さとねこと “やさしい”息吹を バルーンに キャラに吹き込まれた愛情
「風船にその顔を貼る時、親戚の人から(その顔が)『やさしい』って言われたのが嬉しかったんです。以来『やさしい』って思いを込めながら顔を描いています」。そのあたたかな言葉がずっと残っている。言葉の主はクリエイターの「 さとねこと 」さん。デザインフェスタでなんとも可愛らしい 風船 を手がけていたのだ。
さとねこと バルーンのように羽ばたく
1.キャラクターのような風船
その愛らしいバルーンには猫耳があり顔が描かれている。艶があってハリがある、透き通る風船。その中にはスパンコールなどが入って鮮やか。仕上がりはキャラクターのように愛らしい顔つきをしているのである。
元々「さとねこと」さんにはこれといったグッズがなかった。けれど、デザインフェスタというイベントで何を売ろうと考えていた彼女は思いついた。わずかその開催1週間前に。「そうだ!風船を探しに行こう!」と。
2.自らのキャラで着想したバルーン
彼女には、自ら考案したキャラ「ねこかぶりっこ」がいる。それを素材に風船で表現しようと考えた。それは、女の子が様々なネコのかぶりものをしているというもの。
なぜ風船か?って、風船って人より高いところにあるから。様々なネコを風船で表現すれば、そのキャラのイメージに近い楽しい雰囲気が演出できる。これをキャラグッズのようにしてデザインフェスタで売ってみた。すると、行列ができるほどになった。
「風船って持っているとハッピーになる。だから、デザインフェスタでそういう風船を持っていたら嬉しいかなって」。ふわっと風船のような語り口で「さとねこと」さんはそう語る。
こうやって作るのである。
3.さとねこと さんは 風船 をキャラに見立てて 惹きつける
風船の中身には何を入れているのか。まずは(ウェディングのベールやドレスに使われる)色鮮やかなチュール生地。そして、スパンコールで煌びやかに演出した。そこまでなら風船屋でも考えつくだろう。だが、キャラクターに見立てて、お客様の想像力を掻き立てさせたところが、他とは違って乙女心を刺激した。
最近ではワーナー・ブラザーズの担当者の方から持ちかけられた。「トムとジェリー」でこの風船を作ってもらえないかと。先日、ラフォーレ原宿のイベントに彼女は向かったのだ。トムとジェリーの世界観を「猫耳」で表現して、風船の良さはそのままにイベントに花を添えた。アーティスティックな「トムとジェリー」は来場者を魅了したのである。
実に、彼女の持っている感性って魅力的で、風船以外でも独創的。彼女に教えてもらったところでは、最近では「メディうさちゃん」というキャラクターを手がけているらしい。耳が蛇のうさぎで「メディうさちゃん」というわけである。これにおいては自分で動画まで作成している器用さで、このような感じである。
4.人には人の魅力がある
才能がありつつもボソッとこんなことを呟いた。「私、緊張で人の顔が見れなくて・・・だからなかなかお客さんの顔って覚えられないんですよね」と。「私自身はお客さんのこと、覚えていきたい。ですけど、それができない。仲良しにできる人とかが羨ましいんです」と本音を漏らしたのである。
確かに彼女はそれができないのかもしれない。けれど、彼女はだからこそ、このバルーンでコミュニケーションをとれている。逆に僕は、その才能が羨ましい。結論としては、ありのままの自分でいいということだ。「私はこういう部分あって、今までそっけない対応もあったかもしれない。けど、よろしくね」なんて、バルーンで包み隠さずさらけ出せれば、いいんだ。それであれば、この才能とともに丸ごと受け止めてくれるファンはきっといる。そういう時代である。彼女自身、胸の内にはもっとお客様と触れ合いたい気持ちがあるのだから。
5.優しいって気持ちを込めて
・・・話が逸れてしまった。が、デザインフェスタの会場で帰りがけ、この風船を片手にまるでテーマパークを歩くように嬉しそうな人の姿を多数見かけた。さとねことさんが何気なく話してくれたこの言葉を思い出す。
「風船にその顔を貼る時、親戚の人から(その顔が)『やさしい』って言われたのが嬉しかったんです。以来『やさしい』って思いを込めながら顔を描いています」
この言葉が彼女らしさを表現している。先程のお客様の嬉しそうな顔もこの「やさしい」に裏付けられている。もはや風船ではない。これは、風船のごとくその「やさしい」という気持ちが吹き込まれたキャラクター。きっと人々を幸せにしていく。ねこかぶりっこ、メディうさちゃん含め、さとねことが風船の如く天高く浮上することを僕は期待したい。
今日はこの辺で。