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「さくらももこ展」花咲く才能 彩る感受性 ユーモアと温かさに囲まれて

 その“感受性の豊かさ”たるや、並大抵のものではない。僕は、森アーツセンターギャラリーにやってきた。「さくらももこ展」に足を運んで、その“感受性の豊かさ”に驚いた。僕らが無意識に過ごし、素通りしてしまうようなことすらも拾い上げる。それこそがさくらももこさんの真骨頂。彼女の手にかかれば、何気ない日常はこんなにも痛快で、楽しく、嬉しく、悲しく、ありがたいと感謝の念を想うものなのか。そう思えてしまう。

その起源は文章にあった!?

 ああ、ちびまる子ちゃんの作者ね。実はその程度の知識だった。

 だけど、僕は、彼女の起源をここで知って、一つ一つが発見であり、なおかつ、力をもらえた。取材後、図録を購入したくらいである。

 当然だが、絵を描くことが好きで漫画家になる人は多い。

 でも、そもそも、彼女を漫画へと駆り立てたのは、文章を書く才能があったから。まず、そこに衝撃を受けたのだ。文章を書くことが苦ではない彼女が、日々、色々感じて書きつらねていたその文章。

 秀でた才能を発揮したのは、高校3年生の時。

 書いた作文が「現代の清少納言」と称されることになった。それが、エッセイ漫画を書こうと着想へとつながる。漫画は漫画なんだけど、エッセイが起点か。家族には半ば、やめろと言われていたが、彼女はそれをやり切った。それでこれだけ世の中を明るくした“偉業”をもたらしたのだから、人生はわからない。

 そして、当たり前だが「作品は中身あってのことだな」と思った。たとえ漫画であっても、その中身こそが、人を惹きつけるのだ。そう痛感させられた。

 だから、“感受性”の豊かさが彼女の胸の内を彩り、それが絵や言葉となって人を幸せにしてきた。

感受性の豊かさと表現力

 まず「ももこのほのぼの劇場」という最初の作品でグッと心を掴まれた

 そこには、ご本人の子供の頃のことが、描かれている。でも、十分そこに大人気作家へと至る片鱗が見える。「放課後の学級会」というタイトルの漫画では、大好きな先生を描いて、こう表現している。

「今まで弱虫だった子が、先生といると元気になる。元気な子はもっと元気になる。」

 その言葉と絵が、心に染み入る。先生の素敵さをとても綺麗に表現できる感受性の豊かさ。それだけで、その後、「ちびまる子ちゃん」で開花してヒットを掴んでいく予兆を感じさせる。

 そう。最初の「序章 ももこのデビュー」で心を鷲掴みされた。

純粋さの中にあるユーモア

 どんどん興味が惹かれる。改めて、さくらももこさんは、子供ならではの純粋で素朴なフィルターを通すことで、愛らしい世界を表現している。魅力的な友達のキャラクターを素材にして、ニヤリとするエピソードに仕立て上げる構成力はあっぱれ。

 そして、「ちびまる子ちゃん」のデビューである。彼女は第一話のエピソードで、夏休み前のことをこんな風に取り上げている。

 周りの皆は一学期の荷物を“こわけに”して持ち帰っている。それができているから、最終日も悠々と帰れている。それを横目に、まるこは荷物まみれ(笑)。計画性のなさを悔やむ。最終日で持ちきれないほど、荷物を抱えざるを得ない状況で悲壮感を漂わせ帰っていく。すると、姉もまた同じであった。こう言葉が添えられているのである。

 「血はあらそえないもんである。姉・小学六年生」。

 のっけから、吹き出してしまう。誰しも想像ができる内容で共感を集めて、一気に物語へと引き込み、そのストーリーの続きを追っていくうちに、もう虜である。

 大人が見たら訝しく思えることも、子供だからこそ純粋に、好奇心旺盛に飛び込んでいく。だから、子供は同じ目線で楽しく読み進めていけて、大人はそこに懐かしさを感じるわけである。

 「第一章 ももことちびまる子ちゃん」はさくらももこさんらしさの開花が印象的。笑うだけではなく、若干、眼を潤ませながら、心地よく、僕は、彼女の“沼”へとズブズブと足を踏み入れる。

「ちびまる子ちゃん」のヒットは必然だった

 素通りしてしまうような物事。それも「さくらももこ」の解釈をいれれば、漫画のようなコミカルな世界に見えてくる。誰しも経験するであろう「腹痛」。それすらも学校で起こった時に、あの絵柄で「今日最大のビッグウェーブ」といって、多くは語らずとも“差し迫る感じ”で笑いを誘う。

