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日本と海外を商品が行き来する上で越えるべき課題

 ネットのおかげで情報では国の境目をなくして、誰でも行き来できるようになった。けれど、通販ではまだ課題が多い。なぜなら、それは配信と違って、商品を物理的に移動させるから。このハードルを超えることが、いかに難しいか。通販がもっと、ネットたる所以を発揮して、自由に国の垣根を越えるために、必要なのは何か。リンクス代表取締役 小橋重信さんと、ボトルシップ代表取締役 佐山陽介さんとの対談を通して考えてみたい。

ボーダレスな世の中なのに

1.国を跨いで商品が届くまで

 リンクス小橋さんは、最初、アパレルの物流を経験。その後、IT系企業に勤めることで、自然な成り行きで、EC物流に関しての知見を蓄積する事となった。ただ彼の真骨頂は物流を俯瞰して助言することにある。通販をする上でも物流を強みにする術を説いてきた。

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 一方で、ボトルシップ佐山さんは国を跨いで通販を浸透させるビジネスに着手している。ただ、彼のビジネスが面白いのは、越境ECとはわけが違う。海外の企業が日本人に対して商品を売る為に、事業をしていて、海外企業の「日本支社」は彼らを必要として、そのマーケティング支援を受けているわけだ。

 とはいえ、彼らはこのビジネスをするようになって、日本の物流が「遅延なく丁寧に届けられる」ことが実は世界にとっての大きな差別化要因になることを、痛感した。

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 だから、この二人を引き合わせた。今回は「国を跨いで商品が届く」部分で最前線を互いに知見をシェア。そして、それを通して物流にまつわるビジネスチャンスを模索しようというわけである。

2.日本で売りたい海外企業は実は少なくない

 そもそも、ボトルシップのビジネスは、コロナ禍で脚光を浴びた。それまでも海外企業が、日本で法人を作って、国内で担当者を用意して、その運営を担っていた。とはいえ、日本の生活や言語がわからなければ、その売り方がわからない。だから、ボトルシップはその担当者を伴って、日本の企業でのコンサル実績を背景に、マーケ支援をしてきたわけだ。

 その話を聞くと、小橋さんがこう話を切り出した。「確かに、一時期、海外の企業なり人が日本のマーケットで商品を売りたいという話がありました。その時は、元々Amazonのバイヤー(マーケッター)をやっていた人たちに相談が舞い込んでいたようです」と。つまり、それらの人は日本での売り方について、Amazonを土台に海外企業に指南していたようである。

 ただ、時代が進化して、多様化した。佐山さんの場合、元々楽天にいたこともあり、それを「楽天市場」を軸に提案したり、自社ECサイトまで、そのマーケティングの幅を広げた。だから、彼らは存在感を出すのは自然な流れであった。

マーケティングだけでなく物流も一体で

1.よりボーダレスになる中で顕在化するであろう問題

 とはいえ、今は「どうすれば売れるのか」を軸に話が進んで、広がっている。けれど、いずれその規模感が大きくなると、物流が大きな課題になりそうだ。そう小橋さんは指摘し、佐山さんもうなづく。

 今はまだ小さい規模感であるから、そこまで大きな問題にならない。小口単位で限りなく、小さくやることで、個人対個人の海外配送に近い環境で、貿易と言えるほどの諸々の問題は軽減できるからだ。

 ただ、ボトルシップが実績を出すにつれ、企業としては本格的に一般貿易として、動き出すことになる。そう佐山さんは予測はしていて、自ずと本格的に物流倉庫を探す必要があるという流れになるだろう。けれど、そこでどんな課題感があり、どう応えればいいのか。それを考える上で彼は、この物流に関連する話に深い関心を持つに至ったのだ。

2.現状はどうなのか

 規模感が膨れ上がると、何が大きな問題となるのか。それは、国対国としての色彩が強くなる。だから、少しの曖昧も許されない。関税をどうするか。その商品は送ることができるのか、できないのか。その選別は勿論、商品ごと、HSコード(貿易をする上で必要な番号)が割り当てられ、国ごとに、異なる海外の税金(米なら州税)が求められる。果たして、企業側はそれら全部を把握して取引の中に盛り込めるだろうか。

 ざっと考えるだけでもこれくらいなのであって、細かく言えばキリがない。余談ではあるけど、小橋さんはこう指摘して、苦笑いした。これまで(今も?)日本で越境ECが浸透しずらいのは、これらに関する悩みに答える分かりやすい“駆け込み寺”がないと。

 ハードルが高いとむやみやたらに煽る割に、何のハードルが高いのかを、個人事業主単位で理解しづらいからである。この問題と規模が大きくなった時の問題は共通している。より縛りが厳しくなるほど、何が課題感が見えづらく、故に失敗も伴う。

