ネコすら違って見えてくる デザインフェスタギャラリー にゃんこ展 潜入レポ
「こういう場所があったんですね」。思わず僕は デザインフェスタギャラリー という場所へと初めてやってきて、呟いた。多くのデザイナーたちを輩出している祭典「デザインフェスタ」が常設しているギャラリーで、向かう先はそれと併設されているイベントスペースの「 にゃんこ展 」である。
デザインフェスタギャラリー にゃんこ展 へ
ネコネコネコ。至る所、個性豊かなネコだらけ。感心しながら眺める僕に、そっと声をかけてくれたのは、僕にこのイベントを紹介してくれた運営スタッフの新井江里さんだ。
「いやぁ、色々な作品があるものですね。でも、僕はこの場所の存在を明確に知りませんでした」と僕が語るとうなづいて、「デザインフェスタの存在は知っていてもギャラリーは知らない人は多いですね」と笑顔を浮かべた。
一方で彼女はこうも話した。「だからこういうイベントを通して人が集まるきっかけ作りをしています。私の想いとしてはギャラリーと連携させて、この場をもっと色々なアートに出会える場所にしたいのです」と。聞けば、ご本人もプライベートでこっそり趣味も兼ねてコラージュ作品を手掛けたりして、自分を表現する事も模索しているとか。こういう所には作家と気持ちが分かり合える人が揃っているのかもしれない。
確かにそうだよなあと思う。というのも、作家は勿論、表現することは得意であってもそれをどうやって、発信していったらいいのかわからないものだから、あれば助かる。ちょうど、つい先日も、こういうイベントの必要性については、作家と話をしたところである。
テーマにより作家の個性が引き出される
以前、作家である福士悦子さん、鈴木ズコさん、みやかわさとこさんらは、動物雑貨の意義を語っていた。僕が驚いたのは、リスとかパンダといったところまで動物が細分化されて、そういうイベントが催されているということだった。そういうイベントが行われるほど、彼女たちの真価は発揮される。
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だから、動物雑貨で集まるイベントの様子を自分の目で見てみたいと思っていたところだから、この「にゃんこ展」のお誘いは渡りに船だったのだ。
にゃんこだから、テーマはネコである。
ただ実際、思うのは確かに同じ「ネコ」を素材にしていても、作家の表現スタイルが異なるので、それぞれが際立っている。それでいて主催側では敢えて仕切りを設けないようにして、ネコという統一感も損なわず、整然としているのが良い。
これであれば作家のファンは勿論、ここには来るし、ネコが好きな人が来ても、その色々な表情にはどれかしら心惹かれるに違いない。24組の作家が集まったのだから、自分の好みの作品に巡り合える可能性は高い。
素材は同じネコなのに違って見えるのは作家の個性
僕が注目したのは、羊毛フェルトでできたネコでCHA-TAという作家の作品だ。元々、この方は羊毛フェルトの人形を製作することが得意。そのおかげで、ネコのふんわりした感じがその素材での表現にマッチし、その完成度が高い。
しかも、ネコなのにトリ、ネコなのにクマという具合に、着ぐるみを着ているので、尚更可愛らしさが引き立つ。とどめが、唐草模様の風呂敷を被っているタイプ。まさにドロボウネコである。
他にこんな作家もいた。ネコをインテリアに忍ばせる。それを語る上で「ハーバリウム」という言葉をご存知だろうか。ガラスの可愛い小瓶にお花をオイル漬けしたインテリアのことを言っていて、そこにネコのチャームをつけて、そのものの可愛らしさを引き立たせた。作家のmagiariumさんの作品だ。
かと思えば、よくお土産屋などで見られる、樹脂粘土やレジンを使用したストラップやキーホルダー、ミニ置物で、ネコを作って見せたのがみけねこさん。小さくとも精密に書き込まれた表情がどれも豊かである。
更に、もふもふのボディの『Sapphy(サフィー)』という名のオリジナルのネコを出品したわたゆきもふさん。真っ白のフサフサした身体で、サファイアのような瞳ががキュートである。
そっと背中を後押しするデザインフェスタ
そして、少しだけ作家に声がけさせてもらってハッとしたことがある。絵は立派なのに、初対面で少し人見知りな素振りを見せる方も少なくなくて、改めて、こういうイベントをデザインフェスタの運営側がやる意義があると思った。要は、そうやって積極的に動ける作家ばかりではないから。
初心者だったり、引っ込み思案な人がいても、デザインフェスタのような祭典のお膝元で、こういうイベントが行われるというなら、安心だろう。そこで併設されているギャラリーに出す事も然りだ。デザインフェスタのようなプラットフォームがあれば、そんな風にして、作家を温かく後押しして、より多くの作品に来場者がそこで感じて、多くの才能が人目に触れる。
僕にとっては、初のデザインフェスタギャラリーではあったけど、その存在意義は確認できた。ネットで上手に羽ばたく作家もいるけど、作家の可能性は色々存在する。そんな人にとっての受け皿として、これからも多くのアーティストがここから巣立つことを僕は切に祈る。
今日はこの辺で。