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夢を楽天的に語っていいじゃない 三木谷社長 モバイルとAIとデータの未来へ

 OPTIMISM、そう名付けられたイベントで、夢を語るのは楽天グループの三木谷浩史さん。OPTIMISMとは楽天的。思うに、挑戦とは楽天的でなければできない。夢を語る三木谷さんと、店舗はその意味で、一緒に歩調を合わせて、ポジティブに挑戦してきた“同志”。それ故か、そこには一体感があった。この講演で、三木谷さんが強調したのは「チャレンジすること」。モバイルとAIを掛け合わせることによって未だ見ぬ事ない世界である。挑戦は、この場所にいる人たちと共にまだ楽天的に続くのだ。

そのチャレンジとは?

1.衰退する日本だからこそのチャレンジ

 三木谷さんは、現在進行形で動いている行動を明らかにすることで、そのチャレンジ精神旺盛な姿を見せた。それは、店舗に発破をかける意味合いでもあり、事実、そこに力を得て帰る店舗の数も少なくない。それゆえ、彼のチャレンジを応援したいという店舗の声も聞かれた。

 では、彼が思うそのチャレンジとは一体、何か。

 それを語る上で、日本のこの30年を振り返った。彼の根底にあるのは「日本の再生」なのだろう。世界競争力ランキングの話をあげた。それによれば、1989年には1位だったのが、2023年では35位である。三木谷さんが就職したのは1988年。まさにこの当時である。

 時価総額ランキングでも当時、トップ20のうち14社が日本の企業。しかし現在は1社もいない。両方を知るからこそ、こう熱っぽく語り出す。

 日本、もっとチャレンジしていこうよ。

 「ジャパンアズナンバーワン」。そういえば、彼は、かつての日本が讃えられていた時代の話を持ち出して、自分たちもできるんだと鼓舞していた。僕は、未来に関しての質問を彼に投げかけた時にも、そう答えてくれた記憶がある。

 彼が歩んできた楽天の25年の間に、残念ながら日本は衰退したわけだ。彼はまさに楽天という会社を通して、日本全国の地方のエンパワーメントに努め、できるんだと働きかけてきたと言って良い。それは今も続いている。

2.モバイルは始まり

 さて、話を戻して、彼が現時点で追うチャレンジとはいかに。それこそが「物議を醸しているモバイル(苦笑)」の話であり、それが、必ずや日本の低迷からの脱却に繋がる。そう信じていて、だから「やり遂げてみせる」。店舗が多く集まる中で、そう決意を新たにするのである。

 では、何故モバイルにこだわるのか。非常にオーソドックスだが、純粋さも垣間見れる。

 一つは、会社が社会的意義のあることをやるべき。そこには必要があれば、リスクを取ってでも挑戦するべきであるということ。

 二つ目は、それが楽天という会社にベネフィットをもたらすものであること。

 三つ目が先ほどから触れていること。その行動が「日本経済を復活に導く」だけのインパクトがあること。

 その中で言うと、「モバイル」はもはや携帯電話の範疇を超えている。お財布であり、地図であり、映画館である。つまり、人々のあらゆる生活に密着するインフラなのだ。

 ここにAIが関わってくると、そのデバイスは彼曰く「知能ですらある」。だからここに人々の生活を豊かにする要素が詰まっている。彼が考えるのは、そのモバイルに昨今、話題の生成AIを組み合わせれば、これまでとは違った世界が広がるという未来絵図である。

3.AIが何故モバイルと親和性が高いと言えるのか

 それは、インターネットが出てきた時に匹敵する。ここを起点に革命が起こるからモバイル事業をとりに行った。そう説明するのである。今は、そのシェア争いを繰り広げているが、それが着地ではない。それを用いて、新しい価値を創造すること。そこに彼は面白みを感じてるというわけだ。

