ポムポムプリン に優しい“家族”を感じて アーティスト Foomiy
渋谷パルコのポップアップスペースでサンリオのキャラクター「 ポムポムプリン 」をみていて、少し絵のタッチが異なる“作品”が並んでいた。それは Foomiy という名のアーティストが手がけたもの。僕はその温もりのあるテイストが気になり、その「ポムポムプリン」とのコラボイベントでFoomiyさん本人に取材を試みたのだ。
Foomiy が描く ポムポムプリン にあたたかさを感じ理由
「ポムポムプリン」の可愛らしさにFoomiyさんの描く優しいタッチがうまく調和して、「ポムポムプリン」とは違った魅力を引き出している。
描く線は重なりあい、その色も少し“はみ出し”ていて、温かな風合いは絵本の世界にいるよう。この重なり合う線やはみ出す色合いに込められた意図として、彼はこう話す。
「たまには枠から“はみ出し”てみようよって。そうすれば自分のカラーが出てくるし、それを大事にしようよと。そして、それは重なるととても綺麗になるよねって意味合いなんです」。
会場内を見てみると、「ポムポムプリン」とFoomiyのコラボグッズも陳列されていて、はみ出る色彩は、商品になるとアートグッズのような洗練された雰囲気にもなって、大人遣いもできそうな感じである。
「街中でこういう自分が関わった商品を買ってくださっている方を見かけて、いい意味でもう僕のものではなくなっているなと思ったんです」とFoomiyさん。
それを聞いて僕は歌を思い浮かべた。作曲家が手がけてヒットしたら、もうそこから先はその曲に対して、それぞれの解釈で心に染み入り、歌が人生を共にする。それと同じようで、彼の絵もまた一度、人と巡り会えれば、そこから先の受け止め方は思い思いの気持ちに委ねられる。それを彼は喜んでいる。
Foomiy の絵にはいつも家族を感じる
そんな風に人の触れ合いに重きを置いたFoomiyさんの姿勢は、これまでの人生にも紐づいていて、彼の絵に込められた共通したメッセージは「家族」への想いだと明かしてくれた。
「家族?」そういうと深くうなづく。
「とにかく仲がいい。喧嘩もしたけど、それは仲が良いことの裏返しで、僕と家族にはたくさんの物語があります。大きくて、大好きな存在。僕の原点です。だから、家族への想いを絵の中に込めようと。それはいつも意識していることです」と続けた。
数あるその物語の一部を切り取ったその一瞬が絵で表現される。だからグッと見る人の心に響く。それは彼が今回、この特別展に作品を出してみて、実感した事にも繋がる。
Foomiyさんは、来場者の人達が不思議と皆がこの絵を「それぞれの人生に重ね合わせている」ことに気づいたという。娘を横に連れて、その母は言った。「この子はハワイで生まれたから、ハワイの絵が欲しいですね」と。勿論、それぞれに人生は違ったものだけど、家族の結びつきは普遍的で彼の絵がその共感を生んでいたのだ。
絵の始まりも母親の絵をなぞるところから
そして、彼が絵を描くきっかけにも実は母の存在がある。「チラシの裏側によく母はキャラクターのイラストを薄く描いてくれました。僕はその上をマジックでなぞって遊ぶんです。それが本当に好きでした」と語り、いつしかなぞるだけではなく自ら絵を描くようになった。
そして、そうやって絵を描き続け、彼はそれをInstagramに記録用としてアップしていたのが多くの人たちの知るところになった。
「これが初めて紙以外の大きな画材で描いたものなんです」そうFoomiyさんが教えてくれた。
元々Foomiyさんは動物が好きであって(ちなみに、それが犬の「ポムポムプリン」が好きであることにも繋がっている)やはりここにも「家族」のイメージはあった。その絵の中ではお父さんに肩車された子供とで一緒にゾウを見て、バナナを手にしてFriendと描かれている。
その後も彼の表現は様々な作品を通して続いていく。
何気なくテレビで、テロや内戦で貧困となって、好きなものも食べられないというニュースを目にした彼は、スーパーに行ってお菓子のOREOとRITZを見て思う。「こういうきれいなお菓子を食べられるのは当たり前じゃないんだ」と。そこに着想を得て、世界中の子供達みんながお菓子を食べれるように祈り、絵を描くのである。
また、その絵の周りには「ジェッソ」と呼ばれる素材が塗られていて、本来とは違った用途で使っている。「本当は、絵の具で描いた表現を立体的に見せる為に、絵の具とそれを混ぜて使うもの。立体した部分にひび割れが起こらないように。でも僕は敢えてそれを「縁」に使ってメインにして、テーマであるOREOとRITZを連想させるモチーフを散りばめました」と。表現の幅は止まらない。
あらゆる役柄を演じつつも、いつもそこには家族の優しさがある
彼には一貫したあたたかな気持ちがある。思えば、それはたくさんの力をくれた「家族」が起点となっていて、結果、絵で人の心を動かすに至った。そして、このサンリオとの出会いを生んで、中でも好きだった「ポムポムプリン」とのコラボに至るのである。恐らく彼の表現は引き続き、その温かさを保って更に続いていく。
この「Foomiy」というネーミングにも、実は彼の本質が全て詰まっている。彼は絵を描く一方で、役者もやっていて、その仕事で色々な役柄をやって思ったのだという。「自分自身でも自分が定まっていない『Who?me〜自分って誰?〜』と。
最初、自身も役者やアーティストがそれぞれ自分の中で異なる活動だと思っていたのだが、いつしかそれは列車のレールのように並行して走っている事に気づき、表現に少なからず影響を及ぼして、個性となっている。
そして「Foomiy」という語感だ。彼の原点が家族すなわち「Family」にあるから、そこにインスピレーションを得て、「F」から始まり「Y」で終わる名前にしたかったと。
あたたかな両親と妹と彼とその活動が織りなすその感受性によって、想いやりは磨かれて、彼はきっとこれからも絵と共に穏やかに歩み続ける事だろう。人々は勿論、キャラクターすらもずっとその絵に癒されながら。
今日はこの辺で。
- ©︎2021 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. S621286
- ©︎ GLOBE.Foomiy / BLUE LEAF
- ■Foomiy(フーミー) :
- 岐阜県高山市出身 2014 年日本大学芸術学部卒業 2019 年 Foomiy として本格的にアート活動を開始する アクリル、クレヨン、色鉛筆など様々な質感を使い、平面だけでなく立体などでも表現。 俳優・冨田佳輔として TV、映画で活躍する傍ら、 現代アートの世界でも今後期待される多彩なアーティスト。 主な出演作品:「大河ドラマ(花燃ゆ、おんな城主直⻁)」「探偵は BAR にいる 2」「信長協奏曲」「I”s」「⻘の帰り道」その他多数。 俳優としての活動は株式会社 TOM company 所属。 最新出演作品:『ソロモンの偽証』WOWOW開局30周年記念 連続ドラマW 2021年10/3(日)より放送開始