【EFO改革の核心】住所入力ミスを救う“辞書屋”──Gyro-n EFO × レムトスが挑む、ECフォーム最適化の本質

「10年、かかるもんですね。」その一言には、諦めずに積み重ねてきた時間と、ようやく射し込んだ未来への光がにじんでいた。40年、住所データと向き合い続けてきた──レムトス。その代表取締役・金子忍さんは、それらが今の時代にふさわしく活用されるように、日々格闘してきたのを僕は知っている。着実に、丁寧に、一歩ずつ。進化はいつだって静かに始まるのだ。
今日、レムトスの《辞書屋のWeb Solution》が、フォーム最適化ツール《Gyro-n EFO》と連携を果たした。EFOにとってはEC業界を攻める切り札となり、レムトスにとっては「見えない課題」と10年格闘してきた努力の答えとなる。
住所とEFOの基礎的理解
・EFOとは?
そもそも、EFOとは何か。正式名称は「Entry Form Optimization(エントリーフォーム最適化)」である。ネットの入力フォーム(例:ECサイトの購入ページ)を、できるだけユーザーが“途中で諦めずに”最後まで入力できるようにすることを意味する。
多くのサイトで実装済みの入力フォームを、いかに離脱がないように最適化するか。それを実現してくれるのが《Gyro-n EFO》だ。今回の話は、この最適化されるメニューに、レムトスの《辞書屋のWeb Solution》が採用されたというものである。
・住所の活用とは?
《辞書屋のWeb Solution》とは何か。彼らは、58万件に及ぶ住所データを保有している。僕が思うに大事なのは、“情報屋”ではなく、“辞書屋”であることだ。
つまり、“情報”を提供して終わりではない。“辞書”のように調べて活用され、解決へと導くところまでを想定している。たとえば、コールセンター。突如として問い合わせが来た際、住所のやり取りは日常的に行われるが、瞬時に把握できなければ業務効率を下げてしまう。
だからこそ、手を煩わせることなく、ユーザーの言う住所を即座に検索・補完できるようなシステムを、彼らは提供してきた。大事なのは、住所データが「どうすれば、使う側(たとえばオペレーター)にとって使いやすくなるか」を考えている点だ。
だからこそ、レムトスは開発パートナーと膝を突き合わせて、とことん深掘りしている。それは、ソフト(住所データ)とハード(入力支援UI)の両面を自社で開発し、提供するためだ。ここが“辞書屋”たる所以である。
“住所”はサービス提供側も利用者も「見えない課題」
そして、金子さんは視線の先を、消費者が入力するフォームの方に向けた。それが10年ほど前の話だ。ただ、それらの住所は、ずっと「見えない課題」であり続けた。そこにレムトスの地道な努力の跡がある。
たとえば、我々が入力フォームと言って思い浮かべるのは、「郵便番号を打てばパッと住所が出る」という場面だろう。しかし、それは完全ではない。郵便番号でカバーしきれない地名が実際に存在する。複数の町名が一つの郵便番号に割り当てられていたりするため、番号では特定できないケースがあるのだ。
また、住所は“ナマモノ”であり、ユーザーの知らないところで、市町村合併が行われていたりもする。
だから、入力フォームの段階で、間違いが起きるのは当然のこと。それにもかかわらず、サービス提供側も利用者側も気づかず、対策をしていないように見えた。だからこそ、これは「見えない課題」なのだ。
レムトスはその長い歴史の中で、利用企業にこそ、その価値を理解してもらってきた。しかし今、勢いのあるEC企業ほど、それを見落としている。
金子忍さんは、父から受け継いだその思想を尊重しながらも、時代に合うかたちでその価値を浸透させることこそ自分の使命だと考えた。
なぜ“住所”がECの最大の弱点だったのか?
ECサイトにおける住所入力のミスは、全体の5〜10%にも及ぶという。
小規模であれば問題にならない。だが、月1万件の出荷規模であれば、毎月500〜1000件のミスが生じていることになる。にもかかわらず、日本の配送会社の精度の高さに甘えて、それほど大きな問題として認識されてこなかった。
「配送会社が直してくれるから問題ない。そんな企業も少なくありませんでした」と金子さんは苦笑する。
再配送・再確認は物流現場の日常である。にもかかわらず、フロントに立つマーケターの視界には入ってこないのだ。
その点、Gyro-n EFOは、既存フォームにタグを一行入れるだけでUI/UXを底上げする。離脱率を抑え、コンバージョンを高めてきた。だがその中で、最後まで解決できなかったのが「住所」だった。
だからこそ、両者は手を組むに至った。入力フォームに《辞書屋のWeb Solution》を実装できれば、EFOの価値は底上げされ、ECサイトにおけるEFOの利用率も格段に向上するのだ。
58万件で人の“間違い”を優しく受け止める
レムトスの手により、入力フォームにおいてより正確な住所を、より優しく入力できるようになった。繰り返すが、レムトスは“情報屋”ではなく“辞書屋”だ。UI/UXの観点で住所データを扱い、「住所クリーニングシステム」という独自のAI機能を提供している。
市町村合併、旧住所、表記ゆれ、濁点の違い。それらをすべて補正してくれる。
そのレベルは常軌を逸している(もちろん、最大級の賛辞として)。たとえば「棟京都港区木六本3丁目」のような崩れた入力でも、「東京都港区六本木3丁目」として修正してくれるのだ。
58万件超の辞書データと、それを磨き続ける情熱があるからこそ実現している。
技術ではなく、思想の“編み込み”である
フォームは、ホームページにおける接客だ。
郵便番号がわからなくても入力できる。古い住所でも最新住所に変換できる。表記がズレていても、自動で補正してくれる。
不器用なユーザーの想いを、きちんと届けるためのデザインこそ、今回の連携が生んだ本質的な価値だ。
未来へ進む頑固さに、僕はエールを贈りたい
僕は、思う。ますます、これからこういう配慮が大事な時代になると。その理由は、今は1対1で企業と顧客が向き合うことが必須だからだ。
顧客は、商品だけでなく、企業の姿勢や思想をもってファンになってくれる。だからこそ、企業は“目の前にいるかのような真心”を、デジタルという手段で届ける必要がある。
それは、アナログでは一件一件できないような、細部にまで繊細な心遣いを宿らせるために。
つまり、その手段として、今回の連携は時代の空気に見事に合っていた。
変わらぬ信念と、変わろうとする意志。相反するようでいて、どちらも未来へ踏み出すには欠かせない。それが、40年守り通してきた信念。そして、挑戦に現れている。その頑固さは、誰よりも人に優しくあろうとする誠実さから生まれる。
そして、その誠実さこそが、今という時代に求められているのだ。40年目を迎えて、なお挑戦し続けるレムトスを讃えつつ、この文章を、お祝いとエールとして贈りたい。おめでとう。そして、はじまりだ。
今日はこの辺で。