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自分の“ソフビ人形 ”が他とは違うと言える理由 ハリケンが語る 2025年のクリエイター論

 クリエイターのやることって答えがありそうでない。ずっとソフビ人形を作り続けて、自分の手がけたキャラクターを表現し続けてきたハリケンこと、針生謙一さんと話をした。彼はなぜソフビ人形で自らの描きたいキャラを表現したのか。また、表現するようになって、答えなき中、何を礎に、それを進化させてきたのか。ソフビ人形を通して、彼の人間性も垣間見られる。過去を振り返りつつ、クリエイターの未来を考える。2025年のクリエイター論。始まり、始まり。

ソフビ人形に至るまで

1.キャラクターを表現する手段だった

 彼はキャラクターデザイナーだから、ずっとキャラクターを描き続けている。ただ、その特徴としては、自らがメーカーとなっている点が挙げられる。キャラクターというと、多くはライセンスでの運用を思い浮かべがち。自らは絵を描き、それを版権窓口のような企業に任せて、メーカーに商品化を委ねるわけである。

 実際、ハリケンさんも最初の頃こそ、それもやっていたけど、2007年頃から、自ら商品を手掛けるようになった。そこで一番、力を入れていたのが、立体の造形物ソフビ人形である。

 元々彼自身、幼い頃からおもちゃに魅了されてきたという背景もある。自分が手がけてきたキャラクターをいかに世の中に伝え、広めていくか。そこで辿り着いたのは、ソフビ人形を通して、それを伝えようという考えであった。言うなれば、彼にとってソフビ人形は自らのキャラを伝える“メディア”だったというわけである。

2.クリエイティブに答えはない

 そのソフビ人形を手がけることすら、工場と掛け合って、多くのことを委ねていた。でも、やり続けるとそれも徐々に変わってくる。「最初はものづくりという作業が、想像だった。けれど、やるうちにそれが現実へと変わった」。そんな言い方をして、自分の中でソフビが会得できた実感を得たことを述べた。2017年の頃には、ソフビ人形に関しては、金型についてや職人との向き合い方など、そこまでの理解が進んでいたのだ。

 もはや彼は作家でありつつ、メーカーである。つまり、下請けでものづくりを作るのではなく、自分の中のイメージがあってソフビができているということになる。だから、自ら発案して、作り続けなければいけないわけで、僕は聞いたのだ。「クリエイティブなものって答えがないですよね?自信無くしてそれはできない。作るものへの自信はどこから生まれるのか」と。それを聞くことで、未来を見据える上でも大事なことのような気がしたからだ。

 「そりゃ最初は無根拠な自信ですよ」。ハリケンさんは笑う。

3.無根拠な自信から確固たる自信へ

 その無根拠な自信を持っていた時の自分は“とがっていた”と振り返る。確かに「こうあるべきだ」というような彼自身の主張が、その自信を形成していたのだ。最初はそれでいいのだと思う。一歩、踏み出すことで気づくことはきっとある。ただ「そこで現実を目の当たりにして、心が折れるんです」と。

 でも、不思議とそこで人の優しさに触れたり、お客様の熱量を感じて、それに救われたりした。「このイベントに来れば、ここの何人か(いや一人でも)、喜んでくれる人はいるんだ」。だから、それを支えに頑張れるようになった。つまり、お客さま(ファン)が見えていなかったのが、見えて表現するようになったというわけである。

 「それが自信になっていくんです」。その言葉は重い。

 それが、ファンになってくれた人に応えようという前向きな創作意欲に繋がっていくわけだ。伴って、責任感や使命感が生まれていく。元々は好きでやっていたのかもしれないけど、喜ばせたいと思うようになっていくのである。大きな変化である。

 反骨精神を表現するにも、それは「僕が考える」という枕詞がつく。それが受け入れられ続けることで、自信になっていく。すると、最初は「とがっていた」自分が徐々に「丸くなっていく」実感を得たというのである。 

 つまり、相手あっての自分であり、その表現物としてのキャラクターであると。

他の人と自分とは何が違うのか

1.ソフビという素材は同じでも考えは違う

 だから最初は、商品をきっかけにイベントなどで対話をすることが肝であった。それを含めて商品だからだ。ファンと向き合い、それを通して彼は心を通わせた。けれど、そのうち、それが定着してくると、ものを見てくれるようになると。人は良くも悪くも、もので判断をされてしまうのだと。

 「じゃあ、何を持って商品の高みを見るの?」そう僕は彼に尋ねたのだ。ちょっと意地悪な言い方だけど、「極論、まわりにもソフビ人形を売っている人はいますよね?」と僕は聞いたのだ。

 それに対して彼は「一人一人の考え方が違うから、大丈夫」と口にした。

 例えば、怪獣ソフビ人形を作って、それをゴールとする人はいるし、現代美術としておもちゃではない世界で表現する人もいる。その中でハリケンさんは自分の手がけるキャラを広めるためにやっている。

 それぞれアーティストごと、その理由は違うから、そのソフビ人形を作る中でどんな思いを持っているかだという。それは、例えば、彼の中ではAを作ったから、BそしてCというように商品を増やすことではないと言う。

 コアな部分をどう養っていくかだと思うというのである。これは深い。ソフビ人形を作っているのだけど、その中身を鍛えることで、ソフビ人形に現れるというわけである。

2.コアを磨いて差別化にする

 だから、コアな部分を養い続けることで、ソフビ人形がどんどん魅力的になる。そして、だからイベントへ足を運ぶ。ソフビ人形を通して、それが届いているかをお客様と会って確認するためにだ。ゆえに、横一列、同じようにソフビ人形を売っている人がいても、「大丈夫」だと。自分は自分で、その価値を見出しているし、それが未来に繋がっていくという「自信」もあるというわけなのだ。

 勿論、未来に向かって、SNS然り、プラットフォームが整備されたりすることもあるだろう。けれど、そこに向き合う自分自身は変わらないと。「だって、自分が好きだった漫画家さんのこと、今も胸の中にありますよね」と。紙で見ようが、スマホで見ようが、作品は作品だと。

 ソフビ人形も同じだ。それ自体が流行り廃りで売れなくなるという時期もあるだろう。けれど、そこに込められた魂は失われないと。

 だから、自分を鍛える。けれど、一人よがりじゃダメ。なぜなら、お客さまあっての自分だからだ。かつての経験を踏まえて、そこに支えられてきた自分だという実感があるからだ。そうやって、自分が自分を持って、何をやり続けるか、なのではないか。2025年のクリエイター論は、まさに、そうやって人との中で今の自分の立ち位置を確認しながら、一歩一歩、前へ進むことなのである。

 今日はこの辺で。

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