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「世界の小売業ランキング2022」で読み解く、小売業の最新トレンドと生き残る戦略とは?

 世界の小売業は、コロナ禍、インフレ、サプライチェーンの混乱といった前例のない課題に直面しながらも、進化を遂げている。Deloitteが発表した「世界の小売業ランキング2022」は、そんな小売業界の動向を数字と企業の戦略から浮き彫りにする、まさに“業界の羅針盤”ともいえる存在である。本記事では、このランキングを読み解きながら、今の小売業がどんな課題と向き合い、どう未来を切り開こうとしているのか、その「実態」と「兆し」に迫る。読み進めるほどに、小売業が単なる商品販売にとどまらない、多層的なビジネスであることが見えてくるはずだ。

小売業の「王者」は誰か?トップ10から見える地殻変動

 2020年度の上位10社には、米国から6社、ドイツから2社、中国と英国からそれぞれ1社がランクインした。トップの座を維持したのは米Walmartで、小売売上高は5,591億ドル。続くAmazon、Costcoも米国企業が占めており、米国の小売市場の巨大さとECの影響力が際立つ結果である。

 注目すべきは、中国のJD.comが初めてトップ10入りしたこと。27.6%という高成長率を記録し、成長率5年平均も31.2%とダントツである。さらに、Target(米国)も再浮上を果たした。こうした変動は、単なる売上高の比較ではなく、コロナ禍を経たビジネスモデルの柔軟性、デジタル対応力、さらにはESG戦略といった“質的変化”をも映し出している。

 トップ10社の小売売上高は、全体の34.6%を占め、前年の32.7%からシェアを拡大。まさに“小売の寡占化”が進む中、今後どの企業がこの牙城に挑むのかも見逃せない。

成長の鍵は「オンラインとリアルの融合」:各社のオムニチャネル戦略

 WalmartはECの成長に加え、店舗受け取りやドローン配送、ライブコマースへの取り組みなど、オンラインとリアルをつなぐ戦略を徹底。Amazonも医薬品宅配やガレージ配送など“生活に溶け込むEC”を追求している。Costcoは自社配送網を強化し、Uberとの提携にも踏み出した。

 特に注目すべきは、Home Depotの「One Home Depot」戦略。これはオンラインと実店舗の顧客体験をシームレスに繋げるもので、EC売上が前年比86%増という成果を生んた。TargetもShiptを活用した即日配送やDrive Upなど、消費者の利便性を徹底追求することで、リアルの価値を再定義している。

 “買いやすさ”を起点とするイノベーションが、ECとリアルを分けない世界観を育んでいる今、オムニチャネル化は小売の成長戦略の中核であり、“選ばれる理由”そのものになりつつある。

サステナビリティはもはや「選択肢」ではなく「必須条件」

 ランキング上位企業の多くが、サステナビリティ戦略を明確に打ち出している。

 Walmartは2040年までのゼロエミッションを宣言し、20億ドルのグリーンボンドを発行。Amazonは再生可能エネルギー調達企業として世界最大の規模を誇り、JD.comも環境配慮型のサプライチェーン構築に積極投資している。

 さらに、Ulta Beautyのように詰め替え可能な容器による循環型ビジネスを進める企業も登場。

 服飾業界ではPatagoniaやH&Mが“ファッション・リ・コマース”を推進し、中古市場の成長を取り込もうとしています。

サステナビリティは単なるCSRではなく、消費者から「選ばれる理由」に直結する時代へ。特にZ世代・ミレニアル世代の消費行動は環境・社会への配慮を重視しており、企業の対応がブランド価値を左右する。

地域別・業態別で見る「小売の多様性」:世界250社の勢力図

 上位250社全体を見ると、2020年度は前年比5.2%成長、総売上5兆1,000億ドルという数字が並びますが、その内訳は決して一様ではありません。食料品・日用品セクターの伸びが顕著であり、在宅時間の増加がホームセンターやスーパーに追い風となった。

 一方、ファッション・百貨店業態はコロナの影響を直撃。ランキング上でも、H&MやGAP、三越伊勢丹などの売上は軒並み減少し、順位も大きく後退しています。特にラグジュアリー系の企業は観光需要減少や店舗閉鎖の影響を強く受けた。

 また、地域別では欧州企業がグローバル展開に積極的である一方、米国や中国企業は“国内市場の強さ”を武器にしている構図が見える。つまり、成長の源泉は「グローバル戦略」だけでなく、「地場に深く根ざす強み」にもあるということである。

経済・社会の変化に対応する「レジリエンス」こそが、小売の勝ち筋

 世界的なインフレやサプライチェーンの混乱、さらにはオミクロン株の拡大など、不確実性が続いた2020年度。それでも小売業は全体として回復基調を維持した。

 その背景には、デジタル化による即応性の向上、従業員への投資、サステナビリティへの転換など、“変化にしなやかに対応する力”=レジリエンスがあった。

 大量退職の波に直面しながらも、賃上げやボーナス支給で従業員をつなぎとめ、DE&I(ダイバーシティ・平等・インクルージョン)を企業文化に組み込む姿勢も目立つ。

 また、今後の展望としては、ESG(環境・社会・ガバナンス)対応やAI・ロボティクスの活用による省人化、さらにはサプライチェーンの多極化など、よりレジリエントで柔軟な小売業の姿が求められていくだろう。

おわりに――ランキングの“数字”の奥にある、未来のヒントを読む

 小売業のランキングは単なる業績比較ではない。

 それは、時代の変化にどう向き合い、どう進化したかを映す“成長の物語”でもある。数字の裏には、それぞれの企業が挑んできた戦略、文化、価値観が息づいているのだ。

 本記事を通して、小売とは「売る」だけの仕事ではなく、社会や生活にどう寄与し、どんな未来を築くかを考える仕事であることを改めて実感されたのではないだろうか。

 これからの小売を担う私たちにとって、求められるのは「変化を恐れずに、価値を再定義する力」。その一歩を踏み出すために、こうした世界の動向を自らの“教科書”として活かしていきたいものである。

 今日はこの辺で。

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