Hello Kitty Japan なのにクロミ がメインなその理由
コロナ禍だからこそ、逆に普段できないことに挑戦したい。そう口にしたのがサンリオ代表取締役 辻朋邦さん。彼が現れた「 Hello Kitty Japan 」というお台場のダイバーシティにあるお店。実はハローキティよりも クロミ の方が目立っていた。僕らが連想するサンリオのピンクのイメージを覆し、黒で塗られている。実はそれ自体が変貌するサンリオの姿勢を示すもの。彼ら曰く、新たな戦略の最初の一手だというので、そこが気になって取材を試みたのである。
Hello Kitty Japan クロミ と モノトーン で Z世代の男女に
1.クロミ人気は侮れない
元々この場所には「Hello Kitty Japan」は存在している。お台場という場所柄もあり、海外の人や修学旅行の学生などを対象にした、おみやげ屋としての色彩が強かった。ベタで、ポップな印象。どこか子供っぽい雰囲気が漂っていたのも事実だ。
ただ、リニューアル後の内装はモノトーンを基調である。クロミという黒の頭巾を被ったいたずら好きなキャラクターを全面に出していて、まるでイメージを変えたものだ。よく見れば「「Hello Kitty Japan」じゃないよ。」と看板もいたずらにイジられている。
現場にいた広報の小畑さんと話していた。「思えば、クロミは『お願い!マイメロディ』の1キャラクターにすぎなかった。それが大出世ですね。」そう僕がいうと、「そうですよね。元々アニメのキャラでしたものね。そこからさらに、サンリオの通常商品のラインナップに入ってからも人気は衰え知らず。今年のサンリオキャラクター大賞では第5位です」と応えてくれた。
「5位なの?マイメロは?」と聞くと「第4位です」。クロミ、侮れない。
2000年代にアニメ化されて、その頃、子供だった人たちが、ちょうど大人になっている。だから、ある意味、このテイストは世代を超えて受け入れられるポテンシャルもあるんじゃないですかね、と。小畑さんの個人的感想の発言とはいえ、納得。
2.可愛いと逆路線
クロミをフックにしてリニューアルを果たした同店は、スポット的な扱いなのだろうか。いやいや、そうでもないようだ。
商品企画部のジェネラルマネージャー荒木仁さんはこう話す。
このお店は、お客様の固定化を防ぐことを意識したもので、それは会社の戦略とも関わってくると。長い歴史の中で、サンリオというのはピンク、可愛いというイメージが定着している。だからこそ、そこから脱却できていないことを今一度、見直したいというのである。敢えて、そこを打破して、新規のお客様を惹きつけようという狙いもあるようだ。なるほど。
それでは、新規顧客として想定しているのはどこなのか?。荒木さんは「やはりZ世代」であり、敢えて「男女ともに」という表現を用いてくれた。「だから、モノトーンをベースに、Tシャツなどは男性が着用しても違和感がないテイストに仕上げています」と。
昨今、メンズコスメが出ていたりと、男女という境目がなくなってきている。キャラクターグッズでも、そこに商機を求めるのは判断としてはありかもしれない。
サンリオの変化は世の中の変化の裏返し
1.ぬいぐるみも黒尽くめ
それゆえ、ぬいぐるみにしても、原色系のものが定番として存在してはいる。けれど、このお店に並ぶのは、あの「はんぎょどん」ですら、ぬいぐるみがモノトーンで統一されている。少しシックに、子供のおもちゃから大人のインテリアへと変化した感じである。
併設されたスイーツのテイクアウトなども、そう。ハローキティの象ったこんがり焼きというお菓子が黒くなっていて、「ここまで!?」と叫んでしまった。
「これは竹炭パウダーを用いたのです」と。「え?苦いのではないですか?」そう言って驚くと「いやいや、全然そうじゃないんですよ。苦くもないし、実は竹炭パウダーはデトックス効果があります。体にも良いとされているんです」と。少しブレイクの予感がする。
荒木さんは「このお店はモノトーンもさることながら、意外性を大事にしており、驚きを持って、今までこなかった人たちの気持ちを引き寄せるという狙いもあります」と話してくれた。そこにクロミの少しいたずらな設定がマッチしていて、色合いも含めてそれをメインに大転換を図ったと言えよう。
2.限定商品も店設計も部署横断で
ちなみに、これらの雑貨系の商品でオリジナルのアイテムはこのお店かこの商業施設のECサイト「&モール」でしか買うことができなくて、希少価値を高めようとしている。
まずはそこで話題性を作りつつ、そこからどれだけ新規顧客を獲得し、それらが市民権が得るに至るか、そこは売上推移をみつつ、その成り行きを見てみたい。
ここまでみてきてわかる通り、僕も最初は正直、「Hello Kitty Japan」の一企画に過ぎないのかなと思っていたのだけど、実はそうでもないのかもしれないと。
事実、「これらのオリジナル商品とお店とが連動できているのも、商品企画の部署、店舗設計の舞台、マーチャンダイジングの担当者らが横断してその企画に携わったから」そう荒木さんは話す。つまり、こうやって新機軸の動きを部署を跨いでやっていくということなのだろう。
サンリオもかわいいから、少し脱却。これも時代の流れではないかなと思う。
サンリオが云々ではなく、世の中が多様性に満ちたもので変化しているという意味で。辻さん曰くこうした取り組みを「Am@zingプロジェクト」とそう呼ぶ。そこで、新世代で多様性を取り入れた新しいテイストとラインナップで挑んでいくのだという。これらの一連の取り組みは、確かにサンリオの新しい姿勢を見せる一つの形であることがわかった。
今日はこの辺で。