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「これ、もう人いらないじゃん」──バイブコーディングが教えてくれた、人間が“設計者”になる時代のリアル

 「これは、やばいな──」トランスコスモス・デジタル・テクノロジー代表取締役 所年雄さんとの対話の中で、僕が何度も口にした言葉だ。いや、実際そうとしか言いようがなかった。バイブコーディングという言葉にまつわる話を聞いたとき、僕の中で「人間の仕事とは何か」という問いがぐらりと揺れた。

“AIに仕事を奪われる”ではなく、“仕事の構造が変わる”という実感

 これまで、プログラミングというのは“専門職”の世界だった。知識があって、経験があって、複雑なコードを書ける人だけが、ものを作れる。

 でも今、それが覆り始めている。今や、バイブコーディングという手法を使えば、コードが書けない人でも“やりたいこと”や“雰囲気”を言語で伝えるだけで、AIが実際に動くものを作ってくれるようになってきた。

 たとえば「昔のゼビウス風のゲームを作りたい」と伝えると、AIが数時間でステージ付きの動くゲームを完成させてしまう。ほら、といって見せてくれたのは、所さんが作り出した“ゼビウス”風のゲームであった。えええ、と思わず、僕は、叫んだ。

 そんなの所さんだからでしょ?そんな声が聞こえてきそうだ。だが、いかに、“ヤバい”かは今、読んでくれている読者もプログラミング知識ゼロでここまでできることにある。

 例えば、僕の生成AIにこう打ち込む。

「昔アーケードゲームだったゼビウスを、ブラウザベースでコーディングしてください。ステージは一面だけです。」

 すると、、、

  左側を見てほしい。緑が自分、赤が敵で、赤は上から下へと流れてくる。右を見ると、わかるが、緑はスペースキーを押すだけでミサイルを打てるようになる。

 いっておくが、僕はプログラミングの知識はないのである。

 だから、「もっとポップな色に変えて」と言えば、UIの配色を調整し、「スコア機能もつけて」と言えば、すぐにハイスコア表まで付けてくれる。そういうことを繰り返すうちに、先ほど見せてくれたゲームができたのである。

何が起きているのか?

昔アーケードゲームだったゼビウスを、ブラウザベースでコーディングしてください。ステージは一面だけです。

 この一文には、意外と多くの情報が詰まっている。生成AIはまず、それを構造として分解するところから始める。

 まず目的。ユーザーが求めていたのは、「昔のゼビウスのような縦スクロール型のアクションゲーム」を作ることだと読み取れる。つまり、自機が左右に動いて弾を撃つ、敵を倒す、というプレイ感覚を再現する必要がある。

 裏側では「ゼビウスって何だったか?」を改めて調査・照合している

  • 1983年ナムコの縦スクロールシューティング
  • 自機(ソルバルウ)を左右に動かし、空中と地上の敵を撃つ
  • 背景スクロール、敵が湧いてくる
  • BGM・スコア表示・自機の弾道などが特徴的

 次に制約。

 「ブラウザベースで」とあるから、使える技術は限られる。HTMLとJavaScript、そして描画はCanvas APIで構築するのが最適だと判断した。

更に、 開発方針の決定も(人間でいう“設計”)

  • HTML Canvas APIで描画する
  • JavaScriptだけで動作(フレームワーク不要)
  • 自機操作(←→キー)、発射(スペースキー)
  • 弾が敵に当たると消滅(衝突判定)
  • 敵は上から出現してゆっくり降下
  • スコアや背景スクロール、敵多様性は省略(シンプル化)

 そして、シンプルさ。

 「ステージは一面だけです」というのは、“ミニマルで動くもの”を作ることが目的だというシグナル。つまり、あれもこれも詰め込むのではなく、一つの体験として成立する構造をどれだけ少ない要素で組み上げるかが問われている。・・という具合だ。

 つまり、僕が実際に所さんから聞いたのは、そういう“コードを書くより、アイデアを伝える”ほうが大事になってきた現実だったのだ。

バイブコーディングとは何か?──“役割分担”するAIたちの共同作業

 ここで改めて、バイブコーディングという考え方を整理しておきたい。バイブコーディングとは、ざっくり言えば、「自分のやりたいことを自然言語で伝えれば、AIがその“雰囲気=vibe”を理解して、必要なコードを勝手に書いてくれる」という新しい開発のやり方。

