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生活の変化で視点が変わり 素材の価値は時代に合わせて更新される ギフトショー見て歩記 2022 春

 実に、様々な切り口で商品が並んでいる。僕は「東京インターナショナル ギフト・ショー春 2022」にいて、そう感心しながら眺めていた。素材に目をつけた斬新なアイデア。そして、伝統を重んじてかつての長所を新しい視点に変えてチャレンジする企業の姿。商品は様々な形で存在して、僕らに気づきをもたらしてくれる。

貝殻の形をした優れもの

1.見た目だけではない理由

 「か、貝殻?これ、なんですか?」

「はい。実は、POT HOLDERという商品で、キッチンに馴染む鍋つかみです。」視点が面白いのは鍋つかみというのはどちらかと言ったら、キッチンの脇役。だが、この商品はそこにデザイン性を盛り込んで、インテリアの一部として用いながら、それ自体は今の時代に即した機能性になっているというわけである。

 具体的にこのサイズというのがポイントで、かつてであれば、鍋も大きく、ミトンも大きかったのだが、実際にそのサイズ自体は住宅がコンパクトになってきている関係で、逆に大きすぎて、そのままでは、使い勝手が悪くなってきている。

2.時代によって実用性の中身も変わる

 つまり、時代によって商品というのは変わるのかと思った次第で、この商品では手のひらサイズにして、磁石で2つの貝殻を合わせるようにして保管し、上の取手の部分で吊り下げられる。

 磁石の部分を引き離すと、二つに分かれて、それを右手、左手に持って鍋をつかむわけであるけど、サイズも小さいので利便性が高く、海外ではその機能性が評価されているのだ。

 今、海外と書いたけれど、実はこれは韓国でヒットしている商品で、その海外での実績をベースにして、日本国内での販売をするべく、クラウドファンディングで資金を集めて、それを販売しようと考えているわけである。

 以前も書いた通りだが、商品の仕入れというのはコストがかかるので、その部分を最近では、クラウドファンディングの土壌に乗せて、買いたい人を事前に募っておいて、仕入れた分のコストを軽減しているというわけで、小売の多様化が進んでいる。

伝統とチャレンジの先に

1.紙への執念

 商品というのは素材とアイデアの掛け合わせなので、その意味では、時代性を反映しているわけである。面白いのは、古き良き伝統を重んじて、その伝統への関心を引き寄せようと、新しいアイデアで気を引く歴史のあるメーカーの姿も、僕の目に止まった。

  その意味では、まず「懐紙」という言葉をご存知だろうか。懐に入れて携帯する紙のことをいうそうだが、僕は知らなかった。聞けば、納得なのだが、古くは日本人は着物が主流だったこともあり、そこで、懐に和紙を二つ折りにして、中にティッシュや便箋などを入れて忍ばせておいたというわけである。

2.徐々に地道に進化している

 京都「辻徳」というブランドでは、長らく、そうやって「懐紙」を軸に紙と向き合って色々な切り口で商品を生み出していて、これまた僕は知らなかったが「ふきよ紙」というものがあるそうだ。

 天然シルクを配合させた拭くための紙だそうで、紙そのものへのこだわりは伝統への思いやりとリンクしているわけだ。メガネクリーナーや口紅押さえとして使うそうで、各々考え方は同じで、クリーナーでは皮脂を吸着して除去するし、口紅をつけた後に、これで三回ほど、ホンポンと押さえると、マスクに口紅がつきにくくなるのだ。

 なるほど、僕は男性だから気づかなかったが、確かに口紅がマスクに着くということに抵抗を感じる人が少なくないのは容易に想像できる。

3.紙で作ったお皿??

 中でも一番、僕が惹かれたのは「プリーツのお皿」である。プリーツなので、紙自体に折り込みがあるから、それを広げて紙を立体的に扱い、そこに形状をつけて、お皿にしたというわけである。

 不思議な話だけど、先ほど話した「懐紙」にも通じていて、それは「敷く」「拭く」「包む」といった要素を持っているから、紙のそういう特性に着目したというわけである。プリーツ状の弾力性や耐久力をちゃんと活用して、お皿として機能させながら、紙ならではの色合いと素材感で、おしゃれさを演出し、その見た目と相まって、可愛らしくお菓子を楽しく引き立てるわけである。

 正直、用途だけで考えれば、それは必要ないものだけど、食べる時間を食べるだけで満たすのではなく、心を満たすというベクトルで商品開発を行ったというあたりが、これからの商品開発において、大事なテーマ性という部分と直結するので、取り上げた。動画で見るとこんな感じである。

4.掛け軸のイメージを今風に

 もう一つは、これまた僕は知らなかったのだが、「表装裂(ひょうそうぎれ)」という言葉をご存知だろうか。掛軸・巻物・屏風・襖の美しさを引き立てる裂地(きれじ)というもので、掛軸の絵などは実は淡い色合いの額のようなものがあることに気づいているだろうか。

 創業150年の歴史を持つ鳥居という会社が、その文化を大事にするべく手掛けたのが、「がくぶち」という商品で、全く同じように掛け軸にその額縁を使っているのであれば、それをもっと今風に、ポストカードを入れられるように、サイズを変えて提案したというわけである。

 何気ないその作品の一つひとつも、まるで古風な家に飾られた掛け軸のように気品を持って、僕らの部屋に新しい価値をもたらしてくれるというわけである。よく考えるものだと思う。

5.心に染み入る価値

 なんでもスマホの画面の中で事足りる時代である一方、人々は生活に充実感をもたらす価値あるものを探しているのも確か。僕は地方の会社の昔ながらの素材はそこにチャンスがあると思っている。なぜなら、素材と文化が一緒に滞在していて、それが商品自体の深みを増して、それを持つ人の気持ちを充実させるから。

 生活の変化に合わせて、商品が変化していくのと、素材を軸に、今の時代に寄り添うために、どう変化していくかという二つの視点が、既に素材なり価値なりを持つ製造業にとっての、これからの「ものづくり」のヒントになるのではないかと思う。

 今日はこの辺で。

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