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資本主義よりもっと優しい仮想通貨とデジタルの世界 TIPWAVE 飯島春樹さん

 デジタルは、今までならそれは「便利になる」という視点だけで語られていた。けれど、それはデジタルの価値のほんの一側面。本流は、社会の構造を変え、人が人らしく生きるために、再構築されていくことにある。TIPWAVEというサービスを提供するNextmergeのCOO飯島春樹さんに聞かされて、衝撃を受けた。

人々の生活を変えるデジタル?

 どういうことなのか。Nextmergeについて少し説明しておこう。一言で言うなら「ウォレット」を開発している会社である。要するに、仮想通貨を保有する受け皿のようなものだ。現金でいうところの“財布”である。代表的なところで言うと「メタマスク」というサービスだ。

 それとは別に、独自で「ウォレット」を作ろうとしている。

 彼らはなぜそれを作り出していくのか。それは、例えば、昨今見られるNFTのブレイクもまだ「一部の人にしか広がっていない」ことと関連している。その理由は、これらの購入のやり取りにかかる「ウォレット」の作成が非常に面倒なことにあるからだ。

 そこで自らで「ウォレット」を作り出すことで、それを誰でも保有しやすくしていく。これが彼らの意図するところだ。

 面白いのは、これで人の評価基準が変わること。それについては後段で説明していく。

 まずはその理解を深めるための前提として、ブロックチェーンの技術によってもたらされた変化について、述べたい。

・ウォレットの作成を容易にしブロックチェーンの価値を活かす

 昨今、ブロックチェーンの技術により「NFT」が脚光を浴びた。「NFT」とは、その技術によりデジタルデータが固有の資産として認識されるようになったものである。固有で有限なので、物理的なものと同様に価値が生まれる。ピカソの絵画のようなものだ。

 NFTはイーサリアムなどといった仮想通貨によってその対価を支払い、流通する。

 これが大きかった。元々、画家であれば「絵の具と紙」が必要だった。

 でも、ブロックチェーン技術で、データにも価値を持たせられる。だから、画材なしに、自分の才能を貨幣的価値に置き換えられる。原材料費がかからない分、投資の額を軽減できる。ゴッホが絵の具のお金の捻出に苦労したのを思えば、大変な進化だ。挑戦できる人の数を増やしたから、革命的なのだ。

 しかしながら、現状、広がりは限定的だ。というのも「NFT」はまだやり取りが面倒。イーサリアムなどの仮想通貨は“通貨”だから日本円との間で換金しなければならない。それらをコインチェックなどの仮想通貨取引所で交換した上で「ウォレット」が必要となるのである。

 しかも、「ウォレット」の作成も面倒である。だから、そこまでして、出品したり購入したりするのも限定的になるのはもっともだ。

 だから、もっとブロックチェーンには他に使い道がある。そういう才能の可能性を最大化させる方法を、別の視点で提唱するのがNextmergeであり、そこで「ウォレット」に着目した。

・ウォレットが変われば流通が変わる

 彼らがいうのは、仮想通貨というのは何も、ビットコインやイーサリアムでなくても良いよねと。つまり、皆、共通にブロックチェーンの技術のインフラの上に成り立っているもので、表向きその貨幣の名前が違うだけなのだ。

 わかりやすくいえば、円とドルは異なるものだけど、その大元に共通の貨幣価値が存在していて、表の顔が異なっているように、仮想通貨もそうなる。だから、彼らはその仮想通貨すらもオリジナルで作れて、使えるようにすればいいと考える。

 だから、そこら辺の田中さんが作る「タナカコイン」でもいい。そして、それを作り出すために、それに対応する「ウォレット」を用意すればいいということにたどり着く。しかも、それらは無理に円やドルなどの貨幣に置き換えなくても良いとしていて、その理由は後述する。

 その上で彼らが開発する「ウォレット」はSNSのアカウントひとつで作れるようにした。便利にした上で、彼らなりの使い道を提案する。わかりやすい例で言えば、歌手も、漫画も、ブランドも、そこにはファンがいるだろう。ファンが、そこへの愛着や応援の気持ちをそれぞれのアーティスト単位で仮想通貨で表現して、意思表示できたらどうなるだろう。

・ファン心理を触発

 感心したのは、X(旧Twitter)のAPIに連携させて、ポイントの様に、何かの行為によってコインを提供できる仕組みを作り出した事だ。これも「ウォレット」を作り出したことで可能になったのだ。

 例えば、Xで投稿したときに、条件に当てはまると、その「ウォレット」にコイン(上記でいうところの「タナカコイン」のような独自通貨)が付与される。

 要するに、指定されたメッセージ(ワード)には共通して反応するように設計。それで、コインが入るのである。ファンは自ずと積極的に投稿することになるだろう。

 大事なのはコインが欲しくて投稿するのではない。ファンの度合いを可視化される事で、大元の作家や歌手などに示すことができるから投稿する。また、何かをしてもらいたくて、コインを手にするのでもない。尽くしたいというファンの心理そのものである。でも、そのアーティストにとってみれば、嬉しいから、自然と行動をすることもある。特別なライブに誘うとか。

