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ネット通販がテレビ番組の使い道を変えた テレビ東京 虎ノ門市場、農家の新しい扉を開く

 テレビ番組の使い道を、ネット通販が変えた。make shop dayで、テレビ東京 マーケティングセンター部長の 吉澤 有さんの話を聞き、痛感した。彼らなりの視点で掴んだ通販での躍進で、気づいた大切なこと。それは「独自力」。「差別化」と似ているようで異なる。多くの企業は差別化できているが、唯一無二の独自性を出せているとは限らない。その言葉の意図するところに、通販の現状を見た。紐解いてみることにしよう。

通販はテレビの強みを持ってしても甘くはなかった

1.ビジネスを学ぶところから

 そもそも吉澤さんは遡ること、2007年からテレビ局にいながら、通販に関わってきた。特徴としてはテレビの表現力を活かして、生産者の生の声を伝えて、そこからネット通販「虎ノ門市場(2007年)」などに繋げていくというわけである。さぞかしテレビの力で順風満帆かと思いきや、そうではなかった。

 最初の頃はクレームの嵐。吉澤さんは反省を込めて、食品通販を軽んじていたと語る。そこに加えて、利益に対しての考え方。売れればいいのではない。利益面を考慮するほど、送料の重要さを痛感するわけで、特に食品は冷凍に関係するものが多かった。だから、思う通りに行かなくて、そこへの理解が徹底できるまで、3年ほどかかったという。

2.ドキュメントの意味合いに立ち位置を見た

 彼らにとっての転機は東日本大震災。どこから商品が送り届けられているのかという部分への関心が深まったからで、その分、自ら手がけるドキュメントの意味が見えてきたのだという。日頃、テレビ番組でやるように、その生産者の元へと向かい、カメラを何日も回したままで、きちんと魅力を見出し、番組で訴求する。伝えるという部分では、通販も通常の番組も同じ力量でやらないと、通用しないことを痛感したわけである。

 さて、そういうことを繰り返す中で彼らが気づきを得たのは、ありきたりではあるけど、ブランディングの重要性である。彼らがいうブランディングとは、シンプルに2つ。一つは安売りしない。もう一つは価値を伝えるということだ。シンプルなようでいて奥が深いのは、物の価値は物を伝えることではないということだ。つまり、物の裏側にある要素をセットにしない限り、価格で比較されてしまうからである。

独自力の原点

1.産地が異なるのに同じ価格で売るのが常識な世の中

 ごくごく、当然なことを言っているように見えて、奥が深い。それを説明する過程で、彼らが自分たちの立ち位置を説明するものとして、こんな例を挙げた。スーパーマーケットの売り場である。思い浮かべて欲しい。産地の異なる野菜や果物を、全く同じ価格で売っていないだろうか。

 それはそれで一つのあり方としては正しい。その一方でそうならない工夫を凝らすことが大事なのではないかと説き、それこそが通販の可能性だと語る。そこで、彼らは光明を見出すわけで、自分たちの番組力と結びつけるようと考えたわけだ。だから彼らはブランディングの重要さに言及して、その可能性を番組に向かって、問うたわけである。

 ここが冒頭、僕が触れたことにつながる。 テレビ番組の使い道を、ネット通販が変えたと。つまり、通販とセットで番組作りを考えていくことで、これまでとは違った番組のあり方を見出したというわけだ。だから、テレビ番組を作ればいいというわけでもない。通販側にも工夫が必要だから、そこにもアイデアを注いで、結果、テレビ局の価値を高めたわけである。

2.従来ならマスに向かって発信することがメイン

 つまり、真逆なのである。マスへ向かって発信するために、テレビ番組を活用するのではない。コアなユーザーに対して作り上げるのである。そして、番組は付加価値のあることを伝え為にあり、それは通販で成果に繋げることで、テレビの新たな可能性を模索したのである。

 そこで辿り着いた考え方が、「独自力」というわけなのだ。「差別化」できている店舗は相当数、増えてきた。しかし、差別化した店舗が増えすぎて、差別化することだけでは限界がある。なるほど。それこそが、彼らの考えなのである。

 例えば、米を取り上げるとしよう。しかし、どこの産地も皆、一様に美味しいのである。例えば、「越前かに」などのようにエッジが立っていれば良い。だが、中小の生産者の場合、名が知れていない生産者の場合どうだろう。ここに魅力的な生産者が細々と、異なる付加価値を持ったものが混在している。

