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楽天市場と生成AIの遭遇がもたらすのは“人情”のアップデート 楽天カンファレンス 2024 三木谷さん講演

 いつになくハートウォーミングな説明だと感じられるものだった。この日、僕は「楽天新春カンファレンス」に参加し、代表取締役社長兼社長 三木谷浩史さんの講演でそれを感じた。その日の講演に多くの時間を割いたのは生成AIに関してだった。でも、その価値をより発揮するのが人間性である。そのことを言い表しているような気もしたから、それを深く受け止めた。

楽天市場はアップデートしている

1.集客だけの意味合いは過去の話

 僕は、この日、そのAIによる進化を、「楽天市場」になぞらえ、表現するなら、こうだと考えた。それは“(楽天市場が培ってきた)「人情」のアップデート”である。

 大前提として、僕らは「楽天市場」というものの固定概念を打破しなければいけない。僕らは知らず知らずのうちに、「楽天市場」の存在意義が、従来の集客装置としての役目しか注目していなかったように感じるからだ。

 多くの店舗を集めることに始まり、ある程度、揃ったところで、外からお客様を導くために、経済圏構想を立ち上げた。ポイント経済圏は、楽天を優先的に利用するユーザーを優遇することが、顧客の数を安定させて、結果、店舗に利点をもたらしたわけである。

 実際、店舗に聞くと、この12月、1月の売上が以前と比べて、落ち込んだという声を耳にする。楽天のポイント還元のルールを改変したことによる影響も少なからずありそうだ。僕は、それを取り上げて、ネガティブな捉え方をするつもりはなく、逆に言えば、それだけ経済圏が楽天市場に影響しているということに着目したい。

 一見すると、その楽天市場という看板は変わっていない。しかし、売上の構成理由が昔と変わっている。これこそ「楽天市場」が知らず知らず“アップデート”している。そう僕が思う所以である。その改変にしても、ボリュームを置くべきところを時代に合わせて変えている。長い目で見て、この改変の判断をするべきだろう。

2.売上に寄与する要因が時代に合わせ変化している

 なぜ、こんな話をするのか。それは三木谷さんがAIを強調する理由にも直結するような気がしているからだ。

 これからも、同じように店舗が集まり、商品を並べて、購入のきっかけを作り出す、その“見た目”は変わることはないだろう。ただ、その売れるということの理由は、年々、時代を取り込みながら、変化していかなければならず、今で言うなら、生成AIなのである。購入に至るまでの裏側にあるメカニズムがガラリと変わっていくだろう。

 既に、楽天というフィールドでどう取り入れるか。楽天グループ全体で、既に検討を重ねられていることも明らかにした。例えば、楽天トラベルでいえば、これまでなら、ラジオボックスにチェックを入れて、お客様の要件を満たすように「探していた」。

 けれど、2024年春先には、それがチャット上、人間が対面しているようにして、結果を導き出していけるようになる。会話のように「北海道に行きたい」と言えば「目的はなんですか」と反応する。そして「美味しいものを食べたい」と答えると「では予算はどのくらいですか」と、一つ一つを持っている情報から絞り込んで、そのカードを切ってくる。

 それは人間と人間の交流に近い。だから、楽天生命で言えば、代理店に対してのアシスタントとして、応用させて、その機能を最大化する。

生成AIについて考える

1.何が変わっていくのか

 そもそも生成AIは、これまでと何が違うのだろう。従来のAIであれは、過去のデータを学習して、それと同じような解を出す。だから、よく機械学習という言葉を耳にしたことがあるだろう。例えば、自動運転であれば、過去のデータに基づき、“同じ境遇が生まれた際には”指摘をする。「この場面に来たら、スピードを緩めなさい」。存在するデータを今の状況と引き合わせて、答えを導くわけだ。

 それに対して、生成AIは人間のように、ゼロから作り出せるというところに革新的な要素がある。一つのキーワードを切り出し、「〇〇を教えて」では、今までの検索と変わらない。辞書と同じだ。

 しかし、上記のトラベルの例のように、目的に合わせて、膨大な情報の中から、複数の要素をチョイス。ーーだとしたら、ーーだろうという仮説を立てて、提案を変幻自在に変えてくるから、人間のやりとりに近くなるわけだ。

 だから、「こういうストーリーラインで映像を作ってくれ」といえば、やり取りをするうちに、映像コンテンツができてくる。元々、人間のアイデアは何かと何かを掛け合わせて、生まれるものだ。だから、会話という形で、それを引き出し、ネット上にある膨大なデータを掛け合わせて、答えを導き出す。ゆえに。人間の意図することを受け止めて、新しい発想を導き出す。

2.楽天市場はこう変わる

 では「楽天市場」ではどうなるのか。下記の写真の通り、これらを画像の解析やマーケティング戦略の方式、顧客対応など、多岐に及んで取り入れ、活用できるように実装していく。

