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あなたの知らない「越境EC」の世界 “国外で売る”から“世界を一つに”商売する Global-e視点

 いまや越境ECというのは当たり前に定着。コロナ禍も経験して、右肩上がりで上昇気流を描いている。ただ、それを喜んでばかりもいられなくて、求められるレベルも向上しているのではないかと思う。つまり、前とは違った意味での課題感が生まれてくるに違いなく、その意味で「Global-e」の行動に着目した。まずは、彼らが指摘する関税など決済に絡む課題が顕在化する事。僕が思うに、それにより生まれる自国にあるものを“ソト”に売るのではなく、“セカイを一つ”に商売をしていく視点である。

前とは違った視点が必要な理由

1.急拡大を続ける越境EC

 言うまでもなく、昨今、日本と海外を取り巻く環境は変わっている。コロナ禍を契機に、日本に来ることができない人が日本のECサイトで商品を購入するということが増えた。越境ECのマーケットは右肩上がり。常に日本にいるわけではないから、インバウンドが戻ってからもその傾向は続くだろう。

 既に越境ECのプラットフォームの好調さをアピールする一方で、越境EC自体は次のフェーズを迎えたと考える。それが冒頭話した事で、複合的な要素が絡み合っているので、一言で言うのは難しいが、あえて言うなれば、お客様が購入する時の「決済」だと思った。国を跨ぐ以上、そこには様々な国ごとのルールや習慣が関係してきて、実は越境ECというのは一筋縄ではいかない。

 だから、ここで言いたいのは、企業にもいくつかの段階があるということ。どんな会社も、ゼロイチの段階があって、これまでは、とかく海外と日本を繋ぐインフラ作りに注力をしていた。小さい額でもいいから、まずは仕組みづくりをして、マネタイズポイントを探る。それが見えてくれば、それを拡大して事業として育てていく。

2ゼロイチと成熟した企業では課題が異なる

 語弊を恐れず言えば、勿論、取引する国の関税などのルールは調べているものの、専門家たりうるまでの知識を備えているわけではない。それよりは、事業として成立させることを優先。何をプライオリティとして高めるかと言えば、言語と物流の部分だったと思う。

 だから、これまで躍進してきた越境EC系のプラットフォーマーは、決済における購入時の言語対応と物流面に注力して、そのケアをしてきたのである。国内に海外に向けての配送拠点を作り、一括でそこに入れてもらい、フルフィルメントを含めて、その届け先までのケアをしていく。

 まずは「購入できて」「送り届ける」という当然のところの整備を行なったわけである。

 ただ、今回、議論するのはそこではない。つまり、ある一定の規模で、それら商品が行き来するようになると、留意すべき点は徐々に変化してくる。規模の大きさに伴い、それぞれの国ごとに納税義務が発生するからだ。

3.納税の中身は場所によって異なる 

 Global-eの視点を聞いて、なるほどと思った。

 それぞれの国ごとに異なる納税の仕組みについて、企業がどれだけ知っているだろう。例えば、アメリカなら「州ごとに」納税義務が発生する。それぞれの州で一定数、売上が立つと、州ごとで納税をしなければならない。もしも、商品が何十州にまたがって売れたとして、それを一社で把握し、それぞれ納税するのは現実的ではない。

 つまり、そういう取引量が増えたことで顕在化する部分に彼らは意識を向けて、ビジネスを展開している。その他、取引量が増えて、納税の義務が発生した時には現地法人が必要である。海外にいくら可能性があると言っても、「200以上の国と地域」で、現地法人を作れるだろうか。そんなわけはない。

4.購入時におけるトラブルを未然に防ぐ

 では、そういう課題に答えた結果、何ができるのか。その中身はどういうものになるのだろう。

 ここで、「HARVEY NICHOLS(ハーヴェイニコルズ)」の例を上げたい。イギリスのロンドンを拠点とする百貨店である。国内から国内の販売は、ハーヴェイニコルズ自身が行う。しかし他国ユーザーがこのECサイトで購入しようとすると、決済画面はGlobal-eに引き継がれ、仕様が切り替わる。 

 そうは言っても、お客様にとっては全く気付かぬほど自然。かろうじて下部に「Global-eが販売しています」と書かれてある程度だ。

 ここが彼らの真骨頂だが、決済時に、関税、税金の前払い額が表示される。逆に言えば、彼らは関税など国ごとのデータをGlobal-e自身で管理することで、それらをデジタルで商品ごと自動的に振り分けている。だから、瞬時に、その時、どの国からアクセスした人が、購入しようとするその商品に相当する税額を表示できるのである。

 しかも、現地通貨での価格表示と決済手段への対応を徹底している。だから、お客様にとっては、この段階で「いくら必要なのか」が把握できて、その現地と変わらぬ感覚で購入できる。

5.属人的であった振り分けをデジタルに

 このフローでの意義を語る上で、忘れてはならないのがHSコードの存在である。HSコードとは、「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号のことである。長いっっ。要は、貿易をする上で必要な割り当て番号である。

 国によってその商品の扱いが可能か。関税は幾らか。それらは、大きく異なる。この部分が海外とのやり取りを難しくしていた。だからこそ通関が存在している。正直言えば、そこの通過に関しては、属人的な要素もなくはないとも言われている。

 それをGlobal-eはデジタルの知見で乗り越えた。一回の購入画面でそれらが全て表示されて、事が済んでしまうことの意味。いかに、それが大きいかがお分かりいただけるだろう。

関税に絡む問題は今後顕在化する

1.国ごとの必要データが肝

 だから、ベクトルが違うわけである。ゼロイチであれば、まずは事業としてその可能性があるのか模索をする段階。関税について考えなくていいとは言わないけど、規模が小さい。だから、そこまで大きな問題にはならない。それよりまず、越境ECの敷居を高くすることなく、お金をかけることなく、海外の人に購入してもらい、届けることが重要だ。