 学校では個性豊かな友達、家に帰れば、アットホームな昭和のあたたかな家庭の姿。それらが縦横無尽、広がっていて、誰しもがほっこりするわけである。

 正直、僕の場合は「ちびまる子ちゃん」という流行りに乗っていたに過ぎないのだと思った。

 子供の頃、巷であれよあれよと人気が出ていた「ちびまる子ちゃん」。周りが騒ぐのに呼応して、慌てて日曜の夜にテレビの前で座って、アニメをただ笑ってみていたに過ぎない。

 だから、改めて「さくらももこ展」に来てみて、気付かされるのである。「ちびまる子ちゃん」が国民的漫画にしてアニメとなったのは、このような流れを踏まえると、必然だったのだと。

 そして、アニメの台本に相当する原稿用紙も拝見したが、指示は細部にまで及ぶ、こだわりの塊であった。

 “今回の巻は、基本的に内的心理状態がうまく出ている「年賀状を書く」の巻のアニメを参考にしてください。じいさんの心理状態がアップになってハイのときとダウンになってバットのときのときのおおげさぶりやパニックぶりがうまく出たら成功です”

 それだけ明確なイメージが頭にあることの裏返しである。

創作的活動の羽を広げる

 その後の活躍は、言わずもがな。

 時代をつかんださくらももこさんの感性。それが、どうやって広がりを見せていくのか。それを解き明かしていくのが「第二章 ももこのエッセイ」で、俄然、僕は興味津々である。活字になっても際立つ彼女のユーモアであたたかな胸の内は、やっぱり多くの人の心を掴んでいくことになるのだ。

 たかが「歯医者にいくこと」すらも、一大イベントのように描かれる。

“うがいをしていたら奥歯の詰め物がコロリととれた。私は驚き、「おお20年も前に詰められた物がこうして役目を終えて遂に出てきたか。よしよし、よくがんばった」などとひと通り詰め物に感謝した後、次第に痛みを覚えてきた”。

 日常に色をつけていくのが上手である。結果、彼女の根本にある感受性の豊かさは、エッセイリストとしても発掘されることになり、活動の幅を広げていくのである。

 そして、徐々に「ちびまる子ちゃん」とは違った、大人になった「さくらももこ」のフィルターを通して見える世界を皆が楽しむようになるのである。ノストラダムスの大予言に対しての彼女の考え方がまとめられた文章など、秀逸である。

 出産は切腹だと言い、ノストラダムスの大予言に対して、「私はもう絶望だと思い、、、、」。噂も軽く受け流さず、自分の言葉で表現しようとするストイックさも垣間見られる。

 「第三章 ももこのまいにち」ではその点が描かれていて、人となりが見えてくる。

大人になったももこが描いた独自の世界観

 独自の地位を築いた「さくらももこ」さん。漫画においてもそこを起点に「ちびまる子ちゃん」にとらわれず、独特なアプトプットを続けていく。

 「神のちから」など、新たな作品で境地に至った。漫画など、あらゆる手段、媒体を通して、自らの頭の中をあらわしていく。それが「第四章 ももこのナンセンス・ワールド」での内容であり、ある意味、彼女の中で“進化”を遂げたといえよう。

 そして、コジコジの登場となり、「第五章 ももことコジコジ」へと至る。

 それは、大人へと成長したさくらももこさんが、「ちびまる子ちゃん」とは違う形で描きたかった世界の集大成だったのかもしれない。ゆるい世界観で、彼女の理想的な世界。今まで日常を書いてきた彼女にとって、チャレンジであったはずで、こう書かれている。

“コジコジは宇宙の子です。男でも女でもありません。とってもふしぎな生物です。コジコジは何も悩みがありません。ただ気ままに生きています。だからコジコジは新鮮で楽しい毎日をおくっているのです。”

 どれも圧巻だ。カフェでメニューを見ながら想う。

 デジタルが叫ばれる世の中。だけど人間の奥底にあるハートには無限大の可能性が潜んでいる。それを尊重してこそ才能が開花していく礎がある。

 この「さくらももこ展」では、さくらももこさんの生涯を通して、それを学ぶことができた。彼女の感受性は時代を超えて、今も温もりを感じて、人々を虜にし続けている。

 今日はこの辺で。

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