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be ambitious !日本企業 ブランディング意識のもとに越境ECへトライ 「JACCA」年末総会に想う

 個人的に思うところもあり、駆けつけた。そこは「JACCA(日本越境EC協会)」の年末総会。今こそ、日本企業の飛躍には、海外を一つに捉える視点が大事で、今までとは違うフェーズに来た。確かに、越境ECという言葉は浸透してはいる。けど、今までのそのアプローチの仕方は“勘違い”。実は地に足をつけて、もっと本質的に取り組むべきなのだ。この場で語られていたのは、まさにその本質的議論で、それは大きな収穫だった。

飛躍を越境ECに求める理由

1.越境ECは“勘違い”されていた?

 そもそも、越境ECについて説明しよう。それは、日本でECサイトを運営しながら、海外のお客様に購入してもらうことを意味する。ECがない時代を思えば、画期的。海外に拠点を持って、現地で販売しなくてもよい。それこそ、数年前は、現地に行かずとも、ECを使えば、売ることができる。そんな触れ込みで、越境ECに取り組んだ事業者も少なくない。

 とはいえ、それは簡単なことではない。現地の法律、関税、そして、異なる物流環境などを考慮しなければならない。だから、そこに対しての明確なアプローチ方法が提示されることなく、その言葉だけが浸透していたように思う。

 ゆえに、それはややトーンダウンしていく。現時点で、越境ECに取り組んでいる企業が少なくないのは、そういう背景もあろう。だが、コロナ禍や円安も後押しして、マーケットとしては拡大している。そういって、代表理事の恩蔵 優さんは発破をかける。

 そして、説明で示されたこの表をみてもその言葉の意図することは分かる。

 日本に限った話ではなく、世界でその動きは加速している。2014年からの成長の度合いから見て、2026年まで、年平均成長率は16.3%。つまり、世の中の動きを鑑みれば、今一度、その世界の土壌に目を向ける必要性がある。特にそれを日本企業がやらなければ、いけない理由はなぜだろう。

2.伸びない日本、伸びる越境ECマーケット

 それも、彼の示す表が表している。日本の経済のGDPは、2002年のそれを1と考えると、2020年段階でわずか1.01。中国が12.35であることを考えれば、いかに成長できていないか。

  さらには、個人消費も300兆円で横ばいが続き、小売市場が150兆円で横ばい。

 ゆえに、成長しているこのマーケットに日本企業がトライするべき。彼は強調するのである。

 そもそもこの「JACCA」にはECの専門家も多い。だが、敢えてそこを切り分けたのは、その難しさにある。だから、越境ECの「ナレッジセンター」となることを思い描き、2023年春先に産声を挙げた。その集まりが各々の状況に応じて、的確にアドバイスしていき、歩調を合わせて、成長していく。そうすれば誤った方向にはいかない。実際、立ち上げから9ヶ月余りが経過して、何が変わったのだろう。

 専務理事の川連一豊さんの振り返りを聞きながら考える。

 それでいうと、上から目線で恐縮だが、深く関わる人員の層が厚くなった。様々な勉強会を行ない、知見のある人たちを吸引し、学ぶ側と教える側の距離が近づいた。それで現実的な議論が交わされるようになったのだと思う。

越境ECが実は本質的である理由

1.自分の姿勢を明確にせずして世界は見えない

 正直、僕が一番感銘を受けたのは、Lingble 代表取締役 原田真帆人さん。この数ヶ月のうち、同協会のゴールドパートナーとなったことを明らかにしていたけど、壇上で話す内容は素直に共感できた。

 実はすごくシンプルだけど、本質的な話。ブランディングの価値への言及であった。彼の話を聞いて、ぼくは、日本企業は越境ECを“勘違い”していたのだと思った。

 確かに法律や税制などの大きな問題もある。加えて、どんなシステムを使うべきなのか。そういう議論がなされるのはごく自然な話。だけど、それ以上に大事なのは自分たちの提供価値が何であるかの議論だというのが、原田さんの話。

 それを議論することなく、いきなりトライする。だから、返り討ちに合う。今一度、その提供価値を理解することが大事な理由は、複数の国を相手にしていくからだ。

2.自らの統一された盤石な価値観

 彼曰く、全く違う価値観を持つ国々である。それを乗り越え、浸透させていくには、自らのブランドの統一された概念なり、考え方を強く持たずして到底、できない。

 彼の話をするなら、デニムを「デニミオ(DENIMIO)」というECで販売し始めた。そこで、海外に対してそれを売る際に、重んじたのは、その自分の提供するデニムの価値はどこで醸成されるかという部分の方である。グローバルにどんな顧客体験を提供できるか。そこを突き詰めて初めて、商品が「適切に」理解され、「共通に」販売できるという話である。

 言い換えれば、それをわかってくれる人に巡り会うために、商売をしていくということ。幸いにして、原田さんの場合、「妻がフランスのLVMHで仕事をさせてもらっている関係で」その提供価値がなんたるかを思い知ったとも語る。

