた。それは10年も前の話である。しかし、周知の通り、当時出てきた「LINE」が世の中を席巻することになって、それ自体は頓挫することになるが、そこで偶然の産物が生まれて、彼の人生は変わる。

 それがスタンプである。いまでこそ「LINE」などでは、コミュニケーションツールとしてスタンプが浸透しているが、最初の頃は、皆その使い道を理解しておらず、どう作ったらいいのかわかっていなかったのだ。早くから彼は、チャットの意義をわかっていたからこそ、そのスタンプの使い方もイメージができていたのだ。

2.スタンプで世界へ

 そのスタンプの持つ価値を見出していた彼は、それを「LINE」に限らず、世界中のありとあらゆるチャットアプリのプラットフォーマーに必要性を持ちかけて、自らの会社で手がけたスタンプを世界中のメッセンジャーアプリに浸透させるに至るのである。

 その中で自ずと彼の関心はそのスタンプの中身の精度へと向かうことになり、そこでキャラクターの表現力を実感するに至る。自社でキャラクターを作り出すのも自然の流れだった。ただ、その一方で問題もあった。

 というのも、キャラクターを始めその表現力に投資をしようとも、「スタンプに課金する」という習慣を持っているのは、日本と韓国くらいである。世界では無料が標準であって「さあ、どうやってマネタイズしよう」という有様であったと、彼は振り返り笑うのである。

デジタルにより自ら創造しマネタイズする

1.無料だからライセンスの価値に気づけた

 しかし、である。本当にわからないものだ。

 海外企業はスタンプの活用方法が理解できないので、彼の考え方には耳を傾け、彼自身はイメージもできていたから、自ら手がけたキャラクターとその表現で実践し続けていくことになった。すると、そのPDCAを繰り返していくうち、クオンが関わる無料のスタンプは浸透するだけにとどまらず、爆発的に海外でブレイクすることになりそのスタンプが「1億ダウンロード」も当たり前になって、転機を迎えるのである。

 ここが大事で初めてライセンス自体に関心を持ち始めるのである。もう少し踏み込んで言うならその影響力こそがライセンスの原点なのである。古くはディズニーのように映画、テレビや書籍など、ある一定の人にそれが認知されることにより、それがグッズを買うきっかけとなっていて、そこにマネタイズが生まれるわけである。

 鬼滅の刃のグッズが売れるのもその理屈だ。そこで、実は、先ほどのスタンプ上のキャラクターもいろいろなところで使われ、1億ものダウンロードをされることになると、今度は、そこで商品化をしようという声がメーカーから寄せられるようになり、結果的に、彼らはライセンスビジネスへと手を伸ばすことになって、今のポジションを得ることになったというわけだ。

2.彼らが築いた ライセンス の独壇場

 非常に興味深いのはデジタル上で自ら生み出してプロデュースできているので、売れるキャラクターを生み出す土壌があるということ。実は、最近では国内でライセンスを扱う企業もデジタル上のキャラのライセンス窓口を務める例は見られても、それ自体は作家の力をフックにしているだけで、デジタルに知見があるとは言えない。つまり、売れているキャラに目をつけているという意味では、やっていることは既存のライセンスのビジネスとそれほど、変わりはないのである。

 これは水野さん自身も話している通り、先ほどから話しているスタンプ上のキャラクター作成には、彼ら自身がかなりの投資をして、作成していることを明らかにしていて、だからその結果を出していて、そこの差は歴然としている。投資はしても、それが国の垣根を超えて展開できれば、国内キャラクターの比ではない。こうして彼らは、ライセンスビジネスにおいて、他が入りえぬ独壇場の立場を手にいれることになったわけである。

 自ずと海外でも人気が出るから、現地のメーカーとのやりとりが必要となり、中国、タイ、ベトナムと海外にも拠点を設けて拡大していく。結果的に、グローバルなライセンスビジネスをすることになって、むしろ国内のライセンス企業よりも幅広い展開を後発ながら押し進めることになったわけである。

ライセンスを知った後に何が起こる?