 わかりやすい例を挙げるなら、楽天市場への「セマンティック検索」。三木谷さんは、こう語る。

「サーチボックスで検索キーワードを入れるUXもどちらかと言えば、非人間的であった」。

 要するに、人間の意図するものを突き詰めていくのが、生成AI。だから、その商品の意味も単体ではなく、画像を含めた形で認識される。お客様にとってみれば、頭の中にある欲しい商品がそれだけ、絞り込まれるわけだから、結果が出る。

 試しに「オフィスで使えるバッグ」という検索で、生成AIを活用して、効果検証をしてみた。すると、それまでと比べ、商品転換率が+2.7%となった。

3.事業者の負担を軽減しつつ、顧客体験を向上させるから革新的

それは、購買体験の質を向上させると同時に、事業者側の作業効率も向上させる。

 商品登録では、基本的な情報だけで、説明文を作成してくれる。そして、こちらから店としての情報も伝えて、それを反映していくことで、それを掛け合わせたオリジナリティのある文章も導き出せる。また、その利用シーンを一緒に覚え込ませてみる。すると、単体の商品写真に、利用シーンにあわせた、背景を付け足し、提案してくれるのだ。

 それら以外にも、広告のクリエイティブに関連して、バナーやコピーを自動生成することも考えられる。つまり、ショッピングモールは、集客にとどまらず、その中で商品とお客様の「引き合わせ」の質を高める土台として、活用できるようになるというわけなのだ。

 これらの機能は、楽天市場内で適応させることで、利点を生み出す動きとなる。ただ、楽天として最大の強みとなるのは、これらの掛け合わせる要素に、楽天IDがもつ情報が組み込まれて、より精度の高い提案を導き出せることにあるわけだ。

 買い物だけでなく、その人がどんな旅行をして、スマホ決済でどれだけ何に費やし、時に美容やゴルフなどの利用も行っていることも、データとして蓄積されている。生成AIは「考える」からこそ、それらのデータがかけ合わさって提案に反映される。だから、顧客満足度に直結するというわけである。これが楽天市場で販売することの最大の強みになるわけだ。

デジタルの最前線で人情を尊ぶ

1.楽天市場の真価が発揮されるのは?

 こう考えてみると、集客の場としての「楽天市場」が全てと考えるのはもはや古い。あらゆる日常とつながり、それがデータとして顧客満足度に直結する体験へとつながる。「楽天市場にくれば、商品に巡り会える」。その言葉の中身が変わっていくことを、店舗は理解しなければならない。これが、楽天市場の“アップデート”だ。

 しかしである。ここまで散々、そのAIの価値について述べてきた。けれど、それらは壁打ち相手であり、自分の考えをまとめる手段にすぎない。それは事業者にとっても、消費者にとっても。

 その時に両者の引き合わせの中で、価値を持つのはなんだろう。そこで、三木谷さんがその講演のラストに、持ってきたムービーがヒントになりそうだと思ったわけである。

 三木谷さんが最後に締めに使ったのは、なんとも意外な人間味溢れるハートウォーミングな映像である。

 このムービーについては、僕も店舗から聞いたことがある。別の店舗ではあるけど、ここの記事にも書いたけど、「感動ムービー」の話である。

参考:一世紀 走り続けた 須田本店 水郷のとりやさん 羽ばたく為に いざ次の100年へ

 「価値を伝えるためには感動を伝えなければいけない」という話で、作った人間臭いドラマ(良い意味で言っている)なのだ。思うに、楽天市場の最大の魅力は、この人間臭さ、人情にある。

2.人間臭さを引き立たせる生成AI?

 そんなわけで、この日、流されたのは、6分に及ぶムービーだった。出てくるのは、野球選手になりたかった酒蔵の3代目。選手への憧れを諦め、家業を継ごうと実家に戻った。すると、コンビニなどの勢いに押されて、子供の頃、馴染みだったお店や「おっちゃん」「おばちゃん」はいなくなっていた。

 大事なのは、今こそ、お酒の価値を伝えることだと思ったという。

 でも、それにはあまりに時間がかかる。時間が限られる中で、それをできる方法は何か。そこで、辿り着いたのが「楽天市場」だった。多くの店舗が集まり、ネットを通して全国の人が集うこの場所で、その価値を伝え、商品を売っていくということだった。いつしか、それは彼の生き甲斐となった。

 そして、夢を語る。それは自分の子供が、その将来の夢で、野球選手になるか、酒屋をやるかで迷わせること。

 どれだけAIによってできることが増えたとしても、所詮は手段なのだ。自分たちの考えなくして、生成AIでの壁打ちに意味など少しもない。

 だから、思った。楽天市場の真骨頂である人情を残していくための進化なのである。

 そう考えると昔も今も変わらない。モールの役目は“アップデート”して、お客様との引き合わせをする裏側が変わっているにすぎない。楽天市場と出店する店舗が果たすべきこと。それは、原点に立ち返ること。そこにAIを掛け合わせて、その人間臭さ、人情のアップデートを図っていくことだろう。

 今日はこの辺で。

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