LINEギフト TVCM 投入と Yahoo!ショッピング PayPayモール連携 で 新市場を開拓する
生活は変わり、コミュニケーションの在り方が変われば、ビジネスも多様化し、もしかしたらプレゼントの習慣も変わるかもしれない。LINEは記者会見を行い TVCM などを打って「 LINEギフト 」の本格稼働させることを明らかにした。この背景にあるのは、LINEがZホールディングスとの経営統合を経て、eコマースとの連携が強化されることにより生まれる相乗効果に他ならない。
LINEギフト の文化を作るための TVCM とモール連携
1.住所知らずともの破壊力
「LINE」はこれまでも人と人とを結びつけるコニュニケーションツールとして存在し、8400万人を誇るそのインフラをいかにしてビジネスに活用して、事業を拡大させるかにかかっていて、その一つとして「LINEギフト」は存在していたのは言うまでもない。
「LINEギフト」というのは、LINEで関係が構築されていれば、簡単手軽に商品をプレゼントすることができるサービスであって、最大の売りは住所を知らずとも商品を送れるところにあるのだろうと思う。ある意味、プレゼントの既成概念を打破してきたと言って良い。
2.住所が価値を持つECに弱み
でも、正直に言えば、弱点もあったと思う。語弊を恐れず言えば、「LINE」自体が別にネット通販で強さを持っていないから。
だから、今までで言えば、「eギフト」としての側面が強かった。「eギフト」というのは、スマホ上のチケットになっていてカフェでそれを提示すると、コーヒーを飲めるタイプのギフト。これなら、在庫リスクを気にすることなく、また、スマホをベースにしているから「LINE」そのものと親和性が高く、使い勝手が良いからだ。
3.だからeギフトだった
まずこの会見では、勿論、この部分において強化することを明らかにして、まず、新たに「セブン-イレブン」、および「ebookjapan」が出店する。
「セブン-イレブン」からは、セブンプレミアム商品や気軽に贈れるお菓子などに使える、全国20,000店舗以上で引換可能なeギフトで、「ebookjapan」からは、80万冊以上から好きな電子書籍を選べる、“マンガ好きに贈りたい”電子書籍のeギフト。続けて、年内には、ホテル・旅館・レストランの予約が可能な「一休.com」も年内にeギフトで出店を予定していて、幅を一気に広げる。
4.今こそ配送を生かすべくシナジーを
ただ、僕が言いたいのは、そちらではなく、ネット通販としての強さを活かす「配送ギフト」の方である。話を戻せば、ZHDとの経営統合による力がもっとも活きてくるのがこのジャンルだと思う。
「配送ギフト」というのは、配送を伴うリアルの物品に関するギフトであって、ネット通販の知見がこのサービスの質を左右する。この知見がなかったLINEにとってはZホールディングスとの連携がプラスに作用する。
ZHDには「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」といった通販の土台を持っていて商材を数多く持っているからだ。そことの連携を強化すれば「配送ギフト」の領域を取りに行くことができる。ここを補完してこそ、「LINEギフト」の「住所を知らなくても送れる」という最大の強みを活かせるということになろう。
LINEギフト 認知 きっかけ 品揃え でマーケット開拓
1.2000万ユーザー突破
具体的には、彼らは今後、大きく3つ必要な要素として「認知」「きっかけ」「品揃え」を掲げたわけだ。下記の写真の通り、20代を中心にその認知が広がってユーザーの数も増え続け、2000万ユーザーの獲得が見えてきた。
だからこそ、テレビCMというマスの戦略でみちょぱさんや狩野英孝さんらを起用し、20〜40代の人たちにギフトのシーンとその送るイメージを訴求して、LINEが目指す独自の文化を浸透させて、そのマーケットを作り出す。
2.もっと増やす為に広告戦略
そうやって関心を集めることができれば自らそれをやってみる「きっかけ」作りが大事とする。
3.知った上で使いたくなる
そこで、最大90%オフというキャンペーンの実施も行う。ここに自信を見せる理由は、コミュニケーション性であるわけだ。ギフトって感動を演出するものだから、一度、このやりとりがあれば、当事者となると、それを他の人にも使ってみたいという波及効果が生まれるので、それを狙って、ここまで勝負をかけるわけだ。
4.とどめに品揃えを持ってくる
最後に今回一番大きな要因である「品揃え」ということになって、現時点においては下記の通りである。
先ほどから述べている通り、「品揃え」にはYahoo!ショッピングやPayPayモールの営業も参加する。例えば、LINEギフトに向いている店舗に対しては出店を提案していくわけだ。今回の会見にも、Zホールディングスから畑中基さんが駆けつけ、彼は席上、二つのモールの営業をまとめて、「品揃え」部分のバックアップをしていくことを約束した。
5.ヤフーショッピングも巻き込む
実際、新たに800店舗が「LINEギフト」への出店の準備中であることもわかり、その環境は徐々に整いつつある。
「認知」の広がりと「きっかけ」で流通を生み出すとともに、それの受け皿となる「品揃え」に関してもeコマースで培ったヤフーの知見を取り入れることで、LINEの価値の最大化と経営統合の成果の両面を果たす。ただ、一番は「牌の取り合い」ではなく「新たなマーケットを作り出す」事。それはECの文脈で話すなら、それらのモールの出店ストアにも価値をもたらすわけだと説くのである。
時代を先取りしつつ、でもユーザーがついてこれるレベル感
1.ユーザーがついてくるかどうか
冷静に見てこの取り組み自体は「LINE」の付加価値を上げることにはなるが、一番大事なのは、「どれだけユーザーがついてくるか」という部分でないかと思う。
ぶっちゃけた話をすれば、僕はデコメール(LINEのように絵柄を本文に貼り付けて送るメール)を使ってそこに同じように住所を知らない相手にギフトを送るというサービスに関わっていたことがあるけど、「それがデコメールである」という理由が重要だったわけである。
基本的に「お礼をする」「お祝いをする」などの人の心は未来永劫、変わることはない。だからこのマーケットに可能性が大いにあるだろうと僕も思う。
2.一つひとつシナジーをフックにチャレンジ
特に、今回積極的に連携する「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」の商品を使って送れる品数も増え、環境は整ったとも言える。だから言いたい。肝心のユーザーが日常、配送系の一般のギフトをLINEで送ろうと考えるかどうかが大事であると。
LINE自体のUIやUXもすごく大事であり、またeギフトと変わらぬ印象で、配送ギフトを送るとすれば、物流環境の整備も大事になってくるだろう。「LINEである理由」と環境整備は急務であって、そうでなければ、ユーザーはついてこないと思う。でも、一度、それが掴めれば、一気に形成逆転になる。
冒頭に、生活は変わり、コミュニケーションの在り方が変われば、ビジネスも多様化し、もしかしたらプレゼントの習慣も変わるかもしれない、と書いた。だから、彼らのこの本気にかかっている。新しいマーケットを生み出す時というのはそういうものなので、あたたかく見守りつつ、その辺のユーザーの感覚とバランスを考え、丁寧にその裾野を広げていくことができるかどうか。今、彼らがこのジャンルにおける本気がどれだけあるかそこにかかっている。
今日はこの辺で。
参考)ヤフーは新規事業には積極的:Yahoo!マート 経済圏で動き出す クイックコマース