売らない店 b8ta 渋谷 で新たな革命 ベレアラボ がこの店でフレグランスを並べるBestな理由
本音はこの人に会いたかったから「 b8ta (ベータ) 」の取材に 渋谷 までやってきたと言って良い。「 ベレアラボ 」代表の星 亜香里さんである。「ベレアラボ」はロート製薬が新機軸で提供するフレグランスの事で、語弊を恐れず言えば、フレグランスでありながら、香り自体を売りにしていないところなのである。これが「 b8ta 」のお店に並ぶ商品に相応しくもあり、文化を生む街、渋谷らしくもあってベターというか、ベストなのである。
ベレアラボ の 香 の革命 斬新に花咲く b8ta 渋谷 に参上
「香り自体を売りにしていない」え?何を言ってるの?と思われる方もいるだろう。
「香りに着目して豊かな人生を」と言って、嗅覚の性質を活用して、皆が等しく持っている時間の質を変えていくというものなのであって、この感性こそが僕は大事だと思っている。
フレグランスといえば、例えば「ローズの香りが好き」という具合に僕らは当たり前に、香り自体で商品を選ぶわけだけど、このブランドの切り口はどちらかというと、そうではない。要は、香りそのものの価値を提供していながら、香りから連想されるイメージの方を尊重して、生活を変えていくというわけである。
だから、冒頭話したように、「何の香りであるかより、そこから何を思い浮かべるか」ということになる。浮かべるイメージから逆算して、その香りを作っているのである。13種の香を提供しているが、そのいずれもそうだ。
企業向けにも香りのプロデュースをしていて、遠洋漁業、マグロ漁船の中に香りを導入している。nendoが外装などをプロデュースしているものだが、若い人たちが集まってくることを念頭に置いた。過酷な労働を強いるところから、格好良い漁業をイメージさせ、船室の空間をヒューマンセンタードな作りにして、労働環境も変えた。ベレアラボは「リリーヴィンググリーン」という芝生の上で寝転んだような葉の香りがするものを取り入れたところ、よく眠れると。
面白いのは同じ香りを、気仙沼の臼福本店の事務所にも投入してみたところ、それでその社員の方々が誰から言われることもなく、船員さんのことを思い浮かべて、今頃こういうことをしているだろうと、会話したり、想起するようになったというのである。つまり、これこそが香りそのものより、イメージを先行させて、人と人との結びつきを生んだ新たな価値観である。
香で選ぶのではなく シーンから香りが浮かぶ
それで僕は彼女に直撃するわけである、「何の香りであるかより、そこから何を思い浮かべるかですよね」と。
すると、彼女はうなづいて「香りがあることで空間が賑やかになるんです。目には見えないのですけど、そこに香りというのは空気に浮いていますので、なくなると寂しくなるんです」と。
今って寂しさを強く感じる時代であって、人にずっといてもらうとかというわけにはいかないから、優しく一緒にいてくれるものが必要だというのであって、そこに対しての答えとして香りを挙げるのである。これは深い。言うなれば、香りは目には見えないけれど、実はしっかり生活の一部を埋めているものなのだというわけなのだから。
だから、どうやってそれらの香りを生み出すのかというと、その過程もまた面白くて、世の中にある課題感を思い浮かべて、そこに答える価値観と香りを掘り下げていくのである。
香りが何かのスイッチとなるのはわかりやすい例で言えば、単純に、ご飯のかおりがすれば、なぜかお腹が空いてくるだろうし、海藻の香りを嗅げば夏の日の思い出を浮かべるようなものである。
日常の課題に応える 香りの世界 だから新しい
つまり、香りというのは単純にローズとか決められたものではなく、実は生活に密着して、何らか人に想像を喚起させるものであって、実は「ベレアラボ」というブランドは、そこを意識して、人々の生活に何らかのスイッチを植え付けるものなのである。
星さん自身、子供がいて、コロナ禍で、家にいる時間が増えた時に、そこは仕事場であり子育ての現場となった時に、朝の時間、仕事をすると決めた時には爽やかで明るくなるベルガモットという香りを取り入れる、と。
すると、体の方がその香りを嗅ぐたびに、朝のリフレッシュして仕事をするモードになった時のことを覚えていて、それが自然とその仕事の生産性を高めて、業務効率を上げてくれたと。香りは課題解決としての意味合いを持つことに価値を見出したところに、僕は香りに全く違う可能性があることを思ったわけである。
例えば、先ほどの遠洋漁業のように、香りひとつでその場面へと移動していくことで、人間の豊かさを手に入れる能力を備えてほしいという点が星さんの発想で新しいことなのだ。
そんな斬新なアイテムが集うのが b8ta
冒頭殆どが、べレアラボの話になってしまったが、これらのフレグランスも陳列されているのが「b8ta」という店舗であり、皆さんはご存じだろうか。
こういうまだ認知はなくとも新しい商材を、ただ「売る」為だけに陳列するのではなく、「体験する」ことに重きを置いて、その価値から商品の魅力を実感してもらい、そこから商品の可能性を模索する店。
