商品登録から顧客管理まで 際立つ人対人のデータの重要性 楽天市場 戦略共有会2023
楽天グループは新春カンファレンスで、楽天市場の出店店舗を対象に、戦略共有会を行った。その内容については、常務執行役員 松村亮さんが説明してくれた。変わる広告、商品登録のあり方。データの使い方はよりパーソナルに。人対人が際立つ内容だった。
経済圏での相乗効果
1.国内EC流通総額は5.6兆円
その具体的な中身に触れるにあたっては、やはり国内EC流通総額から始めよう。額で言えば5.6兆円まで到達した。そして彼らは10兆円を目指して、その中で「楽天市場」の活性化を謳う。彼らは店舗と互いの役割分担を果たしながら、その“二人三脚”をどう思い描いているのだろうか。見ていくことにしよう。
まず昨今、楽天は国内EC流通総額といって、リアルを含めた経済圏の流通総額を出して、その拡大を狙ってきた。そのスタートは、楽天カードにあった。とりわけ、「楽天市場」は「楽天カード」との相性が良く、両輪となって互いを高め合ってきた。現に、「楽天カード」を使っての「楽天市場」利用者の流通総額は、そうでない人と比べ137%増である。
2.モバイルがカードに続いて未来を牽引
ここに新たに加わる材料が、楽天モバイルだとしている。三木谷さんが直に、店舗に向かって語りかけたこの講演がわかりやすいだろう。経済圏の中枢に据えて推進していくのは、ある意味、ここが未来の伸び代だから。動画配信然り、世の中のインフラがモバイルにあり、だからここでサブスクリプション的に安定した土台をつくる意義がある。そして、そこからポイントが派生する。
土台ができれば、その周辺にある楽天経済圏が相関関係を持って、さらにその利用者に価値を還元していくから、結果、企業としても楽天市場としても発展の中枢であるというわけだ。現時点でも、モバイル契約後のユーザーの「楽天市場」年間流通総額は49%増。つまり、楽天という企業の取り組みにより、経済圏の活性化と「楽天市場」の販売促進をするというわけだ。
店舗がするべきこと
1.多様化する買い物ニーズに応える
その上で、店舗は何をするべきなのか。
まず、ショッピングシーンの多様化を受けての新しいチャネルの利用である。例えば、ライブコマース。実は、ライブコマースを実施した時の流通額は、未実施時の5.7倍に及ぶ。何が言いたいかと言うと、消費者側の購買シーンが変わっている。その流れに合わせて、楽天は、RMSから簡単にそれらの設定ができるようにした。
そのほか、定期購入などを取り入れやすくする。これが、お客様の利便性と、運営の安定につながるのはなぜか。例えば、いつも継続的に買っている商品があったとして、その都度、購入を強いるのではなく、管理上、定期購入のプランも用意していく。そうすることで、店舗と利用者の両方に利点があり、継続顧客になる。
2.SKU対応で楽天市場のUIを向上
いわゆる、店舗側の取り組みに関しては、守りの部分と攻めの部分とがあると思う。ある意味、上記は、攻めの部分だろう。それに対して、守りの備えがSKU施策である。
これも、世の中のECサイトがより直感的な操作で買えるようになっている。SKUとは、在庫管理上の最小単位で商品登録をするというもの。だから、一つの商品でも、色なりサイズなり味なりでわかれていても、一個一個登録する必要がなくなる。一つの商品から枝分かれして商品登録ができるわけだ。
例えば、ノートパソコンを販売するのだとしたらその「容量」の違いによって、価格を違えて表記ができるわけだ。これを例えば、洋服などで言えば、在庫数の多いサイズをわざと金額を変えて、戦略的に売ることだって可能だ。「守り」と書いたが、それは店次第で「攻め」にもなるのだ。
また、最小単位での登録が可能であれば、同じ商材を横並びで比較対照できる。さらに、セット商品に対しても一本単位での表記がなされるので、どれだけお得か判断できる。商品ごと、上手に仕分けをして、お客様の利便性の向上と、売れる可能性を持った商材を発掘する役目を持っているのだ。
3.TDAやRPPなど広告運用にも変化
また、彼らは、広告の内容も変化についても言及し、そこへの理解も促した。
