時代を読む 特集
【特集】日本流ライブコマースの真相
ライブコマースと聞くと、中国では大きな売上を作っているものの、日本では今ひとつという声も聞かれます。しかし、それも考え方次第なのではないかと思っています。着実に日本流で実績を出しているということを受けて、今回は、モールと自社ECに分けて、どういう考え方ものと、進めているのか、その点を考えてみたいと思います。
■日本版?ライブコマースの挑戦 au PAY マーケット
・中国のライブコマースとは違う?
世間で言われるライブコマースのイメージは中国などで盛んになっているもので、大抵が特定のファンを持つインフルエンサーが行うものです。
背景には偽物を買わないために「信用できる人から購入する」ことを重んじる傾向があるというのがあります。だから、日本と根本的に違うんですよね。
そこで、日本風の切り口を考える上でヒントになるなと思ったのが「au PAY マーケット」の「ライブTV」だったわけです。
語弊を恐れずいうなら、食卓でテレビ番組を見る雰囲気に近く穏やか。
人を選ばぬ作りで構成からキャスティングまで幅広い層を意識して、作り込まれた番組に仕上がっています。
ちゃんとした番組作りは運営元のKDDIとauコマース&ライフが吉本興業と連携している事からも分かります。「生配信!よしもと市場」という名前でテレビ番組さながら、継続して配信されています。
・よしもと芸人と“お茶の間”的ライブ配信
吉本興業はキャスティングの為だけかと思いきやライブTVの担当者はこう話します。
「吉本興業という事務所は人気芸人を抱えつつも番組制作のプロです。この連携にはその知見を番組に取り入れるという狙いもある」と。
安定感があるのはそれもあるのかも。そう思いながら、ふとauコマース&ライフの八津川社長が「au PAYの冠がつく様々なアプリと行き来しやすく、UI・UXの改善などに投資してきた」と話していたのを思い出しました。
いかに『au PAY マーケット』をデイリーユースしてもらえるようにするかが肝であることも強調していたなと。
つまりは、彼らは「ライブTV」という毎日、安心して来てくれる場所を用意しているんだなと思いました。だから、ちゃんと内容も練ってテレビさながらに作り込むのです。
こちら担当者の八高さん、山崎さん、加藤さん。実際、インフルエンサーによるライブコマースとは何が違うのでしょう?この点に関して彼らは口を揃えて“モール型の”ライブコマースと説明します。
「特にランキングと連動させて、活用することで成功の方程式が出来つつある」と述べてくれました。
要は、この「ライブTV」は見ている瞬間に衝動買いを誘う要素もあるので、ランキングに反映されやすいのです。結果、「ライブTV」を見ていない人をも吸引する形となり、更にそれがランキングを上位に押し上げます。
ヤッホーブルーイングの番組限定の商品(見ていなくても買える)は1万セット売れたといいます。
あれこれインフルエンサーに委ねる事なく、一個、軸として地道によしもと芸人と共に、ある一定の周期で信頼される番組を作ろうというのが奏功しているんですよね。
・ランキングでライブTV効果を最大化
まず、経済圏としての付加価値を活かして「ライフTV」に頻繁に来てもらうわけですよね。習慣化された行動から売り上げを導き出して、そこで生まれた売上はランキングで最大化されるわけです。考えられてますね。
また、自らが直販もやっているので、敢えて日本では仕入れられていない商品で、自らトライもしているといいます。別に彼らはそこで儲けるってわけではなくて、そこでの結果を、同じジャンルの出店店舗にフィードバックしたいというのが真の狙いの様です。
日本版と言おうか、モール型と言おうか。なるほどなと。また、彼らなりのやり方でライブコマースを発展させる事は、auが進める5Gとも親和性が高い。恐らく、これからも積極的な姿勢を見せるでしょうから、期待が高まるところです。
■ライブコマース 成功の理由 “アーバンリサーチ”流 DX の賜物
・データに基づき全員でお客様を考える“アーバンリサーチ”DX
数字を通して、現実を把握し、組織を変えて一丸となってお客さまに向き合う。口で言うのは簡単ですが、それをファッションブランド「アーバンリサーチ」では見事にこなしていて感銘を受けました。
話してくれたのは執行役員の斎藤 悟さんで、面白かったのはライブコマースについて語っているのだけど、ライブコマースの話をしていないんです。
会社全体で見て、他の事業とどう相乗効果を満たすか、なんです。すると全体を掴むことが大事だと言っていて、ライブコマースが伸びないと言われる中で、多くの人はライブコマースしか見ていないから、伸びていないのではないかと思った次第です。
じゃあ何をしたか。一つに役割とその人の配置です。一見すると、通常ならやらないだろうと思われる役割をその部署に担ってもらっている印象があります。例えば、デザインに関わる人たちがデザインをする傍らGoogleアナリティクスで、アクセスの確認をします。
またどこの会社でもコンピュータの設定などを行ってくれる部署は存在しますよね。しかし、どちらかというとその部署の方々は“お手伝いさん”というイメージが強い。
この会社ではそれだけじゃなく、各部門からデータを一括してこの部署に集めるように仕向けたんです。各部署との接点を活かして、それぞれにプラスになる情報をフィードバックする仕組みを作ったわけです。なるほどー。
だから、ありがちな「自分の担当のことしかやらない」という現象は起こりづらくなります。それがお客様の満足度一点に絞られて、そこのために会社が一丸となることで、デジタルを活用する土台を作ったということが大きいんですよ。
・数字の何をみて、全員野球で頑張るか
それを踏まえた上で、売上高を見ていきます。FY2020からFY2022までで売上高177%増を記録して、その成果の度合いを感じますが、斎藤さんはその結果にまだ納得ができていない様子。
なぜって?