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行ってみた!「 BRANDE 」新しいスーパーマーケットの定義はここから

 ものを売るだけの場所ではなくなった小売店が、デジタルを取り込みながらどう変貌を遂げているのか。それを考えるべく、この日、僕はカスミが運営する「BLANDE 研究学園店」にやってきた。東京から1時間ほど、今発展途上の都市である。若い街だから、新しい感覚を備えた人が多く、この地での先進的な取り組みも、理にかなっているのかもしれない。

培ってきたものを活かして顧客体験の向上を

1.まだ若い街でだから実験的取り組みもできる

 カスミは茨城や千葉を中心にスーパーマーケットを展開しており、「BLANDE」はつくばに2店舗だけ存在する。ただ、そこには従来のスーパーマーケットから脱却しようとする姿勢が見られる。また、行ってみるとわかるが、この周辺はまだ開発途中の土地も多い。ほら、この通り。

 僕は研究学園の駅から徒歩で20分ほど。お店はこのような感じ。駅にはレンタルサイクルがあるから、それで移動すると結構便利なんですよとスタッフの方に教えられた。なるほど。

2.QRコードでチェックイン

 入り口付近には、チェックインのQRコードがある。

 その際に使うのが「スキャン&ゴー」というアプリ。それでチェックインすれば、あとは商品のバーコードを読み込むだけで、スマホ上のカートの中に入る設計だ。

3.種類が豊富で主張とテーマがある

 扱う商品は、生鮮食品から調味料、弁当など。いわゆる「スーパーマーケット」でスペースを贅沢に使い、余裕を持たせた開放的な空間である。例えば、「ビヨンド・ミート」など、代替肉市場を牽引するブランドを並べていたり、テーマ性を強く感じる内装である。品揃えも、全国の特定の地方で採取できる特産物や調味料などもあって、店自体がショー・ルームの色彩を漂わせ、楽しい。

 お昼時だったので、「ビヨンドビーフ」のガーリックライスをつい、食べてしまった。上記の通り、売っている食材に、ビヨンドビーフがあるから、それを調理して弁当にしたのだろう。ビヨンドビーフ自体はそれなりの単価なので、まずこの弁当でその味見をしてから、購入へと繋げるという狙いもありそうだ。

 食材が豊富だからこそ、その場で調理をする動きも見られ、だから弁当の数も豊富で、個性的だ。

 「つみれ汁」も、寿司の売り場の近くにあったから、寿司に使われなかった部位を使って作成したものだろう。出来立てほやほやとは言え、少々、ぬる目かなとは思った(失礼!)が、やっぱり美味しかった。

 素材を無駄にしない姿勢など、彼らの考え方が売り場に垣間見られるのは好感触だ。

顧客体験の向上に必要なDX

1.食材が集まる利点を活かして

 さて、そもそも、ここに来ようと思ったきっかけは、オムニチャネル協会である。オムニチャネルDayでカスミ代表取締役山本 慎一郎さんの話を聞いたからだ。

 スーパーマーケットという業態を改めて定義し直し、DXを推進。その動き自体は、省人化と受け止められがちだが、彼が強調していたのは顧客体験の向上であった。

 それは単純にデジタルにするというだけではない。業態の構造的な変化だ。

 DXにより簡略化を図り、その分、適度な量の食材を豊富に仕入れる。あわせて、人と調理などの要素をミックスさせて、別の付加価値を生む。下の写真の通り、フロアの中央で調理をしている人もいた。

 調理ができる環境を備えていれば、出来立ての状態で調理品を届けられる。ネットスーパーとしての側面で実装したリソースを、ここで加工品にすれば、フードデリバリーにまわすことができる。

 よく考えてみてほしい。今までは物を売る場所でしかなかった。でも、いまやこの場所はフードデリバリーの加工品の調理場であり、ネットスーパーの倉庫であり、食品を楽しむテーマパークである。なんとも、マルチな拠点を意図しているのである。