・触発されるほど、まわりまわって販促になる場合も

 お互いの気持ちには損得勘定はない。応援する気持ちとそれに応える感謝。でも、その投稿が触発されれば、いうまでもなく、そのアーティストの売上に寄与することだってあるだろう。つまり、仮想通貨をきっかけに生まれた応援行動で、販売促進的な効果が生まれるということ。

 更にブロックチェーンで素晴らしいのは、その付与されたコインが、受け取ったファン同士で流通できることにある。例えば、歌手のライブでゴミ拾いをしている人がいたら、ファン同士でその行為をしている人にその通貨を提供する。そんな使い道も出てくる。

 アーティストとファンだけではなく、横のつながりも強くなる。そのファン・コミュニティとしての価値が上がるわけだ。こういう風なブロックチェーンの技術の使い道であれば、無理にコインをお金に交換しなくても、経済が活性化できるとしたわけだ。

 だから、先ほど触れた通りだ。「円やドルに置き換えなくていいよね」と。

・全くない概念だからまずは育んでいく

 これは今までに全くない概念である。

 だから、そういうファン・コミュニティを持っているところは強い。こういう仕組みをテコに更にその集まりの価値を高められるからだ。従来のブランドなどの育成とは全く違う。

 歌手だってよい。お店だってよい。ブランドでも良い。遠くない未来、それが生かされる世の中になる。だから、今のうちからブランディングの必要性は高まるし、コミュニティを強化しておくべきなのだ。

 とはいえ、上記のような考え方は既存にはないから、まだ一般には浸透しているとは言えない。

 Nextmergeはそれを実装した環境を自ら作り出し、その説明に奔走する。この仕組みは、自社のサーバーでユーザーのIDのみを管理。例えばトークンの発行や情報など、その他の部分はブロックチェーンに記録される仕様になっている。

 それであれば、Nextmergeのウォレットは仮にサーバーが犯されることがあっても、問題がない。なぜなら、ブロックチェーン上に保存され、操作できるのは、ユーザーのみだからである。万が一、同社に何かがあっても、ユーザーは資産を失わずに、利用を続けられる。

 セキュリティ的にも安心な事を謳いながら。

 そしてまずは芸能やIP系企業であったり、ファンによってビジネスが成立しているところにこの考え方を持ち込む。それと共に、彼らは技術と実例を持ってコンサルティングしていく。そうすれば、社会は変わる。そう口にするのである。

・熱狂を後押しし資金に変えて還元できる世界

 正直に言えば、恐らくウォレットについては、いずれ大手企業が乗り出してくるだろう。ただ、ここまでの話を聞けば、彼らの競合ではないことがわかるだろう。

 そういう大手企業でいうなら、経済圏を作る過程。恐らく、メタバースと絡んでコンテンツとウォレットを作って、参入する形をとるだろう。だから、KDDIなどがαUという形で、メタバースをやっている。その布石だろうと予測できる。

参考記事:従来の価値観もリセット メタバース空間 αU(アルファユー)にリアル以上のリアルを見た

 恐らく大手企業はそれらの仮想通貨をリアルな通貨に置き換えることも考えているだろう。数々のポイント経済圏が生まれているように。

 でも、飯島さんたちは違うわけだ。

 自分たちのやるべきは、見落とされた価値を拾い上げること。そう割り切って、例えば、アーティスト単位で仮想通貨ができれば、それで応援できて、盛り上げに寄与できる。そこで差別化したいと考えているのだ。集中して、投資を抑えるというのもある。だからコンテンツに関係する企業と渡り合おうとしている。

 未知なるコンテンツを拾い上げ、熱狂とともに資金的価値を得る。そして、それをファンのために行動を起こして還元していく。そういう世界を創るべく。

・資本主義が全てではないの言葉の意味

 これが最初の話に戻ってくる。すごく先の話かもしれないけど、と飯島さんがこう話してくれた。街中で、誰かが席を譲るなどをしたらそれに対して「いいね」さながらに仮想通貨を提供する。まるで投げ銭のように、それは貯まっていく。なるほど。確かに、Apple Vision Proを通して見たその先のARの世界などでは十分考えられそうな世界である。

 それは人が評価した人としての価値である。そして“資本主義の外側”で評価され、対価となったものである。

 当たり前に良い行いをしている人は、高く評価されることがデジタルではきっと可能になると。だから、僕はデジタルの本流が、社会の構造を変え、人が人らしく生きるために、再構築されていくことにあると痛感した訳だ。面白い世界だ。人の“評価基準”が今より増えるだろうし今よりもっと、救われる人がいる気がする。そして、人として素敵な人が報われる世の中だ。

 とてもすごい時代の一歩を今、時代は踏み出していることを実感した。単純にデジタルは利便性で語られるものではなく、世の中の概念を根本から覆して、健全な世界を作っていく意味でも大きな価値を持つのである。これは刺激的であった。

 今日はこの辺で。

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