ものづくり初心者がECで稼ぐ!小売の仕組み・利益率・値付けの基本講座

全ての小売業の原点は商品にあります。例えば、お店も、メーカーも、そこで働く人の給料はどのように発生したのでしょう。言い換えれば、どうやって企業はその中で、利益を得ているのでしょう。その話をしましょう。商品が原点にあるから、メーカーを軸に小売業との関連性を俯瞰してみる。そうすることで、その中身を理解することができます。
1. 小売の理解は「ものづくり」から始まる
まず、小売を考えるときに欠かせないのが、「そもそも商品を生み出すメーカー(製造企業)の存在」です。もし商品がなければ、お店に陳列する物がなく、小売そのものが成立しないからです。
1-1. いろいろなメーカーが全国に存在している
有名メーカーとしては、トヨタやSONY、任天堂などの大企業をよく目にします。でも、日本には中小含め、驚くほどたくさんの製造企業が存在しています。大手メーカーの部品をつくる町工場や、オリジナルブランドを立ち上げる小さな会社など、その形態は実にさまざま。
ときには下請けとして過酷な労働環境に置かれている場合もあり、そうした課題をデジタルや新しい仕組みを取り入れることで改善しようという動きも進んでいます。
こうしたメーカーが元気でいてくれるからこそ、私たちが手にする商品が豊かになり、小売業も成り立っています。
1-2. 小売店との距離が縮まってきた
従来、メーカーが商品を大量に作り、それを問屋経由で小売店へ卸すというのが典型的な流れでした。問屋は複数メーカーの商品をまとめて仕入れ、小売店に「必要な量」だけ届ける役割を担います。
しかし最近は、ネット通販(EC)の存在が、メーカーと小売店や消費者をぐっと近づけています。
2. 小売構造の基本と“利益”の考え方
商品を作ったあとに「どうやって売ればいいの?」と考える前に、あらかじめ小売の仕組みや利益の流れを知っておくと、ものづくりがグッとやりやすくなります。
ここでは、まず小売業の基本構造と、最終的に発生する利益の仕組みをやさしく見ていきましょう。
2-1. 卸売と小売の役割
ものを作るメーカーがあり、その間に問屋が入り、小売店へと商品を届ける。これがいわゆる「卸売・小売」構造のベースとなります。
• メーカー:商品を企画し、製造する。大量生産して売上や利益を確保するために、安定的に動かせる生産ラインや販売先を確保する必要がある。
• 問屋(卸売業):メーカーからまとめて商品を仕入れ、小売店に小分けして販売する。複数のメーカーの品を扱い、小売店が“ちょうどいい”量を注文できるようにする。
• 小売店:実際に消費者へ販売する最前線。店舗やECサイトを通じて商品を陳列し、価値を伝えながら接客・販売する。

つまり、メーカーで商品を作ってそれを問屋に売るわけです。問屋はそこで粗利を取って、店舗に販売するわけです。ちなみに、企業から企業へ商品を売ることを「卸す」という言い方をします。だから、「卸売」という言葉があるんですよね。
ちなみに、小売店は、仕入れ値の価格(上記で言えば、600円)を下回らない限りまで、値下げしたりしながら、リスクヘッジをするわけです。よく、半期に一度、在庫一掃セールを行うのはそういう理由からなのです。
小売店が気にする「適量仕入れ」
小売店は、必要以上に商品を抱えて在庫リスクを背負わないように、「適切な量」を仕入れます。大量ロットから小分けして仕入れられるのは、問屋を挟む大きなメリットです。
メーカーというのは数を多く作って、それを色々な問屋に「卸す」事で利益を出します。商品を多く作れば、その分、工場を常時、稼働させることができます。ずっと稼働し続ける工場の数はどのくらいか。そしてその製造に見合った売れる数はどのくらいか。そこに意識を割きますから、細かな店舗へのケアは「問屋」に任されます。
一つの段ボール箱のなかに例えば12個なり、24個ずつ単位で送ります。「1ロット」という言い方で、原則、同じ商品をその単位で、出荷します。それは「3個発注」などと言って個々のお店に送るのであれば、まず段ボールに隙間ができます。それでは、メーカーとして生産性が高いとはいえません。だから、間に問屋が入り、この1ロット分を買うのです。
それで、小分けして、他のメーカーのものと合わせて、「小売店」に販売するわけです。
細かな話になりますが、この段ボールの中身に関しても、「卸値の代金が全部足して20,000円以上になれば、商品を詰めた段ボールの送料を無料にします」などと言ったりします。そうやってなるべく段ボール一つを有効に皆が活用して、企業から企業へと受け渡されていくのです。
2-2. 値段はどうやって決まる? 〜「値付け」の大切さ〜
商品が消費者に届くまでには、メーカー・問屋・小売店と複数の段階を通ります。各段階で「利益」が発生しなければ、事業として成り立ちません。
とはいえ、最終的な販売価格(=定価)は商品本来の“価値”と、私たち消費者が「その価値にいくら払えるか」で決まっていきます。
