巨大ディスプレイ は小さな店舗“DX”の急先鋒 S_martの省人化と在庫の解決
いきなり質問であるが、リアルの店舗の弱点とは一体なんだろか?その答えは陳列にあるのではないか、と思った。そのきっかけが、陳列に着目してDXを行う取り組みを知って、興味を抱いたからだ。ダン:サイエンスという会社が手がけた「S_mart(エス_マート)」という新しい提案である。
ディスプレイ が小規模店舗の“DX”となる理由
1.着目したのが「陳列」
何気ない ディスプレイ 。最初は、興味本位で話を聞いていたのだが、その使い道を聞いて間違いなくそれはリアル店舗の“DX”と呼ぶにふさわしい可能性を秘めているのかもと思った。何かというと、それが先ほどの「陳列」というテーマに沿って考えると魅力的に見えてくるのである。
陳列?と思われた人もいるだろう。大前提として、これまでの発想で言えば、売上は店の大きさに比例している。故に、多くの品揃えで、多くの数量を抱えて初めて、売り上げがまとまるということになる。逆にいうと、それが在庫リスクを生み、また現場での煩雑な作業を生む要因となって、リアル店舗にとってのデメリットになりうるわけで、そこが課題なのだと思う。
だから、ダン:サイエンスが考えたのは大きなディスプレイの中に、それを陳列しようというシンプルな発想である。それがこちらだ。
10坪程度の小さなスペースを使ってディスプレイで実現する小売店である。些細なアイデアであるけど理にかなっている。商品がどれだけ売れても補充しなくていいし、陳列する必要もない。
2,オーダーが入るまで商品を動かさなくていい
倉庫のスペースさえ、確保すれば、オーダーが入り次第、倉庫まで行って、ピックアップして、その場でお客さまに渡せばいい。在庫がなければ、そのまま、お客様の自宅などに届けば良いというわけである。ECを介さずして、そのまま、リアルのお店を活かすデジタル化である。
流れとしては購入商品を決めたら「ご注文」をタッチする。そして番号が割り当てられるので、その番号をレジに伝えれば、商品を裏の倉庫から用意して、会計を済ませることができると。また、極論、商品をそこで渡す必要はなく、そこから直接、配送したっていいだろう。
同社が話すところでは、よくDXなどの文脈でロボットの活用が言われるけれど、所詮、ロボットにしても移動距離があるので、スモールビジネスには向いていないと。
また、店員は近隣の常連客を作り、それをそのまま活かせばいいわけである。駄菓子屋のおばちゃんを思い浮かべればよく、コンスタントに店に足を運ぶ要因だけ作れば、先ほどの在庫部分など、人に負担がかかるものに関しては軽減して、店としての可能性を広げてくれるわけだ。
店員はお客様にとって価値である
1.ディスプレイなら場所を超えて商品を「販売代行」できる
どれだけデジタル化が進んで利便性が高くなろうとも、結局、地元の商店でしっかりお客様とつながっているという現実を見ればわかる通り、いつの時代も必要だ。だから、今あるリアルの地を利活用する必要があって、それゆえにこのディスプレイというわけだ。
また、このお店の価値はそれだけではない。単純に何かを仕入れていた時代とはまた違った提案として、「販売代行」できるという要素もある。
今までは物理的な要因で扱う商品に制限があったけど、これを使えば、遠くに居ながらにして、都会の百貨店の地下の売り場のラインナップと見せ方を表現することができる。つまり、今週は「北海道物産展」来週は「某百貨店のバレンタインコーナー」など、ディスプレイ内で企画をして、ここに接客が完備されれば、店に来る理由が生まれる。都会の百貨店などにおいては、新たな売り先を地方に求めることだってできるだろうと話すわけである。
2.扱う商品の専門家はバックでスタンバイしておけば良い
変な話であるけど、例えば家電量販店のミニ店舗を取り入れておき、都会の店舗スタッフを有効活用する、といったことも可能だ。もしも地方のお客様から炊飯器に関しての問い合わせが寄せられたときには、大規模店の常駐する炊飯器に詳しいスタッフと繋いで応える、という具合に。地方の店を利活用して、売り上げを作りつつ、都会のリアル店舗のスタッフの価値を最大化できることになる。
ものは考えようである。ディスプレイが入るだけで、色々発想は広がる。
これだけのディスプレイはそれなりに、お金がかかるのではないかと話したが、実際のところ、100万円程度でそれができる。耐用年数は5年だという。だとすれば、売上に対して一年あたり20万円分のそれに相当するコストが支払えるのであれば、計算次第では、店はその価値を最大化できるわけである。
改めて、リアルのお店のデメリットは何だろう。それは陳列であり、物理的に在庫を抱えることへのリスクであって、その点、ディスプレイならばそれらの問題を一気に解決する。これもDXであって、リアルにおける店舗の生産性を高めてくれるという、なかなかの着眼点に、僕は納得したのである。
今日はこの辺で。