LINEという顧客接点から派生するビジネスの可能性「Hello Friends! W!th LINEヤフー」
確実にお客様との接点は、デジタルにより日常交わせるものへ。距離感として近づく顧客との関係性。そして、お客様のデジタル環境が整うことで、事業者におけるDXの壁が低くなっている。先日、LINEヤフーが開催した「Hello Friends! W!th LINEヤフー」で、そんなことを痛感した。デジタルを通じて、心地の良い体験ができるのだ。LINEヤフーが強調していたのは、それがLINEだからこそできる。その部分である。
顧客接点からDXと関係作り
今回のイベントで全面に打ち出されていたのは、「LINEミニアプリ」である。要するに、LINEの企業アカウントに実装できるアプリ。それは単純に、コミュニケーションを起点とするものでありつつ、ただそれを補完するだけではないのが面白い。
DXも推進しているのだ。ティンパンアレイという企業が運営するリユース系のお店「RAGTAG(ラグタグ)」の話がまさにそれである。そのリユースという商品特性によって煩雑になりがちなリアル店での課題。それがあってその部分がLINEのミニアプリによって解決されているのである。
大前提として、リユースなので、お客様が2種、存在する。
要するに、「買取をして欲しい」というお客様。そして、購入したいというお客様である。
事業として上手くできている。デザイナーズブランドを好きだという人を起点にビジネスが生まれているのである。だから、買取をして欲しいと思っているお客様は、デザイナーズブランドを新作が出るたびに、購入したい。だから、買い取ってもらいに彼らの店に来る。
その一方、購入するお客様は、新作を購入することはできない。けれど、好きだから、リユースでお得に手に入れたいと思うわけだ。ただ、だからこそ、リアル点が両社が混在し、業務が難しくなる。
そこでで、彼らが着目したのは「買取を求めるお客様」の方。
上記の通り、それらのお客様は、買取にかかる工数で手間がかかる。店舗に買取してもらってから、買取が成立するまで、これだけあるのだから。特に電話の部分がイレギュラーが生まれやすく、ミスも出やすい。
スタッフとお客様両方の工数を削減し関係を深める
ここでLINEミニアプリが出てきて、それが、「yoboca」というミニアプリ。
まずはLINE公式アカウントに登録してもらい、買取受付時にQRコードを読み込んでもらう。すると、その買取のお客様ごとに、番号が出てくるわけだ。
だからその買取番号を軸に、LINE公式アカウントを通じてトーク内で受付完了するわけである。一旦、LINEで繋がっているから「審査査定の完了」などの通知も、そのトークを通じて行われる。わざわざ、電話番号を記入してもらい、店舗から電話をかけて、折り返し対応するなど、必要ない。お客様も、LINEの通知で履歴が残って、それに基づき行動するから、お客様側も負担が軽減する。
思うに、お客様がLINEを持ち、一方で企業もアカウントを持っている。だから、スマホがそれらを効率化させてくれるデバイス代わりになって、その役目を果たすわけである。
加えてそれらのお客様が、共通して、また商品で買取を求める傾向にある。これも、友達登録しているから、直ぐに、この店の利用に直結する。やりやすさと相まって、継続に繋がる要素を秘めているのだ。利便性と引き換えに、顧客情報を得ているけど、それで、そこに絡む複雑な処理を軽減しているから、お客様も納得。
お客様も利便性の向上の部分でお友達の登録をしようと考える。だから、友達追加数は、増加の一途を辿る。おのずとアプローチが増える分だけ、利用が増えるということになるわけだ。
バラバラで深い関係性が最大化できない
LINEミニアプリは、化粧品専門店でも、違った形で活かされる。星の国商事では、独自に、お客様ごとに、悩みやそのコンディションにあわせた使い方の提案をしている。下記の通りである。
だからこそ、会員情報の統合が大事。なのに会員証(ポイントカード)、購入履歴(POSレジ)、顧客カルテがバラバラに存在していた。そこで「エドワード」というLINEミニアプリを活用する。
流れとしてはこうだ。カウンセリングの際に、QRコードを読み取る。すると、LINE公式アカウントが立ち上がるので、そのリッチメニューから入力すれば、会員証が発行できる。そのような仕様で、購入者における会員比率の割合が、30%から60%まで増えた店舗もある。
より深まる顧客との関係性
その距離感は自ずとプラスに働き、客単価は123%となる。つまり、統合されたことによる真価が発揮されたのである。
そうした傾向はメッセージ配信で特に顕著な動きを示す。前月購入したお客様にクーポンを発行したところ、利用率が100%を記録した。全体配信においても通常の情報でクリック率は21.7%。明らかに、信頼関係ができ、お客様のファンの度合いが増している。
