アダストリア にとってのEC 売り買いではなく顧客接点の場所
面白い考え方だな、と。僕はアダストリアの話を聞いていて、バレーボールを思い浮かべた。リアル店、EC、ブランドコンテンツ、スタッフ。この4つをバレーボールのようにパスで繋いで、最終的にどれかの要素で購入に導けばいい。ネット通販 ECというと「ものを買う場所」と思うかもしれないが、寧ろ、顧客接点と考えるのが相応しい。執行役員 マーケティング本部長田中 順一さんの話は従来の アパレル ブランドの発想から一歩抜け出していて、興味深い。
アパレルは特に デジタルで 顧客接点 を創出
1.アダストリアの会員「.st」は1200万人
まず「アダストリア」についてであるが、グローバルワーク、ニコアンド等ブランドを展開する、アパレル企業である。当然、リアルのアパレル店も多く、ここ最近のコロナ禍でダメージもあった。ただ、彼らは、それをものともせずに、ネットに活路を見出して、寧ろ今のほうが波に乗っている。
この話をする上で欠かせないのが、彼らの会員組織。それらのブランドを横断的に皆「.st」という会員組織に属する形にさせているのが特徴。その会員数は1400万人に至る。その会員による売上率は65%も占め、会員制ブランドとしての色彩が強くなっている。
それを支える考え方が実に秀逸でシンプルに「繋ぐ」ということである。それぞれの持ち場でのやれることを常に、他の持ち場へ繋いで、最大化を図ろうとする。僕が、先ほど、バレーボールに例えたのはここの部分である。
データを自分たちのど真ん中の価値に紐付ける
1.顧客IDでお客様を知ることでリアルも変わる
具体的には、下記の(1)リアル店、(2)ネット通販、(3)ブランドコンテンツ、(4)現場スタッフとなる。それぞれの持ち場で新しい施策を考えて、それを矢印のようにして「繋ぐ」。
繋ぐことを意識するから(1)リアル店舗で来店したお客様を逃さず(2)ネット通販の機能を使って、会員としてそれを補完すればいいという発想が生まれる。各々の価値を最大化させるために、すでにリアルやネットなど、それらの役割を今一度、考え再定義したところにこの会社の価値がある。
バレーボールのようにパスを出していくことを念頭にして、各々それぞれの持ち場で一番、お客さまの心に響くタイミングで「買う」という行動を触発すれないいと、戦略を立てておくわけである。
2.だからECは顧客接点
すると、ECの機能でできることはなんだろうと考えるようになる。ただ「売り買い」をする拠点ではないことに気付かされる。リアル店で買うに至らなくてもお客様を、そこへとECへ誘導。まずは顧客接点を作り、リアル店で取りこぼしたものを取り返せばいいのではないかと。だから、ECは、顧客接点としての役割のが大きいと説くのである。
決してしてはならないのは、オムニチャネルという様なバズワードで片付けないこと。それよりは、もっとシンプルな言葉で、本質的に説明していく。だから、彼が強調するのは「言語化」の大事さなのだ。何をどう、それぞれの役目を持つ人たちに伝えれば、各々レベルアップできるかどうかと思案していく。
2.繋ぎの部分を太くしていく
コロナ禍を迎えて彼らは何を思ったか。先ほどの矢印の部分(繋ぎ合わせの部分)を「太く」していけるかが重要になったと語る。
「太く」する為に各々が考えるべきは何か。そこで、初めて核心は何かを思う。「我々の会社はお客様に“どういう価値”を提供していて、どういうお客様にどうなっていただきたいのか」「何故、自分たちが存在するのか」と。それを真ん中に据えて、自分達の存在意義を再構築していくわけである。
そこで、それを果たす上で大事になるのがデータ。そこで、あらためて、顧客接点としてのECが果たす役割は大きさを思うわけだ。「誰が」「どこで」「何を」という要素はそこから得られるわけで、彼らが ネット通販 ECを 単なる売り場と捉えない最大の理由はここにある。
3.ど真ん中の核心とデータの掛け合わせ
まず、ど真ん中にある「核心」。そしてデータとの掛け合わせを考える。そこから、自分たちが提供するべき価値は何かと思い描く。このような順序で考えていく事で各々の価値は最大化される。
「データ」といってもありとあらゆる数字が存在する。KPIも指標を見失えば、意味をなさない。だから今一度、自分たちの原点に立ち返ることの大事さを解くのである。各々のブランドにとってどのデータ、数字が有効なのか。それを考えることで、初めて存在意義を果たすわけである
それが見えれば、その人となりを浮かび上がらせることの意義が出てくる。データと掛け合わせることで、本当にお客さまの求めることに応えられるからだ。
3.セグメントに加えてデバイスの最適化
人となりは実に多様化している。だから属性だけではだめだ。メルマガ開封するかしないか等、細部まで理解して、人によってどう行動が違うのかまで考える。
セグメント等との掛け合わせができれば、「デバイスの最適化」を考慮する。
ふさわしいアプローチは複数用意し、相性がいいものを手作業で実証。洗い出したら、デバイスごとに変えて検証してみる。自動化するのはそこで成果が出てからの話だ。自動化まで行けば、その内容をブラッシュアップさせればいい。
だから顧客接点としてECが大事
売り買いのためにECがあるのではない。顧客接点としてのECの重要さがこの会社を躍進に向かわせたのだ。では最終着地は何か。それは、そのブランドを「好き」になってもらうことでしかないと言い切る。
リアルの価値は存在しながらも、デジタルの持つ力で、人の中身を把握する。いかにして相手に自分達を好きになってもらえるか。そのための関係構築とは何かと。大量に作り、店で売り、残ったものはセールにかける。そこからいち早く脱却して、彼らが追求したものが今成果となって現れている理由がわかるだろう。と
よくデジタルは大事だと言う。しかし、それはお店によって大事の度合いが違うことを認識すべきだ。
デジタルの捉え方を固定概念にとらわれることなく、わかりやすく本質的に、全スタッフを巻き込みながら伝える。そして、自分達の価値をどういかすかを考えるよう導き、顧客満足度へと繋げていくのだ。その結果が1200万人の会員と会員売上率65%である。デジタル化は全員にとって決して難しいことではない。また、会社を救う要因だからこそ、本質的に捉えていくことの大事さを痛感する次第である。
今日はこの辺で。