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山陽製紙 業務用からの脱皮 crep (クレプ)商品 企画 の裏側

 筆者は以前、 商品 企画 をしたことがあって、そこで痛感しているのは、価値と対価のバランスなのだと思っている。それって、実は商品そのものの良さに加えて、パッケージ然り、トータルでお客様にどれだけその価格に見合った価値があるんですよ、とお客様に言えるか。それの難しさを 山陽製紙 の「 crep (クレプ)」での取り組みでもスタッフの方々と話していて、実感した次第である。 

crep は 山陽製紙 の力を違った形で発揮する

 彼らは、創業昭和3年だから老舗に相当する企業で、元々、 工業用製品としてクレープ紙というのを代々、やり続けてきた。クレープ紙と言われてもイメージがつかないと思うが、それもそのはず。工場用製品である。ただ非常に着眼点が秀逸なのは、再生紙なのであって、端材を使って、丈夫で水を弾く紙を作り、それらの強みを活かして、鉄鋼や電線の包装に使って、それが多くの企業から支持されていたのである。

 なんとなくイメージがつくと思うが、もしかしたら読者の人達も見たことがあるのではないか。こちらである。

その紙が生まれる背景

 まず毎日約15トンもの古紙が山陽製紙に運び込まれる。そして、選別された古紙は機械を用いて水と攪拌(かくはん)し、原料の状態に戻す。更には、耐水性を高める薬剤を加えて、その後、原料を抄(す)いていく。こうすることで、工業用クレープ紙の特徴であるシワをつけて完成するのだ。

 何気にこのクレープ紙でのシェアにおいては日本トップクラス。ただ、逆にいえば、それはあくまでも工業用製品であって、一般人に受ける商品を作るとなるとその知見がない訳である。

 そういう話を聞くにつれ、冒頭話した、価値と価格のバランスを思うわけである。

一般向けに新しい着想で挑む

 そこで「ござシート」という商品に行き着いた。電線の包装にも使われるくらいの耐久性と防水。それはピクニックの「ござ」に適切だと考えたからである。これはいい!新しいお客様に受け入れてもらえる!と考えたものの、売れなかったと振り返る。

 商品力があるから売れるに違いない。そんな想いは儚く崩れ、そこで彼らはそれらの商品と向き合う。思いがけず、デザインという部分で光明を得ることになる。

 確かに、いいものを作れば、それが企業の信頼となり、長く使ってもらえる土台にはなる。けれど、それをどう商品として伝えていくかの発信力が問われている。実は蔑ろにされがちだが、デザインの重要性なのである。事実、それで生まれ変わることが多く見られる。

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業務用と一般人向けでは同じ商品でも似て非なるもの

 彼らの商品がドラスティックに変わった。展示会「ててて商談会」に出ていた際に、デザイナーの福嶋賢二氏の目に留まったことがその始まりだ。彼の手により「リ・ブランディング」。素地の風合いは生かしながら、印刷のデザインを工夫。おしゃれなテイストに生まれ変わったのである。

 デザインの重要性は、もう下記の写真に集約されるのではないかと思う。

 この商品は「ピクニックラグ」と言う。要は「ござシート」である。

 単に可愛いからいい。そんなレベルではない。使った時のイメージを想定。そこから相応しいデザインを落とし込んで、それを商品として売り込む、訴求するわけである。

 だから、結果、そのデザインがオシャレだと認識される。ブランドとしてのイメージを確立して、それをデザインに落とし込んで初めて、デザインを使いこなしたと言える。この点が彼らに欠けていた部分だった。

 伝われば、あとはもう簡単。外で草むらなどに敷けば、紙でありながら水に強いなどの特性はそこから伝わる。使い勝手が良いことは買った後で実感してファンとなる。

 そして、ピクニックで使っているシート自体が、再生紙を使ったもの。だから、いわゆるアップサイクルとしての意味合いを持っている。そうすることで、そこでようやく彼らの伝えたいメッセージがお客様に届くことになる。

デザインで引き寄せてその付加価値を実感

 商品というのは、価値と価格のバランスの中にある。どれだけいいものを作っても、それが見た目で伝わらなければ、意味をなさない。そのデザイン性により、付加価値が上がる。そのデザインに何を求めるかなのだ。

 デザイン性の中に、お客様が使うメッセージが込められていて成立する。そこで初めて、価格に相当する価値がある。その判断に至るわけだ。手にとってもらうまでにそのデザインの意味を思う。

 繰り返すが、デザインは単純に、可愛い、可愛くないのレベル感ではない。それ自体が何を表し、どういうイメージを喚起させたいのか。そこを明確にすることで、それ自体が人を吸引する要素になる。

 すると、パッケージも変わる。ほら、この通りである。

ものはいい。それを伝えるためのデザイン性

 勿論、その端材を使って再生紙による取り組みは意義があった。ただ、あともう一歩。それを理解してもらう工夫が必要だっただけのこと。今のものづくり現場にはそこが問われている気がする。

 そこのデザインを軸にして、派生させて、同じ素材で商品展開をする。こうすることで、2021年8月の段階で、ピクニックラグなどは、6万枚を売るに至った。驚き!

 工場などで、鉄鋼や電線の包装に使われる、皺のついた丈夫な紙「クレープ紙」。それは、ごく一部の企業に支持されるだけではないポテンシャルを発揮した。山陽製紙の想いは「crep(クレプ)」というブランドによって、一般のお客様が購入する商品へと生まれ変えさせることに成功したのである。

 今日はこの辺で。

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