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着眼点が素材に光を当てる くらしきぬ “靴下”で見せた企画力

 これからは、全く新しい考えもしなかった生活が、きっとものづくりによってもたらされる。くらしきぬが最近、「シルク&ウール プレミアムパイル靴下」という商品を発売して、話を聞くうち、そんな気持ちにさせられたのだ。

くらしきぬ の“靴下”は何が違う?

1.素材選びと製法

 「くらしきぬ」とは素材の良さを活かし、お客様目線で必要な商品を提案し続けてきた岡山発祥のブランド。そんな気持ちに僕がさせられた理由は素材選びと製法にある。

 商品名にある通り、「シルクとウール」を素材にしているが、これらは普通、靴下に使われることはほぼなく、例えばウールで言えば、マフラーやセーターなどでのイメージが一般的なのである。

 でも、それを使うことの意味、それはくらしきぬだからこそ、説明がつく。「くらしきぬ」は、これまでもずっと素材にこだわった商品が多く出ていて、開発にまつわる話として、僕が印象に残っているのは「裏切らない」という開発担当の瀬良さんの言葉である。

2.裏切らない 商品開発の姿勢

 要は「謳い文句」として、素材を持ち上げることがあっても、実はその素材がそれほど商品で機能していないことが多い。けれど、彼らのブランドは、貪欲にその素材の良さと真摯に向き合い、どうやってそれを商品で再現するかにずっとこだわってきた。

 だから、この商品でも「裏切らない」。

 そもそも、シルクは肌に優しい繊維として有名だが、水分を吸ってくれる成分としての強みもある。だから、彼らは贅沢に、その吸った水分を発散させるという意味あいで、ウールを一緒に採用した。

3.実用性と風合いの両面を兼ねる

 そして彼らは敢えて一枚の靴下の中でそれらを組み合わせることで、それ自体で、冷えとりとしての役目を果たそうと考えたわけである。しかも、幅広いサイズに対応できるよう、かかとを作っていないため、男性にも使える仕様。多少、普通の靴下よりは値段は高いが、それに見合った価値を提供してくれることは、一つ一つの工夫からもよくわかる。

 しかも、同じく「パイル」と商品名にある通り、タオルのような仕上がりであることも、「裏切らない」大きな売りの一つ。甘く撚る事で柔らかな質感を作り出しているそうだ。僕も履いてみたけど、素足で絨毯を歩いているような、弾力性ともちもち感があるのが、靴下から受ける印象と少し違うのだ。

他にはない視点ゆえの「産みの苦しみ」

1.長くずっと心地よく使ってもらいたい

 とはいえ、この素材の価値とこのふんわり具合にかけた時間は1年が経過し、あまりに長く遠い道のりで、これこそ、産みの苦しみだったと言えよう。

 「なぜ、そんなにかかるものなんですか?」

 そう僕が問うと「縮みですね。洗濯などにかけてしまうと、考えられないくらい小さくなってしまって」と瀬良さんと最初の頃の悩みを振り返り、「どれだけ小さくなるのだろうと、靴下とは思えぬ大きなサイズで作って、試したりもしました」と笑う。

2.チャレンジできるのお客様のおかげ?

 要は編み目が大事なのであり、詰まり過ぎては固くなり、その逆であると縮みが激しくなってしまう。縮みと風合いとの間で何度となく、工場と掛け合ったようだ。そして、今のバージョンは、社員に試して、これなら大丈夫と太鼓判を押した自信作だ。

 ただ、登場人物はそれだけではない。ここには見えない、お客さまもこの商品に関わる登場人物である。え?どういうことって思うだろう。

3.レビューで分かった彼らの姿勢への支持

 今回の取材では、マーケティング担当の片山 仁さんにも同席してもらっていて、彼はそれに気づかせる発言をしてくれた。実は、この商品自体の戦略にも通じているのだが、ここ最近、過去、商品を買ってくれたお客様にマーケティングツールを使って、レビューを寄せる取り組みをしてみたのだという。

 くらしきぬの商品は、価格訴求の動きとは一線を画しており、素材に目をむけ、商品を通して、お客様に今までにない価値や満足をもたらせる取り組みをしてきた。その姿勢は、語弊を恐れず言えば、人によっては割高で、受け入れられるかどうか、評価の分かれるところだ。

深く尊いお客様との赤い糸

1.背中を後押しするお客様との接点

 だが、寄せられた殆どのレビューにはそれが受け入れられていることを実感して、次に期待していることがわかった。だからこそ、それが次の商品企画の励みになって、例え今回の靴下のように、他ではやってなくても、チャレンジの背中を後押ししてくれている。そんな風に僕は思ったので、大事な登場人物と書いた。

 「これ、瀬良さん、喜んでましたよね」と片山さんが挙げたのは、「子供のために買った商品だけど、自分も使いたくなりました」という一母親のレビューで、瀬良さんは嬉しそうにうなづいてこう話した。

  「卸として取引先の要望を集めながら、商品に反映していくのもプロとして魅力があります。ですが、僕はこの会社に来て直営のECサイトでお客様と直接、つながりを実感しています。だから私はお客様を身近に思い浮かべてチャレンジできました。それが受け入れられると格別な喜びだし、苦労も報われます。本当に楽しい」と。片山さんのような人が横にいて、そして新たなものづくりの価値が、ネットの力にもたらされたのかと思うと、僕は感慨深く思いを巡らせた。

2.素材の価値を掘り起こす

 このブランドで、お客様との間にあるのは、商品を糸のように紡いでいく深い、深い、関係性なのだと思った。

 瀬良さんと話して「これからやっていきたいのは何か」と聞いた時に、その答えがこれまでの背景を聞いているからしっくり来た。今回、ウールやシルクの素材をセーターなどとは違う形で表現して、靴下なのにタオルを思わせる製法で、新たに、お客さまに満足をもたらしたのとなんら変わることはない。

 これからも素晴らしい素材を掘り起こして、どうやったらその価値を商品で発揮できるかどうか、そのチャレンジを続けたいというわけである。

3.お客様とメーカー、工場とで文化を作る

 最後に、僕が手にしたその靴下に対して、片山さんが言うわけである。

 新しい視点の商品開発が、お客さまの心を動かしているとしたら、実は発売してから、お客様が、そうやってその商品との一番、いい形の向き合い方を模索する中で、新しいストーリーが生まれるということだなと。それはもはや、文化だよね。

 ものづくりが、新しくもたらす「充実した生活」である。また、そうやって、少しでも素材の価値に触れる機会が増え、それに職人たちが救われるとしたら、どれだけ素敵だろう。

 そんなふうにして考えもしなかった生活を、これからのものづくりはきっと提示してくれる。今ものづくりに必要なのは、そんな文化の醸成だ。くらしきぬはそれを一歩一歩、お客様と共に歩んでいくのだ。それこそが来るべき新時代である。

 今日はこの辺で。

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