 そもそも「AI」とは何か。三木谷さん曰く、これまでのウェブはあくまで大きな図書館だった。しかし、AIはそこから踏み込んで、創造的価値を生んでいく。それが彼の言う「知能」であり、これらの門戸を開放することこそが、経済を発展させられると考えているわけだ。

 要するに、人工知能が人々の手のひらに行き渡るかどうかが重要。それにおいては、所得や住んでいる場所で格差があってはならない。それだけ、世の中を変えていく革命的な要素を持っているものだからこそ、大前提として「限られた人にだけ、使われる物であってはならない」。

4. 多くが手にするための企業努力と仕組み

 だから彼はその価格破壊の意味を口にする。従来では平均で7000円。ヨーロッパと比べると3倍近くの高値であるから、まずはそれを下げていこうと。高速で大容量の通信環境について、料金を気にすることなく、使える環境。それが彼らの意図する世界のスタートラインなのだという。

 四人の家族であれば、使い放題で40万円弱かかっていたのを、楽天では14万円弱で実現できるようになった。それは、他社より安いからいい。そう言っているのではなく、それで使える人の幅が広がれば、スマホを使う世界が変わる。寧ろそちらに意義を感じている。

 だから、楽天は極力、そこに対して何ができるかと考え、基地局に頼るのではなく、仮想的なインフラを作ることを着想した。従来型の基地局ベースのハードウェアではなく、ソフトウェアで管理を行い、そこにかかる作業量を大幅に削減。さらに、AIを用いて効率化を図る。そこでコストを極力かけずにすめば、それをユーザーの価格に反映させて、誰でも大容量を使えるインフラが構築できる。

日本を救うと意気込み行動で示す

1.誰でもモバイルを使える環境が整備された後には

 では、その夢はどこに直結するのだろう。おそらく、それらスマホの世界と楽天が結びつかない人も多いのではないかと思う。

 でも、それを紐解く上では、実は「楽天市場」で考えてみるのがわかりやすい。そもそも、楽天という会社は、「楽天市場」と「インターネット革命」の掛け合わせによって生まれたものである。つまり、その時代の潮流を読み、それに相応しいリソースと掛け合わせることこそが時代を切り開く。

 では、それを今に置き換えれば何に相当するのか。それは、ここまで成長した「楽天グループ」のリソースとモバイル、そしてAIである。これらの三つを掛け合わせた世界は、かつて、楽天市場がインターネットで世の中を変えたように、今度は、世界に轟かせる日本の存在を打ち出すことができると、夢を語るわけである。

 彼が念頭におく「楽天のリソース」というのは、ここまで培ってきたエコシステムそのものだ。エコシステムを通して、多くの人が残してくれたそのデータはAIを掛け合わせることによって無限の可能性をもたらす。そのインフラとなるのがモバイルであり、自らの過去の発展同様に、これらの掛け合わせに、自らの未来があると語るわけだ。

2.OpenAIとの電撃的な業務提携発表

 それを加速させるために、新たな発表をここで行い、会場をどよめかせた。画面に映し出されたのは、サム・アルトマンさんである。「chatGPT」を手掛けたOpenAIの代表者。同社との業務提携を行うと明らかにしたのだ。

 思うに、chatGPTは壁打ちである。人間が普段、会話するのと同じで、「ーーだとしたら、ーーーはどうなるだろう」。そう仮説を立て、回答を求める。人間であれば、それは過去の経験則の中から導き出されるけど、生成AIでは、それは膨大なデータと照らし合わせることで導き出される。

 生成AIは精度の高いデータが存在することで、その壁打ちの質を高めることができる。

 三木谷さん自身、「楽天グループが持っているデータは貴重。これだけ幅の広いデータを持っている企業体はそうは多くないから。」そう語る。つまり、創業以来、培ってきた「楽天グループのリソース」は楽天市場を筆頭に、トラベル、ファッション、ビューティなど多種多様になった分、人々の生活に密着した精度の高いデータに及んでいる。それらは、壁打ちにふさわしい情報となる。だから、掛け合わせによって新たな価値を創造できるというわけだ。