1.Minto誕生に込められた想い

 思いがけず、それで彼らはそれらのやりとりを通して、自らでライセンスのやり方を学ぶ事になって、プロデュースに始まり、ライセンスにつなげてマネタイズする独自のビジネスモデルを構築する事になったわけだ。

 そこで、なぜ、そのクオンが先ほど挙げたwwwaapと組むのだろうか。「クオンは自分でキャラクターを生み出し、その可能性を世界にまで広げて商品化も実現させてきたけど、それは世の中にいるクリエイターと対峙するものになってはいけないと考えていた」と水野さん。

 先ほどのwwwaapの話を思い出してほしいのだが、彼らは個々のクリエイターの価値を尊重する事でビジネスが成り立っている。アーティストが漫画など自らSNSで表現したものがフォロワーとなって価値が創造されているなら、それをそのまま、フォロワー数を指標として、広告価値に活かせばいいと考えたわけだ。それで、企業との橋渡しをして、マネタイズできれば、クリエイターの価値を等身大で還元できるのだから。

2.作家が正当に評価され、マネタイズできる

 元は僕が最初に関心を持ったのはwwwaapの方であって、それはアーティストや作家も所詮、プロ野球選手みたいなものであると思っていたからだ。ほんのごくわずかな人だけが、その才能を評価されてお金を手にできる。企業から選ばれるか選ばれないかで収入に雲泥の差があるわけで、そこにwwwaapは風穴を開けて、正当な価値を与えた。

 そこで、先ほどの水野さんの言葉である。クオンは自らキャラクターを描き起こしてきたから、個々のクリエイターと対峙する場所にいるけど、ここが明確に分かれるのは健全ではないと主張するのである。

 クオンは自らが投資して、世界中のメッセージアプリを土台に自社でキャラクターを生み出してその裾野を広げていたからこそ、「失敗の経験をするのは我々のキャラでいい。そこで立ち上がり成功まで導いたその事例を個々のクリエイターにフィードバックして、お互いに高め合う関係性を目指したい」と。それこそが全ての才能が活かされる世の中であるとしていて、ここは強く共感するのである。

かくして キャラクター DX は産声を上げる?

1.掛け合わせるほど意味を持つ

 両者の強みを相互に掛け合わせればこうなる。wwwaapで培った広告事業をもっと多くキャラクターに活用し、また自社開発、個々のクリエイター問わず、クオンが得てきた知見でプロデュースを行い、商品化されて世界中でマネタイズされる土壌を作る事。これこそがクリエイターのエコノミーとして輝く土台となって、彼らの意図する構想へと辿り着く。しかも、世界に向けた視野を持っているから、日本で売れなかったキャラも海外で可能性を見出すかもしれないし、それは海外発祥のキャラも然りである。

 ただ、彼らの真価を発揮するのはその先にあるように僕は思う。むしろ、この水野さんがやってきた事の意義は、今までないところに新しいマーケットを生み出した事にある。彼がこのMintoの代表を務めることになったのもその証で、上記でクリエイターエコノミーが醸成されれば、キャラクターを今度は次のフェーズへ。

2.新しいインフラでまた違った視点でキャラが巣立つ

 新しいインフラに乗せて、また新しいマーケットを生み出していく。そこにこそ、彼らの組んだ真骨頂があるというのは彼ら自身も認識しているところである。

 具体的に言えば、最近、ウェブトゥーンという「縦型の漫画」をご存知だろうか。日本では横型の漫画が主流だけど、世界的に見ると、スマホの影響もあり縦型が主流になってきている。まだ日本では浸透していないけど、それで羽ばたくクリエイターを生み出すのもいいだろう。

 または、デジタル上の固有の財産としてデザインを認識するNFTにチャレンジしてみるのもいいだろう。メッセンジャーアプリを土壌に多くのキャラが飛躍したように、どこからヒットが生まれるか分からない。だから、これからのキャラクターやクリエイターが活躍する土台づくりに積極的にチャレンジするというわけである。

3.ありきたりだがこれこそ、キャラクターのDX

 正直いうと、僕自身、DXという言葉は使い古されて好きではないのだが、これをわかりやすく言うなら、やっぱり「キャラクター業界のDX」だと思った。リアルも大事だけど、そこに固執することなく、柔軟にデジタルも渡り歩いて、キャラクターを羽ばたかせることは、埋もれていた才能を発掘することにも繋がる。 

 クールジャパンなどと言われてきたけど、それはいつまで続くか分からない。今のうちから、そういう才能を開花させる土壌を作らないと、本当に日本の文化は世界の中で埋没してしまいかねないのと同時に、まだ注目を集める今のうちに、積極的に外へと進出することの意味を思うのである。

 新しい文化は始まったばかり。文明開花の音がする。

 今日はこの辺で。

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