今「かわいい」の最前線とは?「Sanrio Lovers Party」で韓国と調和して表現する新たな潮流
なんとかわいいツーショットなのだろう。ここは「Sanrio Lovers Party」というイベント会場。ただでさえ「かわいい」空間が、俳優の矢吹奈子さんとハローキティが来てくれたことで更に際立つ。思うにその「かわいい」の定義って何だろう?そこにトレンド的要素を含むのは、恐らくそれは時代ごと変わるものだから。サンリオは時代ごとに、かわいいを上手に取り込んできたから、彼らを見れば、それが見えてくる。今でいうなら、かわいいと韓国との間には因果関係が少なからずありそうだ。
「かわいい」で手を取り合う
「Sanrio Lovers Party」と銘打たれたイベントは、東京・池袋サンシャインシティの噴水広場で行われていて、一際、目を引く。学校風のデザイン、ネオンの煌びやかな感じ。そしてY2Kと言われるどことなくレトロさを感じるテイスト。
今のトレンドを象徴するものが集結している。でも、そのきっかけは実は韓国にあって、それも興味深い。そもそも、2021年から韓国(ソウル・釜山)で展開されている「Sanrio Lovers Club」というカフェ&ショップに端を発する。逆輸入みたいなものでもある。これだけでも、トレンドで韓国が先行していることを示す。
「Sanrio Lovers Club」は、韓国でのかわいいを意味する「クィヨウン」の価値観を取り込んだ。要するに、国の垣根を乗り越え、「かわいい」で繋がろうというコンセプトである。それを持ち込みながらも、個性を失わないのは、サンリオのキャラクター性があってこそ。だから、トレンドを知る上で、ここには学びが多いのだ。
このイベントは、同店の雰囲気を再現しており、加えて、日本独自に、その雰囲気をモチーフに、様々な要素を、ボリューム満点に盛り込んだ。
そしてやっぱり「かわいい!」その声が会場内に飛び交うわけだ。声の主は先ほど、触れた俳優の矢吹奈子さん。
矢吹奈子さん、ハローキティと巡る
矢吹さん曰く、今回の衣装も韓国から取り寄せた。襟のところにもキラキラのアクセを装飾して、韓国のイメージに近づけたというほど。彼女が日韓合同アイドルグループ「IZ*ONE」のメンバーだったことを差し引いても、今の女の子はむしろ率先して、それを身につけることがわかる。惜しみなく「かわいらしさ」を表現する。それが韓国風である。ここにも、時代の潮流が見て取れる。
この拠点で特に印象的なのは「学校」をモチーフにした内装。これこそが「Sanrio Lovers Club」そのもの。それを忠実に再現したのがこのフロアである。
勉強机と椅子が整列されて、奥にはロッカーもある。机の上にはクロミちゃんなどのアクリルスタンド。アクスタは「推し活」の定番商品。推し活は今、若年層では当然に浸透する、個性を表現する為の象徴的な動き。
ロッカーの飾り付けもご覧の通り、どれも派手。先ほどの衣装の話然りだけど、表現の仕方が直球である。写真の通り、キャラクターごと、色々なデコレーションが施されている。ロッカーの中も玩具箱のような賑々しさがある。それが受け入れられていることは、何より、この楽しそうな二人(?)の表情を見れば分かる。
その内装全てがフォトスポットであり、思い出の一シーンとなり、ここが発信の起点となる。
ゴージャスで華やか
思えば、そのデザイン一つ一つ、表現の振り幅が大きく、ゴージャスで華やか。昨今、キーワードとなっている「Y2K」にも通じると思う。これまた余談だが、韓国の人気歌手「New Jeans」がトレンドリーダーとなり、彼女たちが重んじているのが、リバイバル。
例えば、「Y2K」というのは、2000年代前後のファッション。その一つに、パリス・ヒルトンなど、セレブたちのファッションも含まれていて、それを連想させるのがこちら。
丸い風船が敷き詰められた、ボールプール風のフォトスポットである。一つ一つの演出に、今のトレンドが随所に散りばめられており、見逃せない。そして、やっぱり矢吹さんはここでも自撮りを始めた。
女子が主役のこの手のイベントで欠かせないのが鏡。ボールプールと教室を繋ぐ廊下(?)では、至る所にそれがあった。そこに自分を映し、スマホで写真を撮るのである。自分の前髪の雰囲気、メイク、それを確認する向きもあるが、この内装を見れば、撮影を意図しているのだろうと思う。
周りの光景も可愛いけど、そのかわいらしさに花を添えているのは来場者の女の子たちでもある。
それを更に触発するのが、韓国発のプリクラ機。オリジナルテンプレートでプリントアウトされるが、それを下の写真右の通り、オリジナルのシールなどを貼り付けて、デコレーションする。オリジナリティは女子にとって大事な要素。このデコレーションが気分を最高潮にする。
巻き込むことでその価値が最大化していく
思うに、サンリオのキャラクターも、推し活の対象なのかもしれない。僕はそう思った。というのも、コアなファンとそうでない人を実は、しれっと分けている。このイベントは最初の土日までは、「サンリオ+」というアプリ会員を優先的にして、かつ、無料で入れる。一般の人が入れるのは、その翌週の月曜からで、200円必要となる。
推し活ともなれば、その行動の多くは、仲間と一緒に行動することが少なくない。
参考:閉鎖的から開放的へ。オタク文化が「推し活」へと進化してマーケットを牽引する
だから、イベント主催側も、この場所に止めることなく、他でも消費が生まれるようにしていく。この期間中、対象店舗で二千円以上購入した場合、オリジナルシールをプレゼントする。そんな仕掛けを示すフラッグもあちこちで見られた。そして、施設全体で、それを触発するべく、期間限定のフォトスポットもあるわけだ。
「SANRIO CAFE」もイベントの盛り上げに寄与
当然、そうなれば、常設店の「サンリオカフェ」も黙ってはいない。行ってみたら、ほら、やっぱりこの通り。
イベント開催に合わせて6色に彩られたハローキティを連想させるドーナッツ。クレープも、ハローキティ、マイメロディ、シナモロールなどのプレートがついたオリジナルの仕様で用意されていた。ラテアートでもサンリオキャラクターを描くなどして、世界観にとことん浸れる。
まさに今のブームは、消費者によって作られる部分が多い。
だから、みるべきは、韓国にならったデザインそのものではなく、それが生まれる所以だと思うし、それを補完する為の韓国の店舗と連動なのだと思う。今で言うなら、いかに、共創が生まれやすい土壌を作れるか。色々巻き込むことで、それぞれの価値を尊重し、あらゆる場所の要素を取り込み、新しい価値を生み出す。それが、ファン層を一層、刺激して、行動へと駆り立て、そのファンによって、新しいブームを生み出されるのである。数年前とはまるで違うブームの生まれ方である。
時代ごと、トレンドの発信源は変容していて、その中身を見ていると、今という時代とそこに生きる人の姿が見えてくる。
今日はこの辺で。
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