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独自性こそ最強の戦略 – yutori社長片石貴展さんが語るブランド革命の秘訣

 感じたのは「プロダクトは問いである」ということ。作り手に思いがある。だからこそ、誰が共感するのかが大事。それをコミュニティという形で着地した。それがyutoriのイマドキであり、本質的な部分。僕は、ネットショップEXPOに参加して、株式会社yutori 代表取締役社長 片石 貴展さんの話を聞いて思った。不況が続くアパレル業界。そこで、年商43億円を超える規模に成長し、東京証券取引所グロース市場への新規上場を果たしたのが片石さんなのだ。

1. ECの強みを、業界の発展に繋げた

 僕は「プロダクトは問いである」と書いた。彼の話を聞いていると、コミュニティを重視している。ただ、それは従来で言えば、SNSなどを連想するものであったと思う。しかし、実は、商品作りも、そこに個性が生まれやすい。だからこそ、商品の世界観を通して、コミュニティを形成するところに面白さがある。

 それらは、アパレルに限らず、コスメなどでも可能。ゆえに、彼らのもとには31ものブランドが形成されるほどとなった。商品が自らの価値観を示すものであり、その元に共感する人たちが多く集まる。そうすることで、ブランドの売上を形成し、それを触発するための仕組みをyutoriは創り出した。

 これは、従来のアパレルなどにみられるブランド戦略とは一線を画している。まずは、モノを作って、広告宣伝などで、広くイメージを浸透させていく。そういう常識を完全に覆している。彼らの場合、デジタルを活用した新しい切り口があって、それが今触れた発想の中で論理的に具現化される。

 それが可能となった理由は、実は、ECという仕組みのおかげ。なぜなら、「スピード」感を持って、個々人で「フレキシブル」に対応できるからと説明する。トライアンドエラーが迅速に行われ、見極めを早くできるというところに、感性を重んじるジャンルにおけるECの価値を見出しているわけだ。

一つにブランドに依存しないことで価値観を守る

 そして、その中で、片石さんが目指すのは「一つのブランドに依存しない」経営体制。背景にあるのは、アパレル業界に対しての冷静な彼の分析。彼曰く、1ブランドだけでの成長維持が難しいという業界特有の課題がある。

 片石さんはブランドごとのリスクを分散させるために、あえて多くのブランドを立ち上げた。そして、それぞれに適した成長戦略を描くことに注力しているのである。

 それをどうやって具現化するというのだろう。その点、yutoriでは「Yリーグ」という管理システムを導入。1年以内に月次700万円の売上を達成しなければ撤退するという厳しい基準を設けている。

 これにより、ブランドの拡大と撤退の判断が組織としてスムーズに行われ、自律分散型の運営体制が維持される。この仕組みは、アパレル業界の「淘汰と成長」を自然な流れとして受け入れ、限られたリソースを最も効果的に配分するための戦略的な工夫といえよう。

2. EC活用の戦略 – ブランドの輪郭を形作るオンライン展開

 ここまででおわかりいただけただろう。情緒的なモノであることは十分、踏まえた上で、そこでマネタイズにつながる土台を仕組みでカバーして、感覚的要素を守っているのである。

 片石さんの事業戦略において、ECはブランド成長の初期段階における重要な役割を果たすことになる。繰り返しになるが、徹底して、短期間で成長の可能性を見極めるのには、ECの仕組みはプラスに働くからだ。

 まず、ECからブランドを立ち上げ、需要を一定以上に高めてから、その後の展開を考える。

 勿論、リアル店舗への展開も視野に入れていたとしても、起点はECだ。戦略の背景に「スピード」もあるけど、個々人による「フレキシビリティ」もまた、ECであれば可能であり、個々の才能を見極めるには十分である。今まで話していることが循環して、互いに、関連性を持っている。

 だから、彼は、見た目では(失礼!)感覚的にやっていそうで、それだけ本質的なのだと気付かされる。

3.プロダクトは問いである

 ECを通じてブランドのプロトタイプを作る。そして、消費者の反応を見ながら商品やマーケティングの方向性を微調整する。このことで、低リスクで様々なアイデアを試すことができる。

 そこで、方向性を各自、固めて未来に繋げるわけだ。そのため、各ブランドが早い段階で軌道に乗る可能性が高まり、彼の考えは理にかなっている。そして、それらは「一つのブランドに依存しない」ことで、可能となる。

 だから、逆に言えば、片石さんはECの一辺倒にこだわっているわけではない。あくまで手法の話。割り切って考えているのだ。だから、ブランドが一定の成長を遂げた段階で、リアルな体験を提供するための店舗展開を行うことは別に何らおかしくはないとも。

