東急と楽天 OMO で発掘した新時代の広告・販促
リアルの課題はいかにそこに集客することだけど、今までの手法では通用しない。一方で、デジタルはその顧客データをいかにリアルの場でも活かそうと躍起だけど、リアルのリソースがない。だから東急と楽天グループが手を組み、OMOを展開する。そして、見えてきたのは互いの広告・販促としての新たな活用方法である。
渋谷スクランブルスクエア への出店
1.OMOとは?
そもそも、OMOとは何か。Online Merges with Offlineを略である。
「オンラインをオフラインと融合する」という意味である。ただ、勘違いしてほしくないのは、顧客がチャネルの違いを全くどちらとも、意識せずにサービスを受けられるようになることである。一体でとらえて、マーケティング戦略を構築していくのである。
そして、その舞台は渋谷駅付近の一等地、渋谷スクランブルスクエア。その5階であり、ここはかねてより、ポップアップストアが数多く入るスペースである。この日、両社は初めてこの地にポップアップストアを構えた。
「楽天ファッション」の出店ブランドでラインナップを構成。テーマとして「二番手ニット」というものを掲げた。ニットはオーソドックスなスタイルは存在しつつも、エッジが効いたものが増えているとか。ただ、ネットで買うのには抵抗があるので、逆にリアルの地で確認することに意味がある。そういうわけである。
2.データに基づくテーマ設定
これらの商品は全て、楽天会員のデータを参考にしながら、テーマを設定している。
そこに沿った形で、ブランドを横断的に陳列したわけである。つまり、ブランドごとの提案とは一味違っているところに付加価値がある。
先ほど、ニットの話をしたけれど、ここには「アンタイトル」などの数々の名だたるブランドが垣根を超えて、数多く色々なパターンで提案されている。ここがOMOと言われる所以になるが、いずれもその商品タグには、QRコードがついており、それを読み取ると、楽天ファッションのページへと飛び、そこで購入するスタイルである。
だからブランドもここに陳列する用の商品のみを納品すればいい。だから、在庫の管理は煩雑にならずに済む。最近は物流環境も整って、出荷体制もリアルで買うのと遜色なく、早く届ける事が可能である。
東急 楽天 互いのメリットは?販促的側面
1.楽天の出店店舗への誘導だけど
先立って行われた記者会見の席上、楽天東急プランニングの代表取締役 笠原和彦さんはこう説明した。
楽天はこれまでもオンラインで広告施策を打って、それがオンライン上で成果をもたらす。そういう施策はやってきた。この連携を通してオンラインの施策からリアルでの成果にまで影響をもたらす。そうすることで、データの価値を最大化し、お互いの価値につなげる。
ここまできて、「ん?待てよ?」と少し思った事がある。
では、東急にとっては、一体、この場所を提供するメリットは何だろうと。それは、このリアルの拠点にいかに新しい方法で、集客するかという点なのだ。
2.かつてでいうところのマス広告
楽天が既に膨大な会員データを持ち、デジタルを通じてその顧客に対して、常時、アプローチができる環境が整っている。だから、東急としては、渋谷スクランブルスクエアに「楽天ファッション」のポップアップストアを設置することで、そこをベースにその拠点に楽天ユーザーを呼び込む事ができる。
それが広告的意味を持つ理由
1.趣向を変えてアプローチに多様性を持たせる
東急にとってみれば、今までもリアルなこの拠点に呼び込む施策は数多くやってきている。けれど、楽天会員の力をその属性に合わせて、必要に応じて、自らのリアルの拠点への集客に繋げられる。だとすれば、このような形でポップアップストアを楽天と組んで、やることには意味がある。
ある意味、データであればある程度、ふさわしいお客様は特定できている。そこに効率よく、リアルのポップアップストア提案をするわけだ。提案に幅を持たせて、会員の満足度を高めるとともに、それを東急にとってはかつての広告に匹敵するアプローチ材料にする。
2.現代版シャワー効果
百貨店では今も昔もシャワー効果というのがある。
物産展などをすることで集客を行い、それに付随する形でその他の階の商品も売れていく。その役割をこの「ポップアップストア」が担えば、楽天との取り組みは、東急にとっては、今までにない集客につながる販促的な要素を持つわけである。
東急が話していた事だが、彼らもまたカードなどを通して会員組織はある。
実は、楽天とは世代も異なるがゆえ、こうした施策で楽天のデータを最大化させて、集客させる事そのものに価値がある。そこで、相互に新たなカード会員に繋げれば良い。本来、同じカードであっても提案内容は異なるはずだからだ。
3.新規カード会員を作るきっかけにも
逆に言えば、彼らにとって考えれば、このリアルの拠点での付加価値を通して、今度は東急のファンになってもらう。そういう仕掛けが大事だということになろう。勿論、このポップアップでも商品を並べるだけではなく、東急側から専門スタッフを用意。その接客に努めてもらうことで、来店したお客様にとっての満足度は高くなる。店員が付加価値になれば、それはリアルの特権だ。
それゆえ、東急と楽天、それぞれ立場が異なる。その全く異なる考え方が交錯して、このポップアップストアができているのだ。
デジタルでリアルの存在感を
1.位置情報をフックにデジタルで顧客を紐付け
逆に言えば、それも人が集まらなければ意味をなさない。だから、楽天においては先ほど、このポップアップストアの「編集力」が極めて大事になってくる。先ほど触れたように、会員データを徹底分析して、相応しいテーマ設定と商品選びを意識するわけだ。
しかも、楽天ファッションの場合で言えば、そこにスタイリストの声も取り入れ、売り場の価値を高めていく。仕掛け自体が、販促要素となり、ここでトライアンドエラーをしていくことが大事だ。
また、そこまでして、ウェブ上では、事前にこれに関連した「エントリー」に登録できるようにする。それを来店と合わせて購入に繋げれば、楽天ポイントが貯まるようにして、行動を触発。
昨今、スマホが行動の起点となっているから、そこに楽天IDの価値と合わせる。「楽天スーパーポイントスクリーン」というアプリのユーザーに対しては、その属性に合わせて、ポップアップストアの告知をプッシュ通知でする。
楽天 と 東急 OMO には 双方全く違った利点が絡み合う
1.会員を持つ以上メディアである
楽天にはメディア的側面があると言った意味をお分かりいただけただろうか。
リアルの視点から見れば、今までのやり方にはない集客のスタイル。これが新規顧客獲得の呼び水となると同時に、一方、デジタルの視点から見れば、デジタル上で完結していたそのサービスがリアルにもまたがる。
それは、よりデータの有効性をアピールすることになる。
2.ブランドにはリアルでこそ伝える価値を
ここに出品するブランドにおいても、利点はある。
今回の「二番手ニット」というテーマの象徴されるように、ネットだけでは訴求しづらい要素を伝えられる。かつ、従来とは異なるブランド横断型でテーマを掲げられる。それによって、ブランド単体では興味を抱かれなかった商材が手に取られる可能性を秘めている。だから、新規顧客獲得としての意味合いも持って、メリットになるわけである。
OMOは、かくしてネットのショッピングモール、リアルの商業施設、メーカー全ての価値を最大化させて、それぞれが持たないユーザーを発掘できるのである。つまり、販促的な意味合いで応用した点に、この取り組みの価値がある。
リアルとデジタルの融合にはまだまだ可能性が秘められていると言って良いだろう。
今日はこの辺で。
参考:楽天ファッションの記事