 それで、先ほどの話を加味して、これを咀嚼すると、バイブコーディングとは、まさにこの「構造を読む」ことから始まる。それはコードの話ではなく、人の“やりたい”を構造に翻訳することなのだ。

 しかも、その作業は一つのAIが全部やるわけじゃない。

 複数のAIが役割を分担して、人間の開発チームのように協力して作業を進めることができる。だから、その価値がさらに最大化されて、より大きな創造物を作り出すことができる。たとえば「ChatDev」という仕組みがある。

 2023年に中国・復旦大学の研究チーム(OpenBMB)が提唱したオープンソースプロジェクトである。これは、AIに「プロジェクトマネージャー役」「設計担当のエンジニア役」「コードを書く人役」「テストをする人役」など、それぞれの“仕事”を与えて、まるでチームのように開発を進めさせるというフレームワークだ。

 たとえば「ECサイトを作りたい」と人間が最初に伝えると、AIたちは自分たちで「じゃあ必要な機能を整理しよう」「設計方針をどうするか決めよう」「コード書いて、テストもやっとくよ」と、AI同士で会話をしながらタスクを分担し、完成まで持っていくことも可能になる

10人でやっていたことが、1人でできる時代へ

 なんてことだ!つまり、これは「個人がAIチームをマネジメントする」時代が始まったということだ。所さんの話で、僕が何より衝撃を受けたのは、この技術によって、「今まで10人以上でやっていたようなことが、たった1人でできてしまう」現実だった。

 コードはAIが書いてくれる。設計もレビューも、分担したAIが勝手にやってくれる。人間はただ、「こんなことがしたい」と言えばいい。

 これまでだったら、「このシステムに決済機能を入れたい」「デザインはもっとこうしたい」「エラーが出たときはこう表示したい」そうした要望をそれぞれ別の部署やチームに投げていた。

 でも今は、自分ひとりでAIに話しかけているうちに、それらが形になっていく。本当に、これはもう「人いらないじゃん」って思ってしまうくらいの衝撃だった。

だからこそ、“最初の言い出しっぺ”がすべてを決める

 じゃあ、人間はもう必要ないのか?──いや、違う。むしろこれからの時代は、“最初に問いを立てられる人”がすべてになる。AIがどれだけ優秀でも、「なにを作るか」が曖昧なら、答えはボヤける。

 プロンプト(=指示文)を書く技術は確かに大事だけど、その前に、「どんな世界を作りたいのか」「なぜこれを作るのか」という“発想の原点”がなければ、AIは動き出せない。

 だから、所さんは面白いことを言った。これから大事なのは、日本語をちゃんと使えることなんじゃないか。プログラマーほど、自分の言葉で説明しがち。でも、相手の要望を聞き入れ、相手に理解させることができる言葉を並べてこそ、伝えることができて、それが具現化できる。

 つまり、それを構造的に考え、言葉にして、順序立てて指示できる人がいるからこそ、バイブコーディングが活きる。だから僕は、この対話の中で何度も何度も「これは、やばいな」と思ったわけだ。

 人の頭の中にある全てが、ここで具現化されていくということである。

 これはもう、“80億総クリエイター時代”じゃないか!

 人がやるべきことが、いよいよ“設計”や“構想”という領域に集約されていく。手を動かす作業ではなく、世界を動かす問いが、求められるようになる。

おわりに──コーディングができる時代から、“構造を描ける人”の時代へ

 バイブコーディングは、単なる技術革新じゃない。これは、「誰が最初の旗を立てるか」の話なんだ。

“これが欲しい”と感じ、“こうしたらいいかも”と構造を考え、“こういう伝え方をすれば、AIが形にしてくれる”と組み立てる──

 それができる人に、かつての100人分の力が宿る。

 つまり、発想と言語化という、極めて人間的な行為こそが、AI時代の核になる。かつてデジタル表現は、選ばれた人しかできなかった。でも今は違う。イメージを持った人が、そのまま形にできる時代がやってきた。

 じゃあ、そのイメージを最初に持つのは、誰だ?言い出すのは、誰だ?その“言い出しっぺ”こそが、世界をつくる。

 僕は今、そう確信している。

 今日はこの辺で。

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