2.時代を経て役割は変わる

 そこまで転換する理由は、どこにあるのか。

 そもそも、スーパーマーケットは60年前から存在し、その役割が変わっているからである。当初は、商店街の一部で、競合は近くの魚屋や八百屋、雑貨店など。彼らは、総合的に食品など扱う利点を訴求し、集客を生み出して、そこに生産性を高め、価格も反映して、その影響力を拡大してきた。

 その総合力が必ずしも通用しなくなってきた。昨今はドラッグストアなどでも彼らの得意とする食品が扱われ、わざわざスーパーに来なくても良くなったのである。だから、ただ売るだけの姿勢では到底、通ってもらえない。では、その業態としての特性を活かす手段とは何か。まさに、その突き詰めた議論の先に、DXの必要性が出てきて、このような地道な転換を図っているというわけなのだ。

 先ほども書いた通り、体験を重んじて、商品との出会いを演出するわけだ。テーマ性を感じさせる品揃えもそう。そして、それを伝えるデジタルサイネージも至る所で見られて、その裏側の物語も見えてきやすい。

 さらにワインを買うにしても、いきなり高価なものは買わないから、きっかけづくりをする。最初から5,000円のワインを売り込むのではなく、それを50ccのカップに入れて、声をかけ、どうですか?と呼びかけてみる。寧ろスタッフはそこでの顧客接点の切り札として、機能してもらうわけだ。

3.DXにより買い方の流れが変わった

 また、DXの推進は「Ignica」というデジタルサービスを活用して行われている。それで、リアルが抱える課題にも応えているのだ。

 例えば、「スキャン&ゴー」をきっかけに、アプリがデジタルのハブ的機能を果たし、ネットスーパーなどにもそれを応用していく。同時に、バックヤード側とも紐づいて、店のインフラとして役目を果たしているから、その合わせ技で利便性を高める。

 このバックヤード側の部分における一番の変化は、店内の在庫を全て可視化できるようになったことだと説明する。なぜそれが大きな価値となるか。まさに、それがリアル店舗のデメリットをカバーするからである。

4.エリアでフォローし、個々の店の価値を引き上げる

 リアルは場所という物理的なキャパシティがあるので、フォローできていない食材が存在する。そこで、これらの仕組みで、店単位での在庫を徹底して管理して可視化していく。その一方で、ネットスーパーがそのデメリットをカバーしていくのである。

 というのも、店単位の在庫が可視化できれば、その管理をエリア単位に広げることで、物理的キャパシティの問題を乗り越え、お客様の商材のニーズに応えるわけである。一店舗でカバーできないものでも、周辺地域で見れば、用意できる。彼らの向き合う「DX」はリアル店のポテンシャルをデジタルを取り入れ活かして、お客様の体験価値を上げていくことにあるわけだ。

買い物シーンが変わる

1.商品を購入するその行為自体も変容

 それだけではない。何気ないことだが、購入の仕方も変容している。僕が一番、目に止まったのはこのスペース。店の中に休憩スペースがあるのだ。坪効率を追えば下手すれば、無駄だと切り捨てられそうな発想である。

 でも、そこには「こちらで決済できます」と書かれている。そうか休憩兼レジなのだ。

 これも、先ほどの「スキャン&ゴー」によって可能となる。なぜなら、すでに入店時にチェックインをしているから、そこで商品を見直して、バーコードで読み取れば、決済の準備は完了である。

 カートに入っていれば、スマホ上でクレジットカード、またはPayPay残高で支払いが完了してしまう。レジ置き場でも、なんでもない場所が“レジ”になっている。無駄ではなく、これも行列などを未然に防ぐ要素となる。

2.お客様の買い物の流れが大きく多様化

 「スキャン&ゴー」でレジの必要性をなくして、時間の効率化を図れば、価値ある時間の創出に舵を切ることができる。スタッフはそこに打ち込めるわけだ。同時に、無駄なスペースがなくなれば、引き換えに価値提供の場を作り出せるから、先ほどの調理スペースも理解できる。