今までは「TDA」といって、配信対象をわけて、ランキング画像などにバナーを表示させていた。つまり、この表示されるごとに課金がなされるものである。ただ、2023年第2四半期からそれを改善していく。具体的には日毎の申込の上限を撤廃し、キャンペーン戦略に合わせた広告運用を実現するという。
さらに2023年第3四半期から「RPP」に関して新しい広告入札機能を取り入れる。お客様の会員ランクに合わせて、入札単価を変えるのだ。例えば、ダイヤモンドランクは69円、ゴールドランクは60円という具合である。
加えて、年度内をめどに「楽天アフィリエイト」のポータルサイトを刷新。SNSからのアフィリエイターの獲得を強化していくとした。つまり、店舗の個性に合わせ、その戦略をお客様単位で細かく棲み分けをして、絞り込んで、アプローチを可能にする。
4.よりお客様へのアプローチはパーソナルに
こういう部分を含めて、店舗に基礎体力をつけることを述べているのである。これがどんな変化をもたらすかというと、パーソナライズ化が進むということ。さらに楽天として、店舗が色々な施策により、お客様の行動が絞られるほど、パーソナライズ化されたデータが集まり、精度が高くなる。すると、今度は、より効果的な指南ができるというわけで、好循環を促す。
システム上、一つ一つのキャンペーンがより、パーソナライズ化された形でナビゲーションされる。例えば、お客様と言っても様々。「楽天市場」ヘビーユーザーだが、「お買い物マラソン」は使わない。「お買い物マラソン」は使っているけど、モバイル未契約。そういう具合にだ。
つまり、楽天の利用状況に合わせてそのバナー表示を変えていくなど、より精度を増した提案が可能になるという。ちなみに、スマホのトップで試験的にパーソナライズされた画面にしたところ、従来より0.15ポイント上昇した。
楽天と店が役割明確に二人三脚で
1.楽天スーパーロジスティクス活用は注文数の10%を占める
こういった要素で、店舗側が自ら、その価値を最大化させる。それとともに、楽天はインフラの構築にも注力していく。要は物流面での改革である。楽天が自ら投資した「楽天スーパーロジスティクス」は、契約店舗数、6000店を超えた。この数は、楽天全体の注文数の10%を占めるに至っている。
早く、そして丁寧に届けることが、顧客満足度に直結する。その部分が大きいことを反映した数字であろう。今や売り込むことよりも、その後の継続に繋げる意味で、物流は肝なのだ。それは、先日のSOYで店舗が口々に話されていたことだ。楽天としては今後、さらにこの配送品質を上げる努力もしていく。大型便の取り扱い、熨斗の対応など、柔軟さが備わっていくと。
だからこそ、店舗に理解をしてほしいと述べていたのが「送料無料ライン」の徹底であった。3900円以上のお客様は、送料が無料になるという設定の協力を仰いだわけだ。結果、それも95%を占めるに至った。
2.店の横のつながりを生かして支え合う構造
そして、最後に、運営上、発生する細かな疑問点に対しては、実績を作り出した店舗との横のつながりと、専門家たるECCによるサポートが肝であること。
昨今、「楽天サービス向上委員会」により店舗は自らで店舗の声を集め、楽天の幹部と議論をする。楽天がそこで持ち帰った案件は、その次の回に報告する。そのような関係性で環境改善に努め、Nationsなどで店舗同士の学びの機会を作っている。
その一方で、楽天のECCは営業ではなく、そのコンサルティングの質を向上させる。tableauを用いて、よりデータに立脚した説明を心がけて、店舗の価値を底上げしていくとしている。
まとめると、経済圏という大きな働きかけは楽天が積極的に進め、お客様を呼び込む。そして、それを受ける店舗側は多様化するニーズに応え、また広告など新しいトライをしながら、よりパーソナライズ化された受注環境を作っていく。
そうするほどに、楽天に集まるデータは、顧客満足度を高める利便性をもたらし、店にメリットをもたらす。最終的に、その大きな決め手となるのは、送り届けるその瞬間。だからこそ、物流の改革にも努め、配送に対してさらに質の向上を目指す。
店舗にしかできないことと、楽天にしかできないこと、うまく掛け合わせて、二人三脚が機能することを祈りたい。
今日はこの辺で。