不良になれ、チンピラになるな。ブランドの魂に惹かれてファンが羽ばたく未来へ「ファンバサダー」に想う
これからはブランドも“当事者”の範囲が広がっていくのかもしれない。それが、最近、常々僕が感じていることだ。要するに、ブランドの価値を底上げするのは、必ずしもそのブランド自体に限らず、ファンである。ただ、難点もあって、安定的にまるでスタッフのように、ブランドを支える仲間となれる土台が存在しない。だから、今回、発表されたバニッシュ・スタンダードの「ファンバサダー」という新サービスに僕は興味を抱いた。
当事者が増える時代へ
最初、僕は「当事者」という言い方をした。要するに、ブランドの価値を底上げするのは、ブランド自体に限らず、ファンである。それが今の時代の主流になりつつあるのだ。そんなの当たり前じゃないかと思う人もいるだろう。しかし,案外、これを企業は活かしきれていない。
なぜなら、それはファンを企業側がコントロールすることができないからだ。
それは、ファンの自発的な行動によって生まれるから。僕が思うのはここからの話。
最近、それらを自分たちの成長に繋げているブランドには、一つの傾向があると想う。それは自らのファンをうまく束ねて、コミュニティ化することで、行動を触発しているという点だ。そうなると、彼らの未来の行動も確約できる。なぜなら、もはや彼らがブランドの主ではないかと想うくらい、自分ごとになっているから。ブランドに成り代わって、発信していくのが使命とばかり、動くのである。
こうなると、もはやブランドはその運営する企業の手を離れている。
ファンの行動をうまく共通化させる
僕が、この日発表された「ファンバサダー」について面白いと思ったのは、その部分を仕組み化することで、企業の課題に応えられそうに感じられたからだ。バニッシュスタンダードは、元々、スタッフスタートで名を馳せたけど、その名の通り、スタッフに焦点を当てたものだった。
そこからの派生で「ファンバサダー」では、ファンにもそのブランドの価値向上に寄与してもらおう。そういう視点である。それまで同社が培ってきたものを、ファンを集結させて、触発する為の素材に置き換えていて、興味深い。
具体的には、いくつかそのサービス自体には構想があるようだが、その第一弾となるのが、キュレーション機能である。ブランドに対して、Instagramなどでファンが投稿したものをこのサービスが見つけて、コンテンツとしてそれを集約することができる。
ファンの未来も確保する
かつ、彼らは、そのファンに対してアプローチできるようにする。それをやることの意味は、未来の時間も確保する為。バニッシュ・スタンダード 代表取締役 小野里寧晃さんはそう話している。どういうことか。
つまり、それらのSNS投稿を仮に一手に集められたとしよう。それができたとしても、過去の話である。
大事なのは、ファンたちが未来も投稿してもらえるようにすること。その確約を取ることではないかというわけだ。確約と言っては大袈裟かもしれない。ただ、いかにファンに対して、自然に未来にも投稿してもらいやすくする仕組みづくり。それが大事だということには変わりはない。
それで「スタッフスタート」で培ったものをその部分で活かすわけだ。「スタッフスタート」はスタッフがSNSで投稿したものを、ECサイト上でコンテンツ化したわけだ。それにより、どこから経由したかが明確となるから、成果に比例して、報酬を支払える。つまり、熱意あるスタッフの行動力を、ブランド価値の底上げに上手に繋げて、仕事への意欲を触発したわけである。
スタッフからファンへ更にブランドを支える土台が広がる
それゆえ、同じ仕組みでファンの投稿をコンテンツ化していく。それであれば、ECサイト上にコンテンツ化して、賑わうと共に、もとからファンに報酬も支払える素地もある。だから、ファンのモチベーションを高める土台が彼らによって具現化できるというわけである。
結果、ファンにとっては自らの投稿により、それが報酬として反映される。から、逆に、積極的にそのブランドが好きな気持ちを、表現することになり、未来の投稿に繋がる。ある意味、先ほど、触れた当事者を、スタッフ以外に広げた格好だ。
元々、スタッフスタートは、ECサイトとの繋がりも多い。今までのスタッフで売上を伸ばしてきた企業との接点がそのまま、ファンを生かす土壌となる。
これは、企業にとっても歓迎される。ファンが大事。そうは言いながらも、インフルエンサーに未知数な未来の投稿に対して、過剰にお金を支払うのは現実的ではない。
だから、スタッフスタートの利点を持ち込んで、それを解決したまでである。
これは、同時に、アパレル業界の「人材不足」にもなる。スタッフ以外のリソースを有効活用して、販売促進に繋げていくことができるからだ。また、特に力を発揮しているファンにおいては、スタッフ採用への道が開ける。企業もそんな人材を放って置かないからだ。
不良になれ、チンピラになるな
この日、僕にとっても有益だったのは、ビームスの設楽さんに少しお話を伺えたことである。この日、小野里さんとのトークショーも開かれたのだ。僕が設楽さんに聞きたかったのは何か。それはコアが何であるかということ。
先ほど、ファンが率先して行動し、広がっていく時代だと書いた。けれど、広がるにも、そのファン同士における共通認識がないと進むはずはない。だから、僕は問うたわけだ。例えば、ビームスにとってコアな部分というのは、一体なんでしょうかと。
すると、設楽さんは面白い言葉を使いそれを表現した。
不良になれ、チンピラになるなと。
つまり、尖っているファッションというのは時代や場所によって異なる。その言葉が意図するのは、何かというと、実はその尖っているのは、真っ当と不謹慎の境目にあるんだということ。もしも尖り方が小さいのであれば、もっと不謹慎であってもいいだろう。
大事なのはその匙加減なんだというのだ。
大事になるブランドの礎とそこを土台にファンが羽ばたく未来
それを自分たちが伝えていくんだという意識が大切。そのためにはわかりやすいということが肝となる。彼らの扱う商材には、トラディション、ストリート、モードなど、色々セクションがある。けれど、そのそれぞれがちょうど“その境目”であることを目指しているのだと設楽さん。
なるほどと思った。
僕自身、ビームスで買った服は数多くあるけど、そこに惹かれていたんだね、って。
これから一層、ファッションに限らず、伝えていくべき当事者が増えていくはず。だからこそ、企業においては、ビームスのように、こういうコアは何か。その問いは大事になるだろう。また,スタッフやファンはその部分への熱量を知り、自ら取り入れ、それをどう表現できるだろう。そんなことを皆で考えていく時代なのかもしれない。
まさに、「ファンバサダー」はそれによって、スタッフとは違う新しいスターを生み出すのかもしれない。
僕は、このサービス云々以前に、増えていくべき、輝かしい“当事者”が、企業を引き立て、明るい日本の未来を作ることを祈りたい。
今日はこの辺で。