 それも先ほどのコミュニティという視点と関連してくる。

 彼にとって「リアル店舗」とは単なる販売の場ではない。ブランドに対するファンの期待感や情熱を共有するコミュニティスペースなのだ。プロダクトを通して、世の中の人に自らの価値観を提示して、共感する人を集めるという根本は変わらない。

 例えば、服のデザインは「より良き人との出会い」のための手段というわけだ。今の時代は誰と出会うかが大事。そのきっかけに、これらのブランドが寄与する。自分の人生を謳歌するための「誰か」をそこで探していく。だから、そのブランドに価値が生まれる。ここがイマドキであり、本質的であると思う所以だ。

4. ブランド刷新とディレクター交代の戦略的意義

 しかも、ブランドにも依存しない。yutoriでは、ブランドのリーダーシップを刷新するために、ブランドディレクターを定期的に交代させる方針を取っている。この戦略は、ブランドに新しい視点や感覚をもたらし、長期的にファンを飽きさせないための工夫として機能する。

  とことん情緒的なモノを仕組みによって上手に守り続けている。

 片石さんは「ファッションは個人の情熱や感覚が反映される分野。1人のディレクターに頼るとブランドが固定化されやすくなる」と語っている。この方針は、日本ではあまり一般的ではないだろう。

 従来、伝統的なブランドは一貫したイメージを保つため、長期的に同じリーダーシップを保つ傾向が強い。それに対し、yutoriではブランドの進化を重視し、変化を積極的に取り入れる姿勢を持っている。コミュニティをベースにしているからこそ、大胆なこの発想もトライアンドエラーで検証できる。

 片石さんは、その感度も忘れない。特にファッション業界においては、変化に敏感であり続けることが必要であるとしている。ファンが離れず、ブランドのらしさを維持しつつも新しい要素を取り入れる。そうすることで、常に進化を続けるブランドづくりを目指しているのだ。

5. 「コミュニティ形成」と「情緒的価値」によるブランド構築

 何度も同じ話をしているように思えるが、「誰と出会うか」という話に直結する。

 yutoriの成功の裏には、ただの製品販売を超えた「友達作り」に近いブランド構築の哲学がある。彼が強調するのは、コミュニティビジネスとしてのアプローチなのだ。特に彼は「価値観が同じ人を引きつけて仲間にする」という感覚は、ブランドに対する情緒的価値を高めるのだ。

 この「情緒的価値」によるブランド構築は、顧客だけでなくスタッフにとっても大きな意義を持つ。いうまでもなく、ブランドに対する愛着や一体感を深める効果がある。単なるマーケティングとしてのコミュニティ形成ではない。ブランドに共鳴し、熱狂的なファンを生み出すための戦略として機能しているのだ。

 かくしてファンとの一体感が強いyutoriのブランドは、他社とは異なる独自性を築き上げた。また、時代に合った価値観を持つ若者からの支持を得ることにも成功した。不思議な話だけど、時代にも周りにも流されず、ブレていない。

 そして、yutoriで展開するブランドの成長戦略に「再現性」を持たせることにも注力している。

 片石さんが意識してるのは、ブランドの立ち上げから成長までの仕組みを精密に設計すること。Yリーグでの売上基準を設けたり、在庫管理やマーケティング手法を体系化していく。そうすることで、ブランドごとの独自性を守りながらも、一定の成功パターンを確立しているのである。

5. ブランド成功の再現性と仕組み作り

 この再現性により、新ブランドの立ち上げや拡大を効率的かつ効果的に行うことができる。上場するまで、スケールする理由が見えてくる。

 だから、話は未来へと続く。最近は、ECサイトの設計やプラットフォーム開発にも注力している。ブランドごとに分散していたページを統合することでコストを削減。顧客がスムーズに複数のブランドを閲覧できる環境を整えた。

 それらの効果検証は加速されて、さらにスケールする。また、ブランド間のコラボレーションが自然発生する仕組みも作り上げ、マーケティング施策のコスト削減と効果最大化を実現している。

 片石貴展さんが率いるyutoriの成長戦略には、単なる商品販売を超えた「価値観」や「共感」を軸にしたコミュニティビジネスとしてのアプローチがある。とはいえ、それを情緒的に済ますことはない。仕組み化を徹底し、戦略的に物事を進めている。

 「独自性こそ最強の戦略」という彼の言葉。そこには、ECやリアル店舗、そしてファンコミュニティを活用し、常に進化を続けるブランドづくりの哲学が凝縮されている。不況に立ち向かい、新たなファッションビジネスの可能性を切り拓く片石さんの挑戦。それは、アパレル業界における新しい成功の指標として注目を集めるに違いない。

 今日はこの辺で。

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