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バーチャルとリアルが交差する──VketReal2025 夏で見えた次の社会基盤

「メタバースって、本当に流行っているの?」。そんな疑念が、少しずつ“確信”に変わりつつある。一度はブームが落ち着いたかに見えた。そう感じていた僕も、バーチャルイベントの裏側を支えるHIKKYの小湊悠さんと話す中で、ある感覚を得た。違う。メタバースは、すでに“第二フェーズ”に入っている。

 僕が足を運んだのは、秋葉原。その起点となったのが「バーチャルマーケット2025 Summer(Vket)」だ。もともとは、“仮想空間で完結するマーケット”として、主にクリエイターが活躍する場だった。だが今や、その枠を超え、企業が数多く参加し、価値を検証する場所へと進化している。

 その流れは、過去の記事でも追ってきた。そして今回、明確に違うと感じたのが、リアル連携イベント「VketReal 2025 Summer」だった。バーチャルがリアルの街に染み出すような動きを見せ始めたことで、メタバースの本質──人や場の“拠点化”としての意味が、ぐっと体感として迫ってきたのだ。

 楽しみや魅力の結節点は、案外近くにある。だけど、まだ誰も“そこ”に旗を立てていないだけなのかもしれない──。

【1】お茶は“リアルの感動”を届けにいく──仲村製茶「V茶」 

  一見すると伝統を感じる日本のお茶。だが、静岡県藤枝市の仲村製茶が開発したのは、“ゲームやVRのお供に最適な”水出し日本茶「V茶(ぶいちゃ)」。Vketの空間内では、巨大急須から流れるお茶の滝を浴び、湯呑みの中で記念撮影できるフォトスポットも登場。

  一方、僕が実際に足を運んだリアルイベント「VketReal 2025 Summer」では、試飲や購入ができる“V茶”のブースが登場していた。Vketキャラクターをモチーフにした5種類のお茶をセットにして販売していた。だが──正直言って、バーチャル世代にお茶はあまり馴染みがないだろうし、そもそも“お茶を売るような環境”には見えなかった

 しかし、販売数を聞いて驚いた。なんと、数百セットが売れていたというのだ。

“バーチャルでの出会いが、バーチャル内でのエンゲージメントを高め、リアルでの味覚体験につながる”

 まさにその言葉通り。V茶は、しっかりと他のお茶ブランドとの差別化に成功していた。

 だからこそ、冒頭で触れたように──企業にはまだ、「旗を立てていない空白地点」が確かに存在しているのではないかと、改めて感じさせられた。

【2】焼津の“赤いダイヤ”、バーチャルからリアルへ

 続いて紹介されたのは、静岡県焼津市。リアル会場では、「赤いダイヤ」とも呼ばれる希少なミナミマグロの頭肉を使ったまぐろ料理缶が販売されていた。僕が訪れたときにはすでに完売。その人気ぶりがうかがえた。

 そこから逆算して、改めてVketの意義を考えてみた。

 正直、「静岡=伊豆や沼津」というイメージは根強い。だからこそ、焼津市はバーチャル空間での関係構築に本気で取り組んでいる。たとえば彼らは、焼津さかなセンターの話題を挙げ、“港としての価値”にも言及していた。

 地元の人なら誰もが思い浮かべる名所や魅力はたくさんある。でも──一歩地元を離れれば、その印象は意外と薄いのが現実だ。だからこそ、Vketという舞台で、あえて“リアリティ”を仮想空間の中で再現する。

 このアプローチは、まだ他の自治体が踏み込んでいない領域。だからこそ、焼津はここで“らしさ”を発信し、リアルイベントと連携することで、成果を「数字」で示している。

 実際、ふるさと納税でも静岡県内で極めて高い反響を得ているのは、こうした積み重ねの結果に他ならない。今回の出展でも、リアル会場での物販やSNSキャンペーンを通じて、バーチャルとリアルを往還する構成がしっかりと組み込まれていた。

 “地方の味を、ゲームで知って、リアルで味わう”。

 移動してまで現地に行こうとは思わなかった人でも、バーチャルという窓口を通じて興味を持ち、購入に至る。焼津はその好例として、地方自治体におけるメタバース活用の可能性を実証している。

【3】DNPは“印刷会社”じゃない──コンテンツと体験の会社へ

 DNP(大日本印刷)と聞いて、何を思い浮かべるだろう?「印刷会社でしょ?」。そう思う人も多いかもしれない。でも、それはもう半分正解で、半分はもう違う

 今回のVketRealで、彼らが前面に打ち出していたのは──「マインクラフトを使った教育ゲーム体験」だった。DNPは近年、マインクラフト内で学べる教育コンテンツを制作し、実際に学校現場などでの導入も進んでいる。