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店でありながら「売らない」姿勢を貫き、多くの小売業の人達に気づきを与えている。思うに、今回、新たに、トレンドの発信地「渋谷」にも店舗を構えることになって、一皮剥けた気がする。
渋谷 はもっとカジュアルにボーダーレスに
「この店に来れば、新しい視点の商品に巡り合える」。全く新しい切り口の商材を数多く取り揃える中で、商品に対する驚きをこのお店は創出して、顧客に体験価値を提供するから、そういうユーザーを惹きつけ、ここを起点にブームが生まれる。購入もできるが体験に重きを置く。
メーカーはここで出品料を払うことで、陳列し、売上は意図しない代わりに、この新しい発見をもたらすこの空間でのお客さまのリアクションが、その出品料に対しての対価となる。実は、店内の天井などに備えられたカメラなどによって、お客様の数を分析して、そのリアクション(人は特定せずに)可視化され、フィードバックされる。
通常の商業施設では、どれだけの人が商品を見てくれて、どれだけの人にこの商品の魅力を伝える事ができたかを報告する事ができないからこそ、逆にそれがこの店の付加価値となる。
商品の反応をダイレクトに、そのメーカーに教えてくれるから、まだチャレンジ段階にある商品は、そこでの反応を商品企画や販売戦略に活かして、その商品の持つポテンシャルを最大化させて、ヒットを狙うというわけである。
しかも「b8taアプリ」が存在して、商品横のQRコードを読み取ることで、その情報を記憶して、帰宅後も閲覧できるだけではなく、アンケートに答えるなどして、ポイントが貯まる設計になっている。
何よりスタッフにしても売上をノルマとされておらず、その代わり徹底して商品の情報を叩き込まれて、メーカーに代わる第三者のプレゼンターとしての役割を担うとともに、貴重なお客様の声を第一線で上手に集める。
特に渋谷では、バーを思わせるカウンターがあって、この場所らしく感度の高い設計で、フランクな印象で心が和んで会話が弾みやすい。
「べレアラボ」に関しても、星さんはこうした環境が整う渋谷だからこそ、単純に香りを並べてそれを実感してもらうだけではつまらないと考え、シャンデリア風の飾りに香りをつけたのである。飾り一つ一つにポンプがついていて、プシュッとするとそれぞれ違う香りがするという仕掛けである。
商品を通して驚きに出会う そんな場
星さん曰く、「これらはクリスマスを想起させる香り。人々にとって香りを生活になぞらえると、クリスマスの香りは様々あるはず。だから、このシャンデリア風の飾り一つ一つに、チキンローストの香りや、シガーの香りなど、通常のフレグランスにはない意外性に満ちた香りを詰め込んでいます」。
「どれがあなたにとってのクリスマス?」という具合に、それを体験してもらうことに重きを置いたのは、そういう提案こそが、このブランドの精神にも紐づくからだ。香りそのものを売りにしているのではなく、人々の生活を埋めるための香りであることにまず、気づいてもらうためには、このような提案をした方が伝わりやすい。この提案手法が、このb8taの姿勢にも合致している。
これぞ、今に相応しい商品のあり方だと思う。
商品を通して価値観を通い合わせる時代だから大事な店
一度買えばいいのではなく、真に人々の心に合う香りを提供したいという思いはずっと人々の心に寄り添い、一過性の繋がりを生み出すわけではないから、この最初のふれあいこそが、彼らの大事にしたいことでもあるわけだ。
シャンデリアの飾りは、渋谷の特に感度の高い、まるでカフェのようで、バーを思わせる内装にもマッチしていて、それは同時に、「売らない店」の「未知なる商品」の幅を多様化させることに寄与している。
僕は「べレアラボ」に深い関心を抱いて、この地に取材に来たけど、日本初上陸のラーメンの自動販売機「youkai express」というのもあって、未知なる商品の幅は、飲食にも及んでいて、そこ知れぬまた可能性を持った商材は世の中に数多く存在していることを思わせるわけである。
そのカウンターでは、飲食すらも試し、楽しむ姿があって、画期的な商品と触れ合いを作ることとなり、b8taとしても、様々なトレンドを生んできた渋谷の地にふさわしい進化を遂げるに至ったと言って良い。
大量消費、大量生産という枠組みで売れる商材を探す時代はもう変貌を迎えていて、人々は価値ある商品を待ち望んでいて、そこには対価を支払ってでも、充実した生活を求める時代になっている。だから、体験型のb8taなどのお店が受け入れられるし、人々もそういう商品を探している。
また、一方で、ロート製薬などの大手企業においても「べレアラボ」のような、チャレンジングな企画にトライしていて、人々の感性から商品価値が生まれることに気づき始めて、今、また全く新しい基軸の商品が生まれる時代なのであって、お店とメーカーの変化に、僕は新たな時代の到来を感じるのである。
今日はこの辺で。