変わらないのは、人の心だった。アイル副社長・岩本亮磨が語った、バックヤードから始まる次の成長

間違いなく、大きな時代の転換期でありながら、変わらないのは、人の心。人を重んじる姿勢はそのままに、アイルに来てそう思った。人間想いのその企業の粋な計らいに、パッと社員の方々に笑顔が咲いた。
この日、僕は、同社の副社長・岩本亮磨さんが、これまでの振り返りと、これからの展望を語ってくれた、その後に、その光景を見たのだ。
まずは、岩本さん(写真中央)の言葉から、この会社の輪郭を辿っていこう。

派手さはない。でも、現場と夢を両立した創業ストーリー
結果として上場企業となったが、アイルの歩みは、派手な資本の物語ではない。創業者の岩本哲夫さんは大塚商会出身。営業チームのマネージャーとして現場を知り尽くした人物だった。仲の良かったメンバーを引き連れて独立したのが、この会社の始まりだという。
創業当時の大阪・東大阪には中小企業が密集していた。
そこで掲げたテーマは、「中小企業をITで良くしていく」。マンションの一室から、資本を入れずに始めた。決して楽な道ではなかった。
それでも35年。社員は1000名を超え、ここ10年で売上高は2.6倍、営業利益は14倍に伸びた。
特に彼らが支え続けてきたのは、販売管理・在庫管理という“現場のど真ん中”。目立たないが、企業活動の要となる領域だ。ここに軸足を置き続けたことが、アイルの成長を静かに支えてきた。
汎用化の時代に、あえて「カスタマイズ」を手放さなかった理由
世の中はクラウドへ向かい、汎用的で標準化された仕組みが求められる時代になった。その流れの中で、アイルはあえて「カスタマイズ」を大事にしてきた。
それは単なる技術選択ではない。中小企業一社一社の個性を尊重するという、企業姿勢そのものだ。業務の進め方も、商慣習も、会社ごとに違う。そこを一律に揃えてしまえば、強みまで削ってしまう。
だからアイルは、業種ごとに深く入り込む。ファッション、食品、医療、鋼材、ねじ・金属部品。一般の販売管理では難しい領域を、専門パッケージとして磨き上げてきた。業種専門の営業とSEが組み、提案の精度を高める。
その積み重ねが、単なる「ツール販売」ではない関係性を生む。伴走しながら業務を良くしていく。その結果が、9割近い競合勝率と、98%を超えるリピート率につながっている。
基幹とECを「バックヤード」という一本の思想で束ねる
アイルの事業は大きく二つに分かれる。基幹システム、つまり販売管理・在庫管理。そして、ECのバックヤードを効率化するクラウドツール。
普通なら、別会社になってもおかしくない領域だ。だが岩本さんは、これらを一つの言葉で束ねた。「どちらも企業のバックヤードを支える仕組み」だと。
コンサルを軸に、SIと掛け合わせたシステムソリューション(Aladdin)。クラウドと掛け合わせたWebソリューション(CROSS MALLなど)。左右に分かれながらも、思想は一つだ。
まずは販売・購買・在庫・生産という、最も難易度が高く個性が出る領域に踏み込む。そこからERPとして周辺へ広がっていく構造。“全部入り”を売らない。あえて難しいところを引き受ける。その覚悟が、この会社の立ち位置を明確にしている。
2025年は「広げる」と「深める」。全国化とPIMという次の一手
2025年の動きを整理すると、キーワードは二つ。「広げる」と「深める」だ。
まず広げる。アイルは東京・大阪・名古屋・松江研究所の4拠点で活動してきたが、従来は近畿・中部・首都圏が中心だった。そこから全国対応へ。福岡の大型展示会への出展、北陸への提案開始。拠点拡大以上に、対応の“型”を整えたことが大きい。
リモートが浸透し、出社は3〜4割。地方エンジニア採用も進め、体制を作り替えていく。広げるとは、営業ではなく提供体制の話だった。
一方で深める。BACKYARDの新サービスとして商品管理プランを投入。商品マスターがシステムごとに点在する課題に対し、PIMという考え方で一元管理を可能にした。地味だが、運用の誤差を減らし、人を本来の仕事に戻す強い一手だ。
関連記事:商品から始まる体験革命──アイルが描く“売り先多様化時代”の『BACKYARD™』 OS
「アイルナビ」とリアル接点が示す、関係性の再設計
「つながりを、より深く、気軽に。」
その象徴が、ユーザー向けサイト「アイルナビ」だ。サポート対応や情報取得をスムーズにし、顧客との接点を再設計した。
さらにリアルな場にも踏み出す。企業向け研修の開催、産学連携での國學院大学経済学部との取り組み。テーマは「本当にたくさん買う人がファンなのか?」。顧客管理や関係性の本質を、学生と一緒に問い直す。
また、社員への住宅手当や保険制度、株式による賞与制度など、安心して働ける土台づくりにも力を入れる。離職率は2.3%。世の中のために使う、という姿勢が、結果として社員のエンゲージメントを高めている。
2026年、「成長投資加速」へ。基幹×AIが描く次の景色
岩本さんは、2026年以降を「成長投資加速」のフェーズと位置づけた。売上と利益率が上がった今こそ、仕組みと考え方を変える。研究開発、社内改革、M&Aも視野に入れる。
35年、基幹システムで企業の“肝”となるデータを扱ってきた。その蓄積があるからこそ、「どう活用するか」が次の勝負になる。AIによるデータ分析や経営支援は、その延長線上にある。
業種ごとのまとまりを横串で捉え、物流や決済も絡めて“面”へ広げていく。ただし夢物語にはしない。人と時間が必要だから、利益はあえて抑えめに設定する。
AIは、人を減らすための道具ではない。質を保ち、社員を成長に振り向け、支えられる企業の数を増やすための力だ。
人員を削るのではなく、関われる企業を増やすためにAIを使う。その考え方に、僕が投げかけた質問への岩本さんの答えが、静かに重なった。
そして、最後に岩本さんたちは、社員に感謝を込めた「お年玉」を配った。(写真は、アイル常務山本浩孝さん)。役員が壇上に立つことなく、ポチ袋を手に執務スペースを歩き、社員一人ひとりの席へ直接言葉を添えて手渡す──そのアナログな所作の中に、アイルが大切にしている人的資本経営の輪郭が、静かに見えた。

パッと花咲いた笑顔の理由はコレだ。この意味は、ここまでの取り組みとリンクする。転換期の強さとは、派手な一手ではなく、順序を間違えないこと。その姿勢が、この会社の品格を物語っていた。
今日はこの辺で。