「教科書を読むだけでは頭に入らないなら、少しでもゲーム性を持たせて興味を引く」。そんな発想から生まれたプロジェクトだ。

 要するに、DNPは紙を扱うからこそ、“紙”の上に載る情報=コンテンツも大事にしてきた。

 だから、紙の需要が減るなかで彼らが目を向けたのは、その紙そのものではなく、“紙に載せていた価値”だった。

 それが、DNPの新たな方向性であり、いまは教育×ゲームという新しい領域に、着実に足を踏み入れている。今回の出展でも、XRコンテンツやIP連携による体験設計がブースに展開されている。まさにメタバース時代の“第二の本”を示す挑戦となっていた。

「紙じゃなくても、価値になる」──。

 その言葉が象徴するように、DNPは「モノの本質とは何か」を問い直し、未来の“文化のインフラ”をつくろうとしているのだ。

【4】“ただの自販機”じゃない──HIKKYが描く、つながりのインフラ

 「ただ飲み物を売るだけじゃない」。

 イベントの主催HIKKYが制作に関わった自販機には、そんな言葉がしっくりくる。それは、バーチャル空間での存在感を活かしながら、人と人をつなぐ“インフラ”として設計されているのだ。

 まず目を引いたのは、自販機に描かれたVtuberの存在。裸眼でも立体的に見える表現で浮かび上がり、まるでこちらに語りかけてくるように接客してくれる。

 普段、画面越しに見ているはずのデジタルキャラクターと“対話”できることが、予想以上の高揚感を生み出し、商品購入へのきっかけになっていた。

 そして、小湊さんに話を聞いてさらに腑に落ちたのが、HIKKYの社名の意味だ。「HIKKY」とは、かつて“引きこもり”と呼ばれた人々の中にある埋もれた価値を発掘するという想いが込められているという。

 だからこそ、Virtual Market(Vket)なのだ。

 リアルでの対面が難しい状況でも、自分の才能を発揮できる場所を提供する。そこから誰かとつながり、新たな社会が生まれていく。

 そんな“出会いの循環”を、彼らは本気で作ろうとしている。そして、意外にもそれを体現していたのが、この自販機だったということ。「安心して人と関われる場」そのものとして、Vketの世界観を支えていたのだ。

【5】バーチャルに“佇む”意味──企業も、ユーザーも、そこに理由がある

 ここまで読んでいただければ、もうお気づきだろう。

 企業が何気なくバーチャル空間に“佇ませている”ように見えるコンテンツも、実はそこに確かな役割がある。ただの演出ではない。自分たちのオリジナリティを発揮するための土壌として、この空間を選んでいるのだ。

 そして忘れてはならないのは、ユーザー自身もまた「居場所」を求めてこの世界にやってきているということ。この日、「V決闘」というブースがあった。VRCボクシングとのコラボで、ボクシングのスタイルでスイカ割りを楽しめる内容だ。

 まさに“好き”という感情が軸となり、コミュニティが自然発生的に形成されている。それが、Vketという空間のすごさなのだ。それが、リアルを巻き込むことで、よりそのコミュニティとしての価値の振り幅を大きくする。

 色々話を聞いて納得したのは、この“共通の好き”が人を結び、そして自己成長にもつながっているという構造だった。

【6】メタバースの進化は、人間の可能性を拡張する

 たとえば会場には、「射的」コンテンツもあった。一見リアルイベントでよく見る風景。

 だが、実はバーチャルで操作した鉄砲の動きが、リアルな射的会場に反映されるという仕組みになっている。そして、リアルの標的が落ちれば、それがバーチャル側にも反映される。

 この高度な連携も、プログラミング好きたちがバーチャル上で集い、試行錯誤を重ねた結果なのだ。つまり──この技術の進化は、バーチャルコミュニティという土壌の上で育ってきたものでもある。

 その姿を目の当たりにすると、もはやメタバースは「ただの仮想空間」ではない。次元の異なる社会基盤になり始めているともいえよう。

 そして、メタバースが発展すればするほど、拾い上げられる人の数が増えていく。同時に、拡張される才能も増え、結果として人々の暮らしそのものが豊かになっていく。そう考えれば、メタバースを“流行り廃り”で語るのは、あまりにも表層的すぎる。

 むしろ──リアルの現場に足を運んだからこそ、メタバースの本質に触れられた。

 そんな実感すらある。「VketReal 2025 Summer」は、僕にとってこれまでになく大きな気づきを与えてくれたイベントだった。

 今日はこの辺で。

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