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商品が売れる理由 受け身じゃない商品と企業

 コロナ禍で人の 価値観 は随分、変化してきた。小売の現場ではそれがどう変わってきているのか。長らくヘルスケアメーカーの販売元事業をやっていて、メーカーも 消費者 の事情に詳しい、日本オリバックの代表取締役 金原巧治 さんに話を聞いてみた。

小売にまつわる変化

 金原巧治さんは元々財閥系総合商社にいてその後、大手流通、証券、外資系シンクタンクの社長室、経営企画、戦略部門、ベンチャー役員を経て独立。2010年からヘルスケアメーカー総販売元事業を経営している方で、物事の視点が本質的で、よくブレストをさせてもらう仲である。

 最近では「オリバックチェア」を販売して、ブレイクしている。姿勢サポートをすることで、健康や美しさにつなげるチェアである。今日は商品の話はさておき(苦笑)、小売にまつわる人の変化について話をした。

1.自分で判断する度合いが増えた

—- 本当にコロナ禍で随分、世の中は変わりました。

(金原さん) そうですよね。今は何を買うにせよ、その物事の判断をダイレクトにしないといけない。そんな時代になったと思っています。今までうちの商品もリアルの小売店で販売していました。けれど、通販の割合が相当増えました。それって、お客様がちゃんと商品を認識して、購入するようになっている。そういうことなのですよね。

—- へぇ、そうなんですね。

(金原さん)例えば、東急ハンズに預ければなんとかなるだろう。そういう企業もいたのは事実です。そういう風にして何も考えていないメーカーは厳しくなると思います。確かに「卸」という言葉の意味は「手放す」ということなんです。しかし、人任せではいけない。「どこ」で「どの様に」扱って、「どういう売り方」をしているか。そういうブランディングができていないと、通販を含め、小売店では売れない。その点、うちはラッキーだったなと認識しています。

—- なるほどー。買う側も“受け身”じゃなくなったって事じゃないですかね?

(金原さん)そうですね。それで今は自らしっかり探して選択する。それで、「これだ!」という風にならないと買ってもらえないということでしょうね。

2.場所に行ってから判断するのがなくなった

—- はい、そこは変わりましたね。

(金原さん)多分、購入に行き着くまでのプロセスが変わったんです。「この場所にいけば用意してくれる。だから、その中でチョイスすればいいよね。」そういう感覚がなくなったんだと思います。すると、誰か親しい人に「どうなのかな?」と相談するか、自ら調べるしかない。結局、「自分が必要なものって何なの?」という発想で買いに行くことになります。

—- ですよね。逆に、企業も自ら意思を持ち、消費者も意思を持つ。かつそれはネット上で同じ意見を持