 それが楽天においてもマーケティング効率を20%アップさせるから、これこそがベネフィットと胸を張る。

3.新しい経済圏の考え方

 戦略共有会の話題と合わせて、僕は経済圏も新しい価値を提供するフェーズに向かっているのだと思った。これまでの経済圏というのはあくまでもポイントを軸とした回遊に基づき、同じグループの関連企業で購入したりサービスを利用する。

関連記事:OPTIMISMで語られたこと 2023夏 楽天市場 「戦略共有会」

 しかし、恐らくこれから経済圏にとってポイントは二の次なのかもしれない。実際にはこれらの集まったデータに基づき、快適で気持ちの良い購買体験などをもたらすために、AIなどが裏側で機能していく。それが集まるほど、お客様の満足度が向上して、その経済圏で買い続ける意味となる。

 もはやポイントだけで繋がっているのではなく、幅広く生活向上に努めるための経済圏。皆さん(消費者)のエンパワーメントであると説明する。

 そこにおいては、モバイルという生活インフラと、その中の情報と掛け合わせて新しい創造をしてくれるAIの存在なしには、それは語れない。三木谷さんが描くその夢はこの中にありそうだ。これは実際、「楽天市場」のショッピングすら買える可能性もあって、それが戦略共有会でも今後、楽天市場で「検索」しなくてもほしい商品に巡り会えるかもしれないという夢物語に繋がる。

4.モバイルで生活が充実し、楽しくなる

 間違いなく、これからは単発的に何かを検索する時代ではない。人間があらゆる仮説を立てて、相談する。生成AIにおいては、そこで具体的な数字や事象を織り込んで、その返答の精度が上がる。

 まるで頭の頭脳と、手のひらの頭脳である。

 この場に登壇して、彼が語ることの意味。それは、やりたいのは別にモバイルなのではなく、それは手段でしかなく、その上で起こる「人がワクワクするような未来」なのだと、同志にわかってもらう為のことだろう。同志って?それは、いうまでもなく、この日集まった「楽天市場」の出店者である。

 彼らこそがインターネット革命と「楽天市場」により、考えもしない未来を掴んだ張本人。それを共に歩んできた人だから、自分の気持ちを理解してもらえるだろうと、信頼を込め、語ったに違いない。

 なるほど。だから「チャレンジ」なのかと。彼自身の挑戦と日本人全体の挑戦とで。

5.同志よ共に歩んでいこう

 時代は移り変わりゆくもの。楽天の無謀は今に始まったことではなく、「楽天市場」立ち上げの時代から。でも、それを顧みず、挑戦して、やり続けた成果がここにある。今やそれなりの企業レベルになって、その挑戦に対しての異論は、当時と比較にならないほど、多く、影響が大きい。だからあれこれ言われるけど、彼の本質は変わっていないのだろう。

 一見すると、モバイルの話とOpenAIの話に終始しているようでも、ここまで、掘り下げて考えると、案外、彼の話は一貫していることがわかるだろう。

 果たして、彼が描くそのイメージは、本当に実現するかどうかは正直、わからない。それだけに資金繰りを含めて、悲観的な声はこれからも数多く聞かれるだろう。だからこその「POTIMISM」であるとも思う。

 別に、三木谷さんを擁護するつもりはない。だけど、僕は、このイベントの名前に準えて、こう思うのだ。どんなチャレンジも、OPTIMISM(楽観主義)でなければ、できるものではないと。

 おそらくここに集まる店舗達は、皆それを感じて、何かしら力を得たはずだ。なぜなら、彼らも苦労がありながら今の地位を築いたのは、間違いなくOPTIMISMな精神ゆえだからだ。あれはだめ、これはだめと言われがちな、世の中。だけど、チャンレンジこそ、明るく笑顔で力強く、突き進もうよ。それが日本を奮起させる起爆剤になるのかもしれないのだから。

 今日はこの辺で。 

 

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