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縦割りでは見えない 横断的なデジタル視点で 地方創生を果たす OPTIMISMで恩納村が意気軒昂

 地域創生。その言葉を多く耳にしてはいるけれど、実は地域の中からは変革が生まれづらい。だからこそ、俯瞰的な視点が大事。Rakuten OPTIMISMの会場で、楽天グループの塩沢友孝さんの話を聞いて、それを痛感した。一見、バラバラになった価値を俯瞰し、必要な要素を掛け合わせてみる。すると、その効果が一つに集約されて、「地方は最大化されるその姿」を僕は見たのだ。

地方創生の本質的課題に向き合う

1.サービスとして提供するだけではなくて

 どういうことか。

 楽天はそもそも、「楽天市場」、「楽天トラベル」などのプラットフォームを持っていて、それらはそれぞれに価値を持っていて、それが企業価値を高めている。でも、それはどうしても縦割りで見られていて、その価値に気付かなかったのである。楽天も、地方自治体も。ところが地方創生の部隊が「ふるさと納税」と、楽天の価値を掛け合わせる中で、横断的な対応に自分たちの存在意義を見出した。

 地方創生という部分に関しては強い意識を持っていた。それもそのはず、彼らの本質は、祖業「楽天市場」がそうであるように、地域の活性化が原点だから。その後、「ふるさと納税」の制度が整い、彼らのやり取りする相手が、自治体になった時に、より一歩踏み込んで、地域の課題に応えようという動きが生まれる。寄付の受付場所を作るだけではなく、何ができるのか。

 つまり、「楽天市場」の出店店舗、「楽天トラベル」の宿泊施設、ふるさと納税ならその返礼品にまつわる事業者がいて、関係性があることが強みなのだ。常に、自治体と第三者を巻き込む形で、地域の課題に向き合えるということ。まさに適材適所と言えるのは、そこに、塩沢さんが関わったことだ。彼は生粋の現場主義。それまでも「楽天市場」の多くの店舗と膝を突き合わせて話し合い、売り方の改善を共に考えてきた張本人。

2.俯瞰することでできることが見えてくる

 今度は、その相手を自治体に変えて、全国を飛び回った。それこそ、そこまで築き上げてきた「楽天市場」「楽天トラベル」のデータを武器に、自治体を相手に、何をすることがその地域を活性化させるのか。議論を重ねることになるのである。

 彼らの価値とは何か。その地域に何人、何円、どれくらいの人がお金を使ってくれているのか。それはその地域だけでは決して分かり得ないデータなのである。そこで、最初の言葉に戻る。地域の中にいては見えずらい長所を今一度、彼らが拾い上げる。

 「名産品が売れるよね」「名産品より観光の方が動きがいいね」という具合に、彼らの膨大なデータなどをフックに自治体と共に戦略を考え、行動を起こした。

 例えば、観光のほうが強い。だとしたら、ふるさと納税で観光へ導く方法はあるか。そうやって「戦略を一緒に考えて、施策にまで落とし込める」ことこそ、自分たちの強みだと塩沢さん。

 その上では、多角的に物事を見ていかないといけない。データを渡すだけではなく、データの読み解き方などにもケアは至る。それは言うなれば、その地域の人材育成となる。そこで育った人材は、地域自体のポテンシャルを最大化させる武器となる。未来へとつながるわけだ。

3.より実態に即して地域の課題に応える

 そこから派生して、ワークショップなども積極的に行うなど、密着度合いが高い。そういう意味で、彼らはその信頼を集めるに至って、今や47自治体と協定を結んでいる。

 では、どのようにやっていくのか。例えば、富士吉田市。「既に50億円から60億円とかという規模感で、ふるさと納税をやられています。そう考えると、寄付者は十万人規模でいるだろう」と。 

 ふるさと納税をするくらいにその地域に関心が高い。であれば「観光でいらしてみませんか?」と呼びかける。そこで着想したのが、観光クーポンである。「楽天トラベル」と連携して、ー%オフのクーポンを、ふるさと納税の返礼品として入れる。それを自治体に提案をするのである。

 単純に、返礼品のやり取りが生まれる発想から一歩踏み出した、ふるさと納税の活用。現地に足を運んでもらえば、宿泊施設は勿論、飲食店、お土産屋まで立ち寄る。それは、観光消費額という形でその地域にお金が落ちる。ふるさと納税をきっかけに、地方経済が回る仕組みになっている。

 ちなみに、Rakuten OPTIMISMではその中の選りすぐりの13自治体に参加をしてもらった。そのPRを兼ねて、自治体がここに立ち、時に、楽天社員も一緒について、声がけをしていく。

ふるさと納税を武器に観光客が増えた

1.縦割りでは気付けない価値

 思うに、どこの会社も縦割り。それらのデータを横断的に使うことを着想する人は少ないのかもしれない。しかし、利用者から逆算して、その利点を考えていくことで、まだ発展の余地はある。どれだけ優秀なエンジニアがいても、それを掛け合わせて、価値を生み出すのはまた、別の話。まさに塩沢さんのような人が実際に自治体に足を運んで、その悩みを解決する。血の通った関係性の中で、このような横断的な発想は、熱意を持って生まれるのである。

 この日、Rakuten OPTIMISMでブースを構えていた中で、沖縄県恩納村(おんなそん)にも話を聞いてみた。ここもまた、俯瞰的な視点で、魅力が開花した自治体である。

 語弊を恐れず言えば、この地域では名産品と呼べるものがなかった。逆に、彼らは弱みを強みに変えると言って、観光資源を全面に打ち出した。とはいえ、まだまだ、それを最大化しきれていなかったが、ここ数年で状況は一変した。

 今から2年ほど前から、恩納村が「ふるさと納税」で返礼品として用意したのはまさに「楽天トラベル」の割引クーポンのチケットであった。富士吉田市と同じ要領。観光資源をアピールするために、楽天のインフラを活用したというわけである。

2.掛け合わせで活況を生み出す恩納村

 これを機に、恩納村への旅行者数が増えたが、ここは発想の転換。大事なのは、旅行者が増えた理由が、宿泊施設による売り込みではなく、自治体の「ふるさと納税」の利活用によって創出されたことにある。言い方が正しいかはわからないが、ふるさと納税があるおかげで、“販促”ができたのだ。

 結果、この街が観光資源を打ち出し、描いていた体験企画は、旅行者が集まることで一層、活きる。それがまた、ふるさと納税の利用者を増やして旅行者を増やす。だから、楽天トラベルから恩納村は「地域創生賞」を受けるまでになった。

 これは楽天の数字だけではないが、恩納村の寄付金金額の総額(2022年度)は19億7647万9000円。観光客が増えれば、地元民の機運も上がり、今では「パッションフルーツ」に可能性を見出した。「定年して果樹を作りたいが、高齢者でもできるものはないだろうか」。そう言って、恩納村で平成10年、8名が立ち上がって栽培を始めたのが、パッションフルーツ。それを使って、独自で加工品を手がけるに至ったのだ。

 寄付金額が増え、それに基づき、起こした行動も大事。だが、何より士気が向上し、その自治体に活気が生まれていることが見逃せない。地方創生はデジタルが整う今の時代こそ、柔軟な発想が可能であって、今こそ、俯瞰的にものを見てみることが大事である。そこに、もっと開花する可能性が秘められているのだから。

 今日はこの辺で。

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