エキュート秋葉原が示す“駅の未来”──Beyond Stations構想の全貌とは?

人は移動し、駅はそれを支える。だけど、もし駅がただの通過点ではなく、生活や地域、未来そのものに寄り添う存在だったら──。JR東日本とクロスステーションが掲げる「Beyond Stations構想」は、そんな未来への問いかけに対する答えの一つだ。
2025年春、「エキュート秋葉原」の開業とともに語られたのは、単なる施設設計ではない。それは、“これからの駅”が目指す、新たな価値の物語だった。
秋葉原の個性に応答する、“次世代駅ナカ”の誕生
「秋葉原は、“通り過ぎる”人と“目的を持って訪れる”人が交差する場所。」
会見の冒頭、施設開発の経緯を語ったのは、エキュート秋葉原店 店長 西田裕さん。つまり、その駅としてのポテンシャルを最大化するために、掲げたのが「つながる」という視点なのだ。そのために必要なのは、文化を持ち、安心安全に快適に過ごせる場所に変化していくこと。
それをこの秋葉原という場所において、考えると、一体どういうものになっていくのか。その答えが、このエキュート秋葉原であることに他ならない。面白いのは、既に人がいるという現実に対して、付加価値をつけていくという点である。つまり、人がいるから、ある程度属性を特定できるという強みがある。
そこで生かされるのが、SuicaデータとGPSである。それらによる綿密なマーケット分析によって、秋葉原駅の利用者像は「通勤者よりも趣味や観光で訪れる訪問型が多い」「男性比率が高く、滞在時間が短い」といった特徴が浮かび上がった。
この駅ならではの特性に応答するかたちで、施設コンセプトとして掲げたのが「マイグラデーション秋葉原」。
平日と休日、若年層とシニア層、国内とインバウンド。異なるライフスタイルが交差する中で、それぞれが“自分なりの心地よさ”を選べる空間を目指したのである。ポイントは、「一律」ではなく「選択肢」。同じ空間の中に複数のレイヤーを重ねることで、多様な来訪者に自然とフィットする設計が実現している。
キャッシュレス化が描く、新しい“接客”と“働き方
店単位で考えればそうなるが、その礎はJR東日本の「Beyond Stations構想」にある。繰り返しになるが、駅を起点に人々の生活に根付く、文化を浸透させていくわけだ。JR東日本 マーケティング本部 福見恒さんはその点を強調する。
そして、その考えに至る理由には、デジタルの存在がある。起点となる人の手にはスマホがあり、それをフックに場所の見直しをして、「つながる」ためのインフラ作りを模索するわけだ。

次世代型の駅の姿といえよう。
その“次世代型”を語るうえで欠かせないのが、完全キャッシュレス+集中レジという革新的な仕組みだ。駅中施設での“全館キャッシュレス”は、今回がJR東日本として初の試み。

その背景にあるのは、若年層や海外観光客の増加に伴う、スマホ決済ニーズの急伸。財布を出さず、片手で完結する買い物スタイルは、今や日常の一部となっている。
加えて、これは「人手不足への答え」でもある。従来なら、販売・会計・商品梱包・レジ締めなど、1人のスタッフが多くの業務を抱えていたが、集中レジによって大幅な業務負担を軽減。下記の図で言えば、レジの部分がなくなり、商品補充と製造に集中できる。レジがなくなることで、通常業務が下記の様に削減できる。

結果、ショップの運営に必要な人員は、約半分に抑えることが可能となった。さらに、「接客ゼロ」ではなく「接客の再定義」を目指しているのも特徴だ。
必要なときには声をかけられ、煩わしさを感じないちょうどよい距離感──そんな“駅ナカにおける接客の最適解”が、ここにはある。
駅とデジタルの融合──ugo、AI、メタバースがつなぐ新しい顧客体験
会見後半では、未来への期待を象徴するようなテクノロジーの数々が披露された。なかでもひときわ注目を集めたのが、案内ロボット「ugo(ユーゴ)」の導入だ。
ugoは、単なる“受付ロボット”ではない。生成AIによる自然な対話が可能で、ユーモアを交えた接客や、ニーズに応じたショップ案内まで担う“エンタメキャスト”。

実を言えば、担当者曰く、実は、警備員ロボットであった。人材不足も相まって、需要が生まれたのだが、警備だけではなく、通行人がその場所について、尋ねる人が多いことに気づく。それによって、その施設の情報を、AIによって覚えてもらい、答えてもらうという視点が生まれた。
それをエキュート秋葉原のコンシェルジュに置き換えて、活用したというわけである。
秋葉原という個性派の街に、ちょっとした驚きと未来感を届ける存在になっている。そしてもう一つの目玉が、「パラレルエキュート秋葉原」というメタバース空間の構築。
リアルな売り場を3D空間で再現し、AIコンシェルジュによる商品案内・多言語対応・クーポン配信などを展開。来店前の“予習”にも、訪問時の“ナビ”にも活用できる。このように、駅という物理的な場所を、デジタルが拡張することで、“より人に寄り添う空間”へと進化している。
“街とのつながり”を育てる──発信拠点としての駅の役割
「駅だけが潤っても、街が元気にならなければ意味がない。」
そう語ったのは、マーケティング戦略部の蒔苗沙都子さん。彼女が強調したのは、“地域と一体になって育つ商業施設”という考え方だ。
その象徴ともいえるのが、「PLAY FOR THE FUTURE AKIBA DONATION」。スペースインベーダーなどのゲーム機を使ってプレイ料金の一部を地域に寄付するという、遊びと社会貢献を両立させたユニークな仕組みである。
また、リサイクル傘をアップサイクルした買い物カゴや、地元廃材を使ったアート作品など、“地域から生まれた資源”を取り込む姿勢も印象的だ。
これは、蒔苗さんに聞いた部分でもあるけど、いかに周辺のお店と連携できるかも肝である。そのまま、駅に閉じこもっているのではなく、外へと向かうきっかけづくりが大事である。そこも仮説と検証を繰り返しながら、どうすることがベストなのかを考えていく。おそらくその軸となるのもデジタルであろう。
駅が単体で機能するのではなく、「街と一緒に呼吸する」。そんな拠点としての姿が、ここ秋葉原では現実になりつつある。
結び
エキュート秋葉原は、単なる駅ナカ施設ではない。それは、人と街、そして未来をつなぐ“新しい拠点”としての実験場であり、挑戦の舞台だ。
秋葉原という個性を端的に示す、生活拡張の場でありながら、街へのナビゲートを行う存在。そのためには、集まる人とのつながりを形成するわけで、そのためのインフラをここで作っていくわけだ。
その意味で、SuicaやGPS、ugoやAIといったテクノロジーは、人を遠ざけるためではなく、もっと近くに寄り添うためにある。そして、その根底には、“誰かのために場所をつくる”という、変わらぬ人の想いが息づいている。
未来の駅は、きっともっと温かく、もっと面白い。秋葉原から、そんな未来がはじまっている。
今日はこの辺で。
エキュート秋葉原・店舗取材に続く。