分かりづらさをチャンスに変えた企業

1.テクノロジーで煩雑さを乗り越える

 だからこそ、見事だと最近、思わされた企業があると小橋さん。「佐山さんはこの会社、ご存知ですか?」と言って、説明を始めたのが、Global-eという会社の存在だ。「知りませんね」少し前のめりになって、佐山さんも耳を傾ける。

 一言で言えば、商品マスタを登録した段階で、それらに関連するものを一括で振り分けできてしまう。恐らくそれは国ごと、商品ごとに分かれるルールや定義をデータベースとして持っている。だから、登録される商品と組み合わせて、AIなどを活用して紐づけて、自動化しているのだ。

 勿論、確実に届けるための物流のフローを確立している。それだけではなく、HSコードなど、貿易にまつわる番号の割り振りも、商品登録段階で済ませてしまえる。これであれば、コストも事前に把握できるし、ちゃんと商品を送り届けることができるのは安心だ。

 しかも、同社は、日本から海外に送った場合の税(米なら州税)などの建て替えもしてしまう。ここまで整えた上で、Global-eはそれをShopifyのアプリで提供しているわけだ。これは賢い。

2.大手の数がまとまるブランドほど、利用が増加

 「実際、利用するとそれなりに手数料はかかるんです。でも、それでも利用する企業が多いのは、そこに関わる業務の大変さをわかっているからなのでしょう」と。

 そういって、小橋さんはそこを取引先とする著名なブランドの名前を挙げた。つまり、日本の中でもブランドが確立されて、海外にもしっかりと根付いていれば、顧客との関係は盤石だ。だからこそ、たとえ、比較的高い手数料を払ってでも、やるのだ。売れる数がまとまっていて、商品を手掛けてからロスなくちゃんと海外のお客様のもとに届ける。その仕組みは、顧客満足度を高める意味でも、喉から手が出るほど欲しい。

 改めて、ネットは物流と表裏一体であってその強みを活かした海外戦略である。寧ろ、ここまで来ないといけないのかもしれない。

 確かに二人が先ほど、話していた通り。今のうちに、ミドルレンジへと移った時を想定しておくことに越したことはない。より盤石な会員基盤やファンを持つブランドほど、それは必要とされるからである。また、そういうブランドこそ、企業としては手を組みたい。

 改めて、テクノロジーの意味を思う。ネットにより確かに情報において海外と日本との垣根が消えた。ただ、次に今度は物理的な要因が課題となる。まだ海外との物流は徹底されているとは言い難い。

3.越境EC系企業は日本国内の倉庫を起点にしたから躍進した

 勿論、国内には越境EC系企業のような会社があってどれも躍進している。日本企業が海外の人に対して売り上げを伸ばすことで、そのポテンシャルを引き上げた。それらが秀逸なのは、例えば自社ECにHTMLタグを入れて、海外のドメインのユーザーがあたかも国内で購入しているかのようにしていること。

 それで売れた商品は、海外向けに送る為の、日本国内の倉庫からまとめて出荷する。そうすることで、そのプラットフォームとしての地位を手に入れているわけである。

 ただ幸いにして、今回の議論は、ボトルシップがその「越境EC」の逆。生産国が海外にあって、その企業から日本人に売るという場合。だから、改めて、海外と日本との間で商品が行き来することがどういうことなのか。それを読者が本質的に分かり、気づくことができたのではないか。

 このボトルシップのような立場としてはいずれ、マーケティングにとどまらず、物流も含めて依頼が来ることがあるでしょうねと小橋さん。そのように想定するなら、まずは日本と親和性の高い国との間で、商品を集める拠点を作って、そこで仕組み化した上で、その国以外に広げてプラットフォームになるのがいいでしょうねとニッコリ。

4.事業は規模に応じてそのクライアントのレベルを多様に広げる

 確かに、それができるとすれば、企業としての幅が広がる。また、これまでできなかったミドルレンジの企業にもマーケティング支援ができて、伸び代がありそうである。

 ともかく、そのような未来はさておき、Global-eの話を聞いていると、まさにテクノロジーの使い道なのだと痛感させられる。ただ闇雲にデジタルを使えばいいのではなく、課題感に対してテクノロジーがどう答えられるか。そこに真実がある。なるほど、これは面白い。

 改めて、ビジネスは、刻一刻と変化している。

 一番変わるのは流通であって、そこでその悩みをどう共通化して、生産性を高めて、取引先に還元できるか。ネットは多くの人にとって身近になった分だけ、まだ課題は山積しており、チャンスは存在しそうである。こういうテーマで引き続き、このような対談を続けて、皆さんのビジネスのヒントにできればと思っている。

 今日はこの辺で。

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