3.限られたお客様に響くアプローチ

 だから、逆に限られたお客様にどう訴求するかが、自分たちの役目となる。そうだと気づいた時に、通販として道が切り開かれた。もはや番組だけではなく、売り方も一体で考えて、どんな体験をもたらせるのかと。

 カメラを回し続け、考えを聞くと、ストーリーも浮かんで売り方も見えてくる。番組の内容はもちろんだが、「それではどんな形で売ろうか」と。彼らは「みかんをみかんで売らない方法」というベクトルでアイデア会議を重ねる。その農家が農家である価値は何だろうと考えた先に、「完熟みかんオーナー制度」にたどり着く。

 オーナー制度?通販では、聞き慣れない言葉だ。

 彼らが「和歌山のみかん」でやりとりする中で、農家の課題も見えてきた。考え方として「農協に卸して、それで終わり」というところも少なくない。あくまでも売り先をアテンドしてくれるところに渡す仕組みだから、どこまで行っても「みかん」である。特段、自分たちである必要性がない。だから、そこに未来像が描けず、後継が生まれないから、この事業から撤退するということもある。

デジタルの利点が農家の経営を安定化させる

1.独自の価値へと変えていく工夫

 農協が悪いと言っているのではない。他のやり方も追求することで、農家に道筋を照らすべきだという話なのだ。いわゆる6次産業化を推進して、生産に始まり、加工、販売など幅を広げている業者も少なくない。ただ、先ほどの生産者の話と共通して、その事業自体の独自色が打ち出せていない。

 だから、通販の仕組みを持ち込んで、「オーナー制度」という違った切り口で商品提案をした。

 つまり、「権利証」をまだみかんができていない夏に発行して販売する。その上で、みかんが収穫される11月頃に出荷をしていく。オーナーなので、現地のみかんにはその権利を持つ人の名前のプレートを入れる。そして生産された暁には、5kgのみかん箱を6箱分30kgという具合にボリューム満点で届ける。

 つまり、オーナーとなることで、その育成を農家に依頼。自らがその収穫された物を送り届けてもらうスタイルである。その農家がいかなる物語を持っているのかは、通販に絡むリソースで伝える。だから、生産者の顔が見えてきて、それで判断をするわけだ。さらにオーナーとなれば、常にそのみかんの状態が気になるだろうから、出荷までに成長記録をお便りにして、計5回、送り続ける。また、オーナー名入りのお歳暮も請け負う。一心同体で、農家の気持ちも、想いもひしひしと伝わってくるわけである。

2.農家のビジネス的にもプラスに作用

 成長の実感と収穫の喜びを分かち合う関係性に対価が支払われる。だから、単純に商品が差別化されただけではなく、それが売り方までに直結している。だから、独自力を持って、より単価を高くできて、農家の疲弊を軽減していくわけである。

 たとえ、まとまった数量でも「さて、誰にあげようか。」となれば、お客様自身が想いを巡らせる楽しみが生まれる。また、お客様も比較的、高い単価も多い数量にも理解を示すだろう。日常が豊かになる事には、対価を支払う。これを裏付けるのが、彼らの制作力ということになって、強さの秘訣になる。

 そして、忘れてはならないのは彼らの事業を助ける。通常、収穫される時期に一極集中する売上が分散して、経営の安定基盤を作れる。さらに、購入単価の向上が生まれているから、独自色を生かして、これからの成長絵図を描けるわけだ。ゆえに、撤退する農家の数も減少。この取り組みに賛同する農家の数も増えているというわけだから、「独自力」のもたらす力を思う。

 おそらく、これはテレビ番組だけの力でやっていたら、こうはならないだろう。彼らがテレビ番組収録にあたって身につけた取材力を通販に活かしてこそ、この着想ができたというわけである。

 別に、農協を否定するわけではありません。ただ、通り一遍の売り方から脱却して、事業を閉ざすことなく、各々の農家の価値を見出して、撤退を減らす。それが進んでいるとすれば、このテレビ局の新しいチャレンジは、マスに対して売るのとは違った形で価値をもたらしていると言えるだろう。使い道を変えたテレビ番組は地方を救ったのである。

 今日はこの辺で。

 

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