 いわずもがな、そのブランドのイメージを世界的に見て「共通に」定着させているからこそ、価値も価格も統一された尺度で浸透しているわけである。

3.自分たちが見えたら本腰入れて投資を

 そしてこうも語った。「巨大な山を目指すのに、おにぎり一個じゃ登れませんよね?」と。まさにLVMHを見れば分かる通り、自分たちの立ち位置が見えたら、そのマーケティングに対して覚悟を決めて、投資をする。それが世界の標準として定着するから、どこの国にも一様に、浸透している。

 全く考え方が違う。これまでは手段に走った。だから、結果、安易にコンサルタントに依頼することになる。どれだけ名だたるコンサル会社であっても、それが難しいのは、越境ECの本質的な問題にあるからなのだ。それは、先頭に立つ人が、上記に示したブランディングを熟知していない限り、いかなる手段を用いたとしても、乗り切れないからである

 概ね、この考え方は一致しているのかも知れない。4PX謝郁安社長は壇上で「日本の価値あるものを世界に発信していこう」という説明の中で、SHEINなどに言及。それも共感できるものだった。

 SHEINなどが巧みなのは、生産は中国だがユーザーは海外というところ。つまり、商品単価を安く製造することで、各国の免税制度を使って、それぞれの国内企業と変わらぬ価格で、「日用品を」売っているのである。

 彼が暗に示すのは、日本の企業はそこに倣うべきではない。日本の固有の価値がそれ相応の対価を持って購入されるべきであるとしたわけである。これは図らずも原田さんがいっていたことに等しいし、恩蔵さんの「日本企業、がんばれ」の言葉に通じる。

数字で追い、世の中を知る

1.物販系BtoCECは14兆2000〜3000億円

 最後に、これは余談になるけど、触れさせてもらいたいのは、デジタルコマース総合研究所 代表取締役 本谷知彦さんの話である。少々、EC業界とっては少し衝撃的な発言だからだ。彼は、元々大和総研にいて、経産省が発表する「電子商取引に関する市場調査」を過去7年連続で作成に携わってきた人物。EC業界では知らぬ人がいない「EC化率」という言葉の生みの親である。

 彼は、ここの壇上で、先日、発表されたその「電子商取引に関する市場調査」に関して数字が間違っていると指摘したのだ。えええ?彼とは、よく議論をさせてもらう関係性で、この間も記事にしたばかり。

関連記事:成熟“ネット通販”に見る 頭打ちへのカウントダウン 今何をするべきか 経産省調査を本谷さんと紐解く

 その数字とは、「物販系BtoC ECの市場規模」について。2022年のそれは、13兆9997億円と発表されている。しかし、彼が今まで編纂に関わってきたやり方に基づけばおそらく、14兆2000〜3000億円となる。ええ?そんなに違うの?

2.現実はもっと越境ECが流通している

 引用するその元の数値で、間違えやすい元のデータを当てはめてみたら、13兆9997億円だったので、確信を得たという。これは、その計算を考えたのも代々、彼自身だからこそ、なせる技。編み出したその数字の出し方に基づいて、本来使うべきデータを用いれば、14兆2000〜3000億円なのだ。改めて、インプットしなおそう。

 さて、それを前提に、もう一つ、彼は経産省の越境ECのデータを出してきた。実際に、越境ECに携わる人たちから、彼はこう言われるという。「もっと動いているのではないか」と。それに関して見解を示したもので、自分が編纂してきたからこそ、この数値も元となるデータがまだ十分とは言えない状況だと指摘。

 だから、実際はもっと流通している可能性が高いと説いた。越境ECの伸び代があることを示すものであり、これから志す人の背中を後押しする発言である。

3.今立ち上がらずしていつ立ち上がる

 改めて、最初に話した通りだけど、日本にはまだその潜在的な力はある。

 女性の活躍を謳うエメラルド起業家クラブの菅原智美さんは、自身の組織で女性が活躍する映画を作る一方で、その映画でキーとなった香水を日本発信で世界に販売したいと語る。それは香水を通して、同時に女性の背中を後押しする意味合いも持つわけで、夢は広がる。まさに、be ambitious!

 元々、日本の商品力は高いのであり、高いものづくりの力とこれらがかけ合わさった時の爆発力たるや。

 最後に、これは余談になるかも知れないけど、先日、僕は別の場所で、BEENOS代表取締役 直井聖太さんに「越境ECは伸びているけど、まだリユースの方が存在感が大きいのではないか」そう指摘させてもらった。彼はその割合に触れることは避けつつも、その割合の多さは否定しなかった。

 それと同時に話してくれたのは、本来、新品が売られていれば、それが売れたはずなのに、商品が越境ECで売られていないから、リユースが購入されているという現実もあると話していたのだ。

 つまり、既にその土壌は既にできている。だからマーケティングも含めて、日本企業が本気で立ち上がらない限り、先ほどのSHEIN然り、世界視野で挑んでいる企業に埋没してしまう。今がまさに、変わるべき時であることを述べて、世界に羽ばたく日本商品に夢を見たいと願うのだ。

 今日はこの辺で。

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