たとえば、食料品の価格は季節や収穫(漁獲)量などによって変動します。どんなにおいしくても、出回っている数が多ければ比較的安くなり、逆に希少であれば高くなりがちです。
例えば、スーパーに並ぶサンマを思い浮かべてください。このサンマの価格は変動しています。100グラム60円から140円の価格推移からすると、大1尾は120円から280円になるわけです。
じゃあ「美味しいサンマは価格が高いのか」。そうとは限りません。ここが値付けの重要なところです。その時に出荷量が多いかどうか、で判断されます。つまり、美味しいかどうかではない。市場に出回っていて、レアかどうか、ということになります。だから、価格というのは価値に伴って、変動するものなのです。
常にお客様の求める価値と価格は対等なのです。
「どんな価値を提供する商品か」「それにいくらなら払ってもらえるのか」。それは、いつでも変動するもの。だからこそメーカーは商品の品質やブランド価値を高め、小売店はその価値をうまくお客様に伝えることが大切なのです。
3. ものづくりと小売が近づく時代
ここからは、実際に商品を作る前に「どんな視点」を持っておくと、よりスムーズに販売戦略を立てられるのかをお話します。
3-1. 小さな「偏愛」から商品が作れるように
ECが普及した今、個人や小規模ビジネスでも、自分の得意分野や趣味など「偏愛」をベースに商品を開発し、直接売ることが可能になっています。
たとえば、筋トレ好きの店長さんが独自レシピのプロテイン食品を作ってECサイトで売ったり、ハンドメイド好きの方がアクセサリーをオンラインショップで展開したりするケースが増えていますよね。
参考:筋トレしないと毎年1%筋肉が減少してる? 大胸筋マニアのバキバキマシーンの着眼点
これまではメーカーとして大量に作ることが前提でした。しかし、今は少量生産や受注生産がしやすくなり、「こんな商品が欲しい!」という思いがすぐに形になりやすいのが特徴です。
3-2. 小売目線からの「生産数」や「在庫管理」を考える
一方で、いざ商品を作るとなると、生産数や在庫の管理が新たな課題になります。
小売店の視点からみると、「作りすぎて在庫を抱えてしまうと赤字になる」「逆に売り切れてしまって機会損失になる」など、仕入れ担当者は常に適正量を見極めようとします。
あなたがメーカー兼小売を担う立場で商品を作るなら、販売まで含めたシミュレーションが重要です。
- • 何個くらいならお客様に行き渡るだろうか
- • どれくらいの価格なら喜んで買ってもらえるだろうか
- • 運送コストや保管コストはどのくらいかかるのか
こうした視点を持っておくと、無理に大量生産せずに売り切れる数だけ作ったり、逆にニーズが大きい場合は追加生産を素早く行ったり、柔軟に動けるようになります。
3-3. ブランド価値と差別化
大手メーカーのようにCMや広告戦略を仕掛け、大人数に向けて大々的に売る方法もあります。ですが、個人や小規模ビジネスの場合は、「自分の世界観」や「偏愛」の延長で作った商品を、ピンポイントで好きになってくれるお客様に届けるのもひとつの戦略です。
そのためには、商品そのもののこだわりポイントを伝えたり、ブランドとしての世界観を大切に育てていく必要があります。
「多くの人に広く知ってもらわなくてもいいから、濃いファンが付いてくれれば十分」。そんな考え方も、今のEC時代においては十分に成り立ちます。
4. まとめ:小売の全体像を知ると、ものづくりがもっと面白くなる
1. メーカー(ものづくり)の役割
• 商品の企画・製造をし、定価に見合う品質やブランド価値を提供する。
2. 問屋(卸売)の役割
• 多く作られた商品をまとめて仕入れ、小売店に“小分け”して売る。多品種・小ロットのニーズに応え、物流の手間を減らす。
3. 小売店の役割
• 消費者と直接向き合い、商品の価値を伝えて販売。在庫管理や値下げのタイミングなどで利益を調整。
いまや、この「メーカー」「小売店」の垣根が低くなり、自ら企画・製造しながらECなどで直接販売することが可能になりました。小売の視点を持ちながら商品開発を行えば、作りすぎや売れ残りを防ぎ、必要な数だけ販売できるようになってきています。
もしあなたが、
- • 自分の好きなこと・偏愛を活かして商品を作ってみたい
- • ものづくりを通して小売の世界を学んでみたい
- • 小規模だけど、しっかり利益を出して事業を伸ばしていきたい
そう思うなら、ぜひ今回の内容を参考に、ものづくりと小売を一体で考える視点を大事にしてみてくださいね。
ものづくりの前に、小売の仕組みを知る。そうすることで、完成した商品を「必要としてくれる人」に届けやすくなり、あなたのこだわりや想いがより多くの人に伝わるはずです。
新しい時代だからこそ、メーカーと小売の距離が近づいています。ぜひ、その流れを活かして、より楽しく・より儲かる「あなたらしいものづくり」を実現してください。
今日はこの辺で。