 その意味で、これまで躍進を続ける越境ECのプラットフォームが果たした意義はある。そして、スタートアップ系の企業に、これからも可能性を見出すきっかけをもたらすだろう。僕はそう思う。

 ところが、それも規模が大きくなれば、そうはいかない。Global-eがそれで注力したのは、200以上の国と地域ごとの商取引に必要なデータを揃える事。なぜならそれを把握して、商品登録時に振り分けできれば、殆ど多くのお客様の購入画面でそれらが表示されるからだ。

 「結局、いくら払えばいいのかわからない」。「追加でお金が取られる」。そういったトラブルを未然に防げるわけだ。ただ、彼らはECのプラットフォームを持っているのではない。

 だから、Shopifyのアプリなどに対応していて、そこで連携すれば、それを実装できる。そうすれば、門戸は開かれ、これまで以上に越境ECでのビジネスを拡大できるではないか。そして、世界中のデータが揃っているなら、売り主は、まだリーチできていない国にアプローチすることもできる。

2.海外のお客様がもっと安心して購入できるために

 その土台ができれば、十分。現地通貨での価格表示や決済に対応させたのも、それを最大化させるため。これで、より自然で健全な決済を実現するわけだ。クレジットカードは勿論、それ以外にも現地の主流とされる決済にも極力対応できるようにする。さらには、配送にまつわるオプションも取り入れ、自国で購入しているのと変わらぬ感覚を演出する。

 聞いていて、僕は、事業者とお客様の間に入る“関所”のような役目だと思った。国を超える上でのお金の部分の諸々をまとめて引き受けることで、わかりやすく、シームレスに海外の商品を買えるようにしていく。

 逆に言えば、配送料や関税を加味して、購入を断念することだってあるだろう。しかし、そういう決断がその場でできることこそ、健全な商取引だと彼らは説くわけである。それは同時に、事業者にとってもプラスに作用する。いうまでもなく、必要以上にクレームを生むことがない。

 Global-eに任せれば、決済で諸々の金額がわかっている。ということは、何よりお店は現地法人を持たずに、それら税に関する手数料も各国に対して肩代わりしてもらえる。

3.事業者自体もその関税に関して把握できる

 話を聞いていて、僕が何より痛感したのは、今後は、越境ECも規模の経済になるということだ。

 例えば、生産拠点をどこかに決めておき、商品を世界共通にして、そこから全世界に配送するわけである。世界を視野に入れて、生産をすれば、勿論、受注予測なども必要だが、効率よく、商品を作れるということになる。

 確かに世界が一つになっているし、世界に視野を向けるほど、利益率が高くなる。だから、そのクライアントに目を向けると、グローバルな展開を進めている企業が多いことに気付かされる。だから、生産体制に与える影響をGlobal-eの神吉 真由さんに聞いたのだ。すると案の定、そう。

 例えば、shopDisneyであれば、カタログ自体は殆どの国で全て一緒(日本は違うらしい)。全て一箇所から世界中に配送している。なるほど。つまり、そうなると販売者側が、生産拠点と物流環境さえ、別にそれに相応しい形でカスタマイズしておけばいい。

 なぜなら、Global-eを加えることで、関税などの部分が整っているから、一斉に出荷できる体制がプラスに作用する。こうやって、自らの物流や生産のリソースを組み足せば、Global-eの利点を活かし、数の理論で、ものづくり自体の生産性を高くできる。バラバラで作って送るよりも遥かに良い。要するに、越境ECの使い道が違うのだと気付かされる。

4.知らないでは済まされない「越境EC」の課題

 何が言いたいかわかるだろうか。

 最後の話で触れたのは、世界的な認知を誇る企業の話である。しかし、生産部分に影響をもたらすという意味は、他人事ではなく、必要な進化だ。そもそも越境ECの捉え方が違うだけのこと。

 つまり、これからの越境ECは、通り一辺倒ではないということだ。だから、なにも既存の越境ECのプラットフォームについて、僕個人は云々言いたいわけではない。そもそもの「KPI」が違うというだけのこと。

 ゼロから一にしていく過程で大事になるのは、簡易的に購入フローが作れて、物流をまとめてもらって、受注が入り次第、出荷できる体制だろう。でも、逆に言うと、Global-eはそこの部分に関しては、荷主サイドに裁量を任せている。それで成立するのは、そもそもの越境ECに対しての売主のビジネスの向き合い方が違うからだ。だから、それはそれで上手に、Global-eを使いこなしていて、どちらが正解ということではない。利用する販売者側の使い分けなのである。

5.世界を一つに見る時代

 すると、最初の彼らの話に戻ってくる。多くの国が存在し、また、アメリカでも州ごとにその取り決めが異なる。だとすれば、それを一企業が把握してコントロールするのは現実的ではない。その説明が何を意味するか、今はわかるだろう。

 それゆえ、僕は時代の流れだと言った。もう自国の手の届くところで商売をする時代ではないのだ。Global-eの存在に、僕は次なる越境ECの視点を見たわけである。規模の拡大に伴う、越境ECの決済の健全化を推進されれば、それはそれで、その流通額は増大するだろう。

 自国にあるものを“ソト”に売るのではない。自国を含めて“セカイを一つ”に商売をしていくのだ。長い目で見たらそれは必要。企業のレベル感に応じて使い分け、まずは、海外でその躍進のきっかけを掴む。そしてその先で、“セカイを一つ”に商売をする日本企業の姿を僕は見てみたいのだ。

 今日はこの辺で。

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