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ガーナで 農家と チョコ 作り 大学生 田口愛 の挑戦 MAAHA

大学生の田口愛さん

 大学生が、遠く離れたガーナにいる農家の人たちと触れ合い、原料のカカオからチョコを製造して本格的なブランドを立ち上げる事になろうとは誰が予測しただろう。今、そこに応援の声が寄せられていて、そのチョコはバレンタインデーに、西武池袋本店の『チョコレートパラダイス2021』で世界の名だたるブランドと肩を並ベて陳列されていた。成し遂げたのは「 MAAHA chocolate」大学生の田口愛さんだ。

チョコレート に元気付けられた田口さん MAAHA で世界を元気付ける

 ことの発端はどこにあるのだろう。遡る事19才の時、彼女は自らお金を貯め、初めて旅行でガーナの地を訪れた。彼女にとってチョコは特別なもの。彼女とチョコとの運命の赤い糸には、祖父とのエピソードが隠されている。

 祖父は彼女に会う度、いつもチョコレートを手渡してくれ、彼女は子供の頃からそれが嬉しくて、決まって大事な時にはチョコを口にするようになった。チョコは彼女にとって縁起の良いおまじないのような、救世主。気持ちを支えてくれた元気の源であったのだ。

 だから、彼女がガーナへの関心を深めるのも自然であった。チョコの原料はカカオであるが、そのうち日本で輸入されているものの8割がガーナ産である。それを知った彼女は直接、農家の人に会って、お礼を言おうと、先ほどの旅行に繋がる。

チョコレート の素晴らしさを農家に伝える

 ただ、ここが運命の分かれ道。ガーナに住むカカオ農家の人はチョコレートの存在を知らなかったのである。彼らにとってカカオは「金の成る木」とだけ言われて、それがどういうものになっていくのかまでは知らされていなかったのである。ガーナ政府が買い取り、しかもそれが均一価格であるが故、質に対する士気が上がらず、それが結果、購入を減らすという現象も起きていたそうだ。

 それに衝撃を受けた彼女は、ある決意をする。

 まず、カカオ農家の人たちに、チョコレートを見せたい!と。自らクラウドファンディングで資金を募り、そこにチョコレートの工場を作るのである。「工場というにもおこがましい家を改造したものなんですけどね」と笑う。そして、その夢として、現地で彼らとともに作り、質に見合った価格で輸出しようと考え、実行に移すのである。

 とはいえ、カカオからチョコレートにするのはそう簡単ではない。工場だけではなく、その中身も伴っていなければならない。

 「例えば、チョコのお菓子を作るにしても、製菓学校ではクーベルチュールといってチョコの状態のものをケーキの周りに固めて作ることしか学べないんです。つまり、カカオからチョコを作ることまでできる人は、日本においてもそうはいないんです。だから、どうしたらいいんだろうと思いました」と田口さん。

米粉を作る機械に チョコレート 作りのヒントが

 そして、彼女が着目したのは、米粉を作る機械。「実は、米粉を作る機械を使えばチョコレートを作れる、と言う噂が10年ほど前から、あったと言います」と彼女は語り、その米粉の機械をガーナに持ち込んで、チョコ制作につなげたのだ。カカオをすり潰して、それを砂糖と混ぜる。

 カカオを生産しながらチョコレートの味すら知らなかった農家の人たちは、そのチョコレートを口にするなり、皆一様に笑顔を浮かべ、一層カカオに対して強いこだわりを持つようになったという。

 「普通、チョコでは乳化剤やバターとかが入っているのですが、本当にカカオと砂糖でしか作っていないので、本格的なカカオの風味が出ます」と彼女。話始めると止まらない。彼女はチョコのことで夢中で結果、大学生なのに生活の大半をガーナで過ごすことになったというのだから、いかにその想いが強いかをうかがえる。でも、彼女にとってはそちらの方が大事であった。

 そのこだわりはチョコとしての品質を向上させ、ブランド化の話が持ち上がるに至った。そして、彼女の手によりガーナ発祥のチョコレートブランドの産声があがる。名を「MAAHA chocolate」といい、MAAHAはガーナで挨拶の言葉を意味する。

 そして、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、彼女は日本へと帰国した彼女は、自らのブランドについてSNSで呟き、「西武池袋本店」の催事担当者の目に留まる。催事担当者は会ってそのチョコの味を知ったその場で、チョコレートパラダイス2021での出店を決意し、彼女にオファーした。そして、バレンタインデーのこの時期に、名だたるチョコレートブランドと並んで、この商品が陳列されることになったのである。

中身を取り出すとこんな感じ

 僕もまた、ドライフルーツ(ストロベリー)のチョコを購入すると、彼女は「ガーナでは多くのフルーツが生産されるのですが、冷蔵庫はないので、保存できず、処分していたのです。そこで、私は、フルーツをそれを網の上に載せて、風通しのいい場所に乗せて、保存して固めておいたのです。」と話し始めた。

 「それって、、」と僕が言うと「はい。日本でいうところのドライフルーツです。それも私の大好物です!」と答え「まさか一件一件、冷蔵庫を用意するわけにはいかないと思って、これを着想しました」と笑う。彼女なりのセンスある発想で、ガーナにサステナブルをもたらしている。

 勿論、その後、食べたドライフルーツを添えたMAAHAのチョコのその味は、濃厚でほろ苦く大人の味わい。確かにカカオの風味を直に感じる、格別な仕上がりであった。

 それを食べながら、ふと思う。人生は本当に、誰かに用意されるものではなく、自ら築いていくものなんだなと。彼女はそれを地で行っている。

 田口愛さんの一歩は、ガーナのカカオ農家に誇りを与え、品質を向上させ、また、彼女のアイデアで新しい文化も生み出して、食べる人に感動を与えている。ちょっと語弊のある言い方だが、必ずしも大学で授業を受け続けるだけが人生じゃないんじゃないかと。

 祖父からもらったチョコがいつも彼女を元気付けていたように、今度は彼女が作ったチョコがガーナをはじめ、きっと世界の人々を元気付けていくに違いない。おじいちゃん、グッジョブ。愛ちゃん、グッジョブ。

 今日はこの辺で。

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