そして、それがLINEを通して成長する。元々、彼らは購入頻度により会員のランクづけをしている。だから、そこでランクアップの提案をするわけである。それが再来店のきっかけを生み、ランクアップへとつながる。コミュニケーションを起点にして、ビジネスが派生していく可能性が、LINEによって示されているのが面白い。
これらのコミュニケーション性の高い要素と、ECの可能性。そこにミニアプリの利用という三つを掛け合わせた文脈で見てみよう。その意味で、参考になると思ったのが、ELCジャパンの施策である。
間違いなくわかることがある。それは、「売る」という行為につなげるための顧客獲得ではない。顧客接点作りから関係構築へ繋げて、それを深めることで、購買意欲を高めている。彼らの場合はLINEであり、LINEに限らず、今の時代は、そういう関係性が築きやすいデジタル環境になった。そういう時代背景が大きいのではないかと思う。
LINEをお客様との交流の中心に据えたELCジャパン
ELCジャパンは、エスティ ローダー を筆頭に数多くのブランドを抱えている。下記の通り、殆どLINE公式アカウントを持っている。それを推進している理由は、日常での接点を作るためなのである。これは日本に限った話ではない。
例えば、韓国ではカカオトーク、中国ではWeChatという具合。国ごとにベストな顧客との関係を築くインフラを変えていて、日本ではそれがLINEなのだという。
特に、それと合わせて注力しているのはID連携。でも徐々に友達登録からその距離感を縮めていくのが見事。例えば、百貨店のお店においては販促物、お客様との接客で、また、オンラインサイトではその購入の際、LINE公式アカウントへの友達となってもらうことから始める。それはなぜかと言えば、その後、ID連携を促すことが念頭にあるからだ。
具体的には、その後の挨拶のトークなどがキーになる。そこでいかに明確なベネフィットを提示できるかが、ID連携を考える上で大事なこと。お客様の体験価値を上げていく予感させる入り口であることが大事だ。
具体的には、クーポン発行もそうだが、サンプルの用意なども行う。また、企画として、LINEでスタンプラリーを実施。その購入時にID連携すれば、通常もらえるスタンプが、もう1スタンプを余分に支給される。それらのスタンプは4つ貯めると、プレゼントがある。そんな風にして、自然に興味を惹くわけである。
お友達関係がLINEで形成され購買行動を触発
いわば、それは、LINEを通じた“お友達関係”をお客様に根付かせるためなのである。
改めて思うのは、その一つ一つのLINEの施策は、お客様へのアピールではない。イベントへの送客として使ってみたり、リアルイベントでもLINEを提示するなど、日常、活用する。お客様とブランドを繋ぐ通行手形のようであり、郵便ポストのようだ。
だからこそ、彼らは検証する。一つ一つのアプローチは、満足度を高めるお客様のアクションに繋がっているのか。実際、その反応を見ることで、お客様を知る。この部分が一番大事だと説く。結果を通して、次のアクションに繋げ、仮説と検証を繰り返す。そのうち、LINEを通して、良質な関係性が築かれることになる。
明らかに、顧客接点がより体温の感じられるものへと変わりつつあることがわかる。これらの接点は売り込むためのものではないのである。そして、その発展形としてECサイトがある。
トムフォードビューティというブランドで、LINEミニアプリを使い、「LINE内で」ECサイトを構築したのである。
普段、お客様とLINEを通じて関係を深めている。だから、逆にその流れでもECサイトを作り上げ、そこでもお客様のニーズを取りこぼさないようにしていくというわけである。自社ECやその他モールを蔑ろにするのではなく、あらゆるところにタッチポイントを作るだけのことである。
デジタルに多くの人に人間味あふれる関係構築が可能な時代に
改めて、お分かりいただけただろうか。
確実にお客様との接点は、デジタルにより日常交わせるものとなっている。デジタルだからこそ、距離感として近づいているのである。そして、お客様のデジタル環境が整うことで、事業者側はDXの壁が低くなっていて、そのそれぞれの企業の顧客体験を深掘りし、利便性を高めている。だから、近い距離感は深まることとなり、その顧客の一部となって、購買行動へと繋げていく。
売り上げが安定してくるというわけである。
それこそが、従来のネットにおけるアプローチとの大きな違い。双方向に機能する顧客体験による価値なのである。LINEヤフーとしての新たなカラーはそこにあるのかもしれない。
従来のメールのように、アピールするのにとどまっていない。LINEを通して、顧客体験を深める実例が揃ってきている中で、LINEミニアプリは、それをどう、各々の企業で味方につけて、自らの顧客体験の価値向上に繋げられるか。今までとは全く違う世界観だと思った。最終的には、それらはECサイトによって力を示すことになるから、これからはそれらを一体で考え企業価値を上げていく時代なのだと思った。
それが、今回の「Hello Friends! W!th LINEヤフー」の真骨頂といえるだろう。デジタルを通じて、より、心地の良い体験ができるようになっていく。
今日はこの辺で。