ラーメンは“エンタメ” だ!ECと食の共鳴が生み出す新たな価値~「楽天グルメ館」ラーメンフェスタ潜入ルポ
こうやって商品の裾野を広げ、リアルとネットの垣根を越えて、サービスを提供していくのだな。それを痛感した。僕は楽天グループの誘いを受けて「ラーメンフェスタ」にやってきていた。一見すると、ネット通販を専門とする楽天と、リアルイベントである「ラーメンフェスタ」に関連はなさそうに思える。だが、実はそうではない。単純に商品をイベントで提供するだけではない意味を、「楽天グルメ館」担当の大田萌子さんから聞いて、納得したのである。
・出店から冷凍食品化へのカバー率向上
どういうことか。
まず、その前に「ラーメンフェスタ」について、触れておこう。日本最大級の野外ラーメンイベントであり、駒沢オリンピック公園で12日間、開催され、36種類のラーメンを楽しめる。
ラーメンフリークにはお馴染みなイベントであり、そこに、「楽天グルメ館」もブース出店しているのだ。
一方で、「楽天グルメ館」は、楽天サービス内で食品の直販を手がける部隊。彼らにとっては、ラーメン以外も扱うが、このイベントに3年連続出ていることもあって、ラーメンには思い入れが深い。さて、では、なぜ、彼らがこのイベントに出店するのか。
その目的は、単なる売上向上にとどまらない。
まず、昨今、冷凍食品の技術が向上している。ゆえに、彼らは、出店するラーメン店に対して提案を行なっているのだ。つまり、ラーメン店のラーメンを冷凍食品化し、楽天グルメ館で販売する「通販化」を進めること。それが長期的な成長戦略として位置づけられている。
ラーメンフェスタは「楽天グルメ館」が持続的な成長を目指し、出展店舗と協力関係を築く場なのである。単なるイベント出展の枠を超えて、店舗と共に新しい市場を作り上げる意義を持っている。
それを考える上で、彼らは売上とは別に『カバー率』をKPIに掲げている。カバー率?携帯電話?違う違う。
・ラーメンフェスタ出展の意義とグルメ館の成長戦略
ラーメンフェスタに出店しているところのラーメンを「楽天グルメ館」はどれだけ通販でカバーできているか。それでいうと、初年度は約20%にとどまっていたカバー率は昨年には40%。そして、今年は80%にまで増加した。
「え?8割まで増えているの?」萌子さんに僕は、驚きながら聞いてみた。この成長の背景には、イベント主催者「ラーメンデータバンク」との協力があるようだ。
つまり、ラーメンデータバンクと共に、出展店舗に冷凍食品化のメリットを伝えつつ販路拡大への協力を呼びかけてきた。でも、そうすることが、ラーメン店にとっても利点があるのである。
ラーメン店に行ったことがある方ならわかるだろう。
店舗での提供は席やスペース、来客の時間に依存し、一日に提供できる数には限界がある。しかし、冷凍食品の通販では、在庫さえあれば、スペースや時間に縛られることなく売上を増やせる。
また、それらの商品は楽天側が一括で倉庫で預かる。だから、お客様の受注と共に、素早く出荷されるから、ラーメン店としては手間をかけることなく、売上を向上させることができる。
・食べると同時にエンタメなのだ
この話を聞いて、ハッとした。そうか。逆に、リアルのラーメン店はデモンストレーションの場になっていくのかも知れない。実際にその場で作られ、店員とのやりとりがエンタメ要素となる。そして、それが気に入れば通販で購入し続けることで、ラーメン店は健全な経営ができるようになる。
そう考えると「ラーメンフェスタ」もまた、そういうエンタメの場なのだと気付かされる。実は、このイベントの真骨頂は、そうした“楽しむ”一面にフォーカスしたところにあるのかもしれない。
僕もついつい「最高級仙台牛のすき焼き仕立て」を食べてしまった。「その肉の柔らかさとジューシーさの中に、香り高い極細麺が調和した、、、」といった、食レポをしたくなる。何より「僕、宮城で育ったんですよ」といった会話をして、その場を楽しむわけだ。
食べた後には『Bety』というアイドルの方々が、ステージ上で歌と踊りで来場者と盛り上がる光景に遭遇した。「リーダーの百川晴香です。昔懐かしの山形中華蕎麦を食べました」とか、「宮内桃子です。『熟成』久留米ラーメン、食べたら美味しさがとまらなくて、お腹パンパン!」などと、さりげなく合間にラーメンをアピールするあたりが実にニクい。
余談が過ぎた。ラーメンをエンタメ化して、そこを起点に、楽しみが色々波及していくわけだ。当然、その味を実感して、家でも食べたいっ!となる。だから「楽天グルメ館」の『カバー率』は意味を成す。
・データ活用とリピーター戦略
楽天もまた、その波及効果を自らのビジネスに繋げている。
それらによって購入されたデータは、通販にはないものだから、有益である。だから、ラーメンフェスタで100円引きクーポンを発行。それには楽天IDでのログインが必要である。
ログインすることで、イベントでの購買情報が顧客の属性情報と紐づく。誰がリピートしているかもそこからわかるというわけだ。実際、イベントでの購入者は、ネットと比べて、20代〜30代の割合の多さに気づく。それはまさに、エンタメとして、楽しみに来ているからだ。
それに対して、ECサイトでは40代〜50代の利用者層が多い。確かにラーメン一つが、1100円というのは、スーパーに並ぶものと比べて高いけど、そこで、楽天もご褒美食品と位置付け、それを提案していく。それが新たなマーケットとなるわけだ。
ちなみに、クーポンを使えば、100円引きだが、5つ購入すれば、どんぶりがもらえる。「3つくらい手に取ると、どんぶり欲しさで、5つ購入するお客様もいます」。商売上手だな。そりゃ、売り切れも起きるわけだ。
ともかく、このイベントの来場を機に、20代〜30代が「楽天グルメ館」の存在を知ることになれば、楽天の裾野を広げることにもなる。多種多様な展開がお客様の理解に繋がり、経済圏にとってのプラスにもなる。
・地域エンパワーメントへの役割と使命
最初こそ、商品ラインナップを増やすことに奔走していた彼ら。ただ、徐々にその立場の違いを実感している。同イベントのラーメンの8割を通販で販売しているわけだから、責任を痛感している。もっぱら最近は「楽天グルメ館」の役割は何かを問い始めたとか。結果、たどり着いたのは、楽天らしく、地域の魅力を全国へ届ける「地域エンパワーメント」を目指そうということ。
日本各地の魅力的なラーメン店の商品化を進め、「ラーメンフェスタ」のようなイベントで地域の特色を味わってもらうと同時に、ECを通じて全国にその味を届けようというわけだ。そして、リアルを有効活用して、通販の裾野を広げ、リアルとネットの垣根を越えて、商品価値を伝える機会を作り出していこう。そうやって確かな足取りで前へ進んでいる。
もはやブース出店をして商品を売り込むだけではない。着実に、主催者側と連携して、商品の裾野を広げ、また、リアルとネットの垣根を越えて、サービスを提供していく姿勢に、学びを得た。また、主催者側も、そこで継続的な購入が行われれば、ラーメンフェスタのエンタメとしての価値を求めて、また、来年、来てもらえるというわけなのだ。
そう思うとラーメンのポテンシャルは底知れない。関わる人たちのポジティブな姿勢に、さらに色々な波及をして、僕らを楽しませてくれるに違いない。今後の期待感を持って、ラーメン汁の最後の一滴まで飲み切った。
今日はこの辺で。