3つの視点で 小売 が変わる “決済” “物流” “販促”
小売 の環境は刻一刻と変わってきている。そこで、第55回スーパーマーケット・トレードショー2021 に潜入。現場に関わる企業の話を聞き、体験しながら、その変化を3つの視点( 決済 物流 販促 )で取り上げた。リアルの世界にも着実にデジタルが入り始めていたりする。また、流通のあり方が進化していたりもする。目まぐるしい今の小売の姿を見て欲しい。
購入場面が変わる“決済”
1.スマホを使いつつサクサク商品をチェック
完全な省人化であり、かつ非接触。行列なども不要なショッピング。それをスマホと自らの機械を連携させて可能にしたのが、株式会社寺岡精工。この動画を見てもらいたい。
あらかじめスマホで「Shop&Go」専用アプリを入れておくのである。そして店内で商品を選べば、そのアプリでバーコードを読み取りカゴに入れる。全部買いたいものが揃ったら、専用のセルフ精算機まで移動する。スマホ決済なら、かざすこと約30秒で会計が完了となる。
素早く買い物が完了
専用カートは、各々のマイバッグを設置できるように設計。商品を入れる際に、それを認識するようになっている。だから、バーコードを読み取らず、カートに設置されたマイバッグに入れようとすると、エラーが出る仕組み。ここで不正を防ぐ。
このマイバッグは決済完了と共に、すぐに取り外せるようになる。だから、カゴからマイバッグに移し替える手間すらないわけだ。
これにより消費者がスタッフを介さず楽に、素早く買い物ができるので満足度が高い。それだけではなく、スタッフ側も人数を必要としないから人件費も抑えられる。今のコロナ禍で言えば非接触で安全性が高く、利点も多い。
購入理由が変わる(販促)
1.デジタルサイネージの活用
デジタルがリアルの生活の利便性を向上させていく。その意味では、売り場の提案の仕方にも変化が生まれている。
伊藤忠食品株式会社が紹介してくれたのが、「デジタルサイネージ」を使った販促。通常、売り場と言われて、イメージするのはなんだろう。野菜売り場に野菜がどさっとして、肉売り場に肉がぎっしり。そんな風に、商品カテゴリーごとにまとめられている。しかし、これはそれとは違った価値提案である。その野菜なり肉なりの魅力に気づかせる設計である。
レシピ動画として名高いDELISH KITCHENと連携。そのデジタルサイネージでそのレシピを公開している。そのレシピに必要な野菜や肉などの食材と調味料を、その下で並べて、購入を促すのである。
単体で野菜を買うのではない。料理を作ってみたいという気持ちから野菜を買ってみたいと思わせる。この点がこれまでなかった売り場提案。今までは紙のポップなどでそれをすることもあった。だが、動画の方が遥かに表現力が高い。
2.認知されていないものなどで効果を発揮
「メーカーとしては新商品で出てきて、まだ認知されていない。どうやって使えばいいかわからないような調味料などの商品をレシピを使って訴求する。すると、こういう風に使うのか、と購入へと促すことができる。その意味合いは大きい」と営業企画本部の山岡花實さん。
その伸びに関してたずねた。すると「『PI値(Purchase Index)』と言って、『お客様1000人あたりの売上』で見た指標というのがあります。それ説明するなら、売り上げと数量とで110%程度は伸びているんです。」と話す。デジタルコンテンツを販促につなげることで、売り場にはまだまだ伸び代がある。
また、比較的在庫が残っている(あるいは消費期限が近い)商品で、こういう打ち出し方をすればどうだろう。料理の楽しさを喚起させて、効果的に商品を消化するといったことも可能なように思う。
購入までの流通が変わる“物通”
1.新幹線の早さを活かす
最後に気になったのは、株式会社ジェイアール東日本物流の動き。「JR東日本のくらしお届けサービス」である。JR東日本というと電車のイメージが強い。だが、ここで提案していたのは、新幹線を使った物流である。より、物流としての色彩を強めているのが特徴だ。
「これまでも駅の利用と物流を結びつけていました。それは、地方の食品を鮮度の高いうちに、駅のスペースで販売するという形で、です。それを、さらに拡大して、近隣のお店にもお届けします。すると、その店の価値が底上げできると考えています」と事業創造本部の谷奈々香さん。
例えていうなら、こうだ。朝6時に石巻の漁港で採れたものを9時半に最寄りの出発駅(仙台駅)に持ち込む。それを新幹線に積み込み、それを13時半には到着駅で荷下ろしするのだ。15時には高輪ゲートウェイ駅で開催するマルシェを実施すれば、新鮮なものを手にすることができる。
これが今までだったわけだ。あくまでも駅というローケーションを利用して、ということ。
2.一歩踏み込んで近隣のお店の価値を上げる
ただ、この春からは、例えば、駅の中だけでなく近隣の販売店舗に納品することも可能となることを受けて、近隣のお店にお届けする「JR東日本のくらしお届けサービス」となるわけである。
完全に、新幹線を物流の一つと置き換えて、活用するもので、元々置き場所などあったのだろうかという問いに対しては、「車内販売が縮小しているのを受けて、カートスペースが小さくなっているんです。その隙間が生まれたことで、この物流のための商品に当て、有効活用しようと考えています」と話す。
時代に合わせて世の中の有り様が変わると、かつての常識だと思われていたものもそうではなくなる。それとは違った使い道や見せ方などで、新たな可能性を模索し、発掘する。違った世の中は、もうすぐそこまできているのである。
今日はこの辺で。