「ネットで売れる」はどんな意味?au PAY マーケットが提案する未来のECのあり方
コロナ禍が落ち着くなか、ネット通販の付加価値が再定義されようとしている。単純に、売れるモールで販売するという次元ではない。それぞれのモールを使い分けることで、アフターコロナに備えるということなのだ。au コマース&ライフ 代表取締役 副社長 八津川博史さんと恒例の対談をこころみた。色々話をうかがって、それを一番、痛感したのはそれだった。時代は変わっているのだ。
au PAY マーケット が考えるECのこれから
1.買い物が変わる!?
元をただせば、au コマース&ライフのはじまりは「au=通信」からの脱却にあった。実際、au以外の人にも利用され、次に経済圏として「確実に使ってもらう」というフェーズを迎え、コロナ禍で結果、浸透できた。ただ、ここからは恐らく外出機会も増えて、リアルの利用機会も増えていく。
今、ネット通販で大事なのは獲得したお客様に「使い続けていただけるか」にシフトしている。八津川さんが強調するのは、その部分である。それがアフターコロナを考えたネット通販における堅実な成長のあり方であるとした。
2継続を主眼に於いてau経済圏は何をすべきか
だから、会社としては「継続」を主眼において、様々なリソースを投入していく。代表的なものとして、この日明らかにしたのは「au Pontaポータル」。七月から大幅にリニューアルされたサイトの存在についてである。
これまでauとしてはPontaとの連携自体に投資をしていた。ただ、その点と点がまだ消費者には線になっていない可能性がある。ここが彼らにとっての伸び代と考えたわけだ。
そこで、「au Pontaポータル」はPontaを日頃、使っているお客様との接点を、au経済圏の方がとりにいく。
3.ポイント交換所はau Pontaポータル刷新と比較して113%に
その効果は、実際に彼らが想定した通り、ポイント交換所などで顕著にみられ始めている。元々、Pontaポイントは「au PAY」残高にチャージができる。加えて「au PAY マーケット」ではPontaの換金に関して「ポイント交換所」を用意している。そこでは同モールでの利用に関する au PAY残高に関しては1.5倍で換金できるのだ。
この交換所の利用は「au Pontaポータル」リニューアル後で113%になった。
これが重要な理由は単純に同モールの利用を促すだけではないからだ。ポイント活用でお得に活用できることを実感してau経済圏での継続利用へとつながる。
これらを通して、auは安定した購買の土台を作る。その礎となるのは常にau経済圏を利用するお客様。だから、逆に言えば店舗もそこに沿った対応が必要だ。新規顧客獲得も大事。しかし、アフターコロナを見通せば、それ以上に、既存顧客をいかに継続的な利用に繋げていくかの工夫が勝負の分かれ目となる。
店舗側も顧客満足度を高める方向へ
1.プレミアム店舗となることで差別化
その一方で「au PAYマーケット」で着実に伸ばしている店舗にはどういう傾向が見られるのか。それでいうと、「プレミアム店舗」を筆頭にその成果を実感しているという声が多い。
これは、auコマース&ライフが、店舗の店舗スコアや配送状況とかを加味して認定するものだ。具体例を挙げるなら「いづみや」がそれに当たる。実際、昨年のベストショップアワードの総合賞1位である。このような店舗の場合、「auスマートパスプレミアム会員」が商品を購入した場合、送料などが優遇される。結果、他との差別化ができて、伸びやすくなる。
ちなみに、プレミアム認定されていない店舗は、auスマートパスプレミアム特典である「送料無料」や「プレミアム商品購入時のポイント+1%還元」などは提示できないのである。(ただ「スマプレ超祭り」などの大型セール、平常時の店舗側からauスマートパスプレミアム会員向け特典については、変わらず提示できる)。
やっぱり一過性で売るのではない。普段から顧客満足度の高い店舗に対して特典を与え、経済圏として継続に繋がる店舗を守っていく姿勢がここにもみられる。
2.スマプレ会員施策を徹底させる
店側には顧客満足度を向上させる動きを促し、それと連動して「auスマートパスプレミアム会員」への訴求を強化。土台として「Pontaポイント」の有効活用を一般ユーザーには促し、徐々にその利用頻度を上げながら、継続顧客を生み出して「auスマートパスプレミアム会員」の素地を作る。
結果、この動きは店舗に返ってくる。アフターコロナはまさにこの循環の中で効率良くターゲットを絞って個々の店舗が成長していく。そういう未来絵図を彼らは描いている。
