半年で売上倍 WEGO EC モール 戦略
デジタルシフトが進む中、ファッション業界において EC のショッピングモールの存在感が増していると話すのは、 WEGO でECモール本部長を務める濱中眞紀夫さんだ。アパレルECの規模は2019年で1兆9100億円に及ぶが、楽天やZOZOだけでも1兆円を超えるのではないかと話す。だからこそ、昨年来、WEGOでは、濱中さんを筆頭に、EC の ショッピング モール を活用して、組織と仕組みを転換し、既に実績を出し始めているという。
WEGO EC モール でネット通販を攻略
濱中さんがWEGOに加入したのはECモール本部が立ち上がるタイミングであり、以後、売上が伸び、6〜7ヶ月程度を迎えた2020年12月段階で2.17倍まで伸長したのだ。濱中さんはまず組織の改革から行い、ECモール本部が運営者しかいないのに着目して、そこに変革を加えた。意図するところは、この部署内でサプライチェーンマネジメントを一気通貫でやろうということである。
これまででも、WEGOでは商品企画、生産、撮影、販促PR、運営販売という具合に、左から右へと役割分担して、業務の効率化を行なえていた。ただ、企業の規模も大きくなり、全体の意思疎通が生まれづらくなっていて、例えば、運営販売はお客様のことについては詳しくても商品企画の情報が薄くなっているという事態が起こっていたのである。
一気通貫で迅速に回せる組織
そこで、彼がECモール本部長として着任して以降は、その部署内にMDやSNS担当の販促PR部隊も入れて、できるだけ、お客様から得た情報を川上に戻しながら、一緒になって考える機会を増やしていったのである。このうえで、PDCAをまわしていくわけだ。
徹底して数字を洗い出し、検証を重ねて、データドリブンを形成していく。具体的には、注文情報を見れば、個人を特定しなくとも「何県」「年齢」「性別」などはわかるので、そこをチェックして「商品別」で見ていく。濱中さんに言わせれば、どの商品がどの年齢層に売れているのかなどの情報は、店を一変させる貴重な情報である。
また「売上」そのものは大事ではあるが、そのプロセスを重んじるのが彼の手法。むしろ、その内訳をわかりやすく見えるようにして、そこに打ち込む体制づくりをしている。
負けた中でも勝ったものもある
内訳の洗い出し方はこうだ。「負けた中でも勝ったものもあるし、勝ったものでも負けたものはある」と独特な表現で説明している。話を聞いていて思ったのは、相撲で例えるなら優勝したかどうかだけを見るのではなく例えば、8勝7敗でその内容も惜敗なのか惨敗なのか、勝ち負けの内容にこだわる、というわけである。
少し具体的な話をするなら、「メンズ」の「スウェット長袖」という具合に「細かな分類」を行う。その数にして110分類。一つ一つ、前年比で勝っているもの、負けているものを検証して、その勝ち具合、負け具合までグラフ化しているのである。
このモールで求められているのはスウェットなのかパンツなのか。しっかり売上を見ると共に、特に負けの幅を最小化していき、合計値で勝てるようにしていくことで、強い体制を築き上げるのである。
要は、積み上げ式なので、一人一人の役割が連携し合いながら、アクションを早く実践していきやすいのではないか。細かなところから改善が為されるので、先ほどでの相撲の例でいうなら優勝に近づきやすくなる。
ショッピングモールは ローカルマーケット
こうした分析と行動が意味をなす理由は、ネットのショッピングモールは利用者の世代が異なり、例えば、ショップリストでは20代が半分近くを占める一方、楽天では40代が多く見られるという具合だからで、そこを明確に把握して、相性の良い商品を見つけ出し、ベスト30という具合に勝負をかける。
組織として、商品を売るだけでなく、同じ商品であってもその写真の見せ方、施策などを変化させる土台があるから、部署一体でモールの特性にアジャストさせていくことでき、結果につながりやすいわけである。そう考えると、同じ商品(同じ見せ方)が多くのモールを超えて「等しく適品」がどうかという部分には少々疑ってかかった方がよく、コピーで展開することは危険だ。
お分かりいただけただろうか。ただ漫然と商品を出すのではなく、ある意味、ショッピングモールはローカルマーケットのようなものと濱中さんがいう通り、商品を細かく分類して、お客様にとって「適品」かを検証する必要がある。それを裏付けるのはデータであり、そういう意味でのデータ活用である。
同時に、それを察知して販促などに迅速に活かせる組織で、それらの要所を抑えた上で、データを元にPDCAを回しているから、短い期間の中で結果が出ているということなのである。ただ、そうやって戦略的に取り組めていない店舗が多いからこそ、逆に、これだけ彼らがすぐに実績が出るということであり、多くの店舗にとって多店舗展開の戦略を今一度、見直していくべきであるように思うのだ。
今日はこの辺で。