 利便性や体験の側面など、あらゆる仕掛けが、買い物にバリエーションをもたらす。

 従来の買い物のシーンと異なるから、カスタマージャーニーも変わっていく。「Ignica」導入前(2019年)では、お客様のカスタマージャーニーが11パターンに過ぎなかったのが、2023年現在で1136パターンに及ぶ。

 そうすると、顧客の属性が特定されるから、パーソナライズデータに基づき、スタッフがアプローチしていくわけだ。リアル店舗も含めて、スタッフは某テーマパークの“キャスト”のようになっていく。これでファンが構築されてくる。

 一個一個、お客様を見ながら、必要なサービスを投入。追加されるほど、他のサービスともそれらは親和性が高いので、カスタマージャーニーは倍に膨れ上がって、また多様性を深める。双方にメリットをもたらすわけだ。

3.従来と違うスタイルで利便性を高める

 また、決済するのは「レジ」だという固定概念を打破すれば、場所に関係なく購入できる。最終的に、その利便性と共に生まれる不正に対して、フォローすべく新しい要素を組み込んでいく。

 店内の出入り口付近には、ゲートがあるのだ。これが、不正防止の意味合いを持つ。実は、全ての会計を済ませた後に、完了を示す「QRコード」がアプリ上表示されるようになっている。

 だから、ここでそのQRコードをかざすことで、外に出られる設計にしている。変化に伴い生まれる課題は、その都度、解決して、前進しているようである。

 また、これにとどまらない。決済が彼らのシステム上で、行われることで、それがお客様のOne to Oneマーケティングに繋げっていく。従来、スーパーなどでもお馴染みな「POSデータ」。それを、この購買データと紐付けすれば、それは次のアプローチのヒントになる。

 すると、だから、テーマでの訴求が大事となって、戻ってくる。試飲や試食などをした商品はどう推移したのかを追えば、誰の心に響いたのかがわかる。それを自らスタッフ主導で行い、進化を果たせる。だから、DXとしての価値があるわけである。

4.体験深掘りしてファンにしていく

 ちなみに、先ほど、僕が弁当を食べたのは併設された「イートインスペース」である。また、すぐ近くには、飲料をその場で入れてくれる場所もある。しかも、そのコーヒーは「サザコーヒー」。おかげでお弁当を食べた後、コーヒーを飲んでくつろげてしまった。

 このコーヒーも実は、有料会員になると、1日いっぱいまでは飲料も無料である。

 スタッフの方に聞くと、先ほどのスキャン&ゴーで「BRANDE」有料会員への遷移ページがあって、そこから登録ができるそうだ。全てがアプリ上で完結していけば、集約しやすく、お客様もわかりやすい。コアなお客様ほど、満足度の高い体験は、デジタルを起点に深掘りされて進化していく。

 しかも、2階のフロアはその有料会員向けのカフェスペース。眺めがいいんです、とスタッフの方。これも、ロイヤルカスタマーの醸成を念頭においた内容であろう。

5.スタッフのアイデアに繋げ、価値を底上げする

 確かにたまに躊躇したり、まだ完全とは言えない部分も正直、ある。ただ、その始まりが2019年。まだ4年の話であり、価値の追求は始まったばかり。

 これから、仕組みの変化とスタッフのアイデアにより、ブラッシュアップされて、新しいスーパーマーケット像が浮かび上がることだろう。

 改めて、リアル店舗における変貌は、顧客体験と共にあり、それこそスーパーの“ハコ”としての捉え方も近いうち一変するだろう。DXは何も省人化というわけではなく、今までにない体験を創出するために存在していて、日々その部分と向き合っているのだ。僕らが考えるスーパーマーケットの定義はこれら、デジタルの浸透と共に根本的に変化をしていくに違いない。

 今日はこの辺で。

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