八津川さんは更に踏み込んで、各店舗においては今一度、自分たちの魅力の訴求の仕方を変えてみてはどうかと提案するわけである。今まではLPなどで一発勝負の様相を呈していた。けれど、これからはその店の持つ魅力を、今あるリソースを通じて、伝えるべきだと。それは上記の継続顧客につながるという観点で、親和性が高い。また、この経済圏の価値を生かすものだから、と説くのである。
店舗に興味を抱かせるストーリーを
1.食領域の伸びはYOYで116.6%
どのジャンルの店舗が、そういう動きに特に取り組むべきですかね?と聞くと、「全部ですね(笑)」と言いつつも「敢えていうなら食品関係かな?」と話してくれた。それは実際に、2021年度au PAY マーケットにおいて、最も成長した領域は食領域を踏まえてのこと。YOYで116.6%の伸長であるというのだ。
八津川さんはこう話す。2020年度以降の巣ごもり需要に伴い、家飲みが定着したのを背景に、食領域配下の食品カテゴリ、スイーツカテゴリ、お酒カテゴリ、ドリンクカテゴリなど、軒並み、すべてのカテゴリで昨年の流通を大きく上回ったというのだ。
例えば、ここで成果が出ているとすれば、大事なのはこれを一見さんにしないこと。そう強調するのである。
2.ライブTVの新規訪問者数はYOY1252%
今話題にあがった食品でいうなら「誰でも共感しやすい」という強みがある。しかしながら、皆、横一列で素材などその美味しさを表現する事にとどまっていた店舗も少なくない。そうではなく例えばそこで「ライブTV」を活用して、深掘りすべきは、自分たち自身の姿勢や歴史にあるのではないかと。
「海外の調査データで、リアルでの体験でやりたい要素のランキングが出ていました。確かベスト5にも『買い物』がそのランキングに入っていなかった。要は、時代は変わっているんです」と八津川さん。欲しいものがあればネット通販でいつでも買える。その裏返しである。
同時に、デジタルも「リアルと変わらぬ高揚感をもたらしてくれる」という事でもある。それらを踏まえて、両面を発揮するのは、彼らの身近なところで言えば「ライブTV」だろうと。それは実際の数字にもあらわれている。「ライブTV」の新規訪問者数はYOYで1,252%なのだ。
では、その成果が店舗での売り上げにつながっているのか。この点、ライブコマース経由の流通伸長率(FY21上期とFY22上期の比較)で見るとYOYにして486.6%である。確実に「買い物をする」ということが変わってきている中で、店は何を伝えるべきかが問われていると。
3.ライブTVを活用して店の最大化を図るべき理由
それが八津川さんが先ほど、強調した「深掘りすべきは自分たちの胸の内」。そこから生まれる「感動や納得、高揚する気持ち」だとする。
提供者側もユーザー側も環境が整ってきていて、ネットとの向き合い方が変わった。それが先ほどのリアルに対しての印象の変化をもたらしている。だから、これに注力してみて欲しいと。そこで伝えるべきは、海外に見られるライブコマースでのインフルエンサーが主張するように「今なら安い!」ではない。工場にまつわるストーリーなどを伝えればいいと。
「一緒に吉本芸人もいてくれて、誰もがわかりやすく、なごみのあるその入口をつくってくれている」と。その意味でエンタメと笑いは力になる。共に、それが、冒頭に話した「ネットならではの体験」で、ずっと「使い続ける」為の信用を得るということ。
4.今こそモールの役目、店舗の役目を再定義
もちろん、他のモールは他のモールでも、それぞれにヘビーユーザーがいるだろう。けれど、それはau PAYマーケットでも然り。
そこを触発するのが自分たちの役目と割り切る。繰り返すが、Pontaを使ってauのサービス利用を相互に促し、au経済圏の中にいることの付加価値は徐々に浸透している。そんな今だから、だから、店も他のモールと比べて実績が出ている部分で「au PAYマーケット」を使い倒して欲しいと。
これまた、繰り返しになるが、その時のベクトルは継続利用であると。
その方向性は、自然とプレミアム店舗への道がひらけて、真にau経済圏とWin-Winの関係性を築いて、初めて互いに長い視野で売り上げを創出していける。それこそが、アフターコロナを見据えた然るべき戦略ではないかと。
改めて、世間一般的にどこのモールの規模感が大きいか、ではなく、純粋にそのそれぞれの強みに着目して、各々店舗と相性のいいモールを探してもらえれば、と語る。僕、思ったんです。なんか、経済圏を理由にただ広げる戦略って、どうなんだろうと。広げるほど、薄くなるように思わないだろうか?ここに注力する経済圏です、っていうのも大事である気がする。これからは、デジタルが進化する世の中でありながら、そんな人間的な時代を生き抜くために、だから、各々のモールの特性を見極めて、自らを育む行動力を磨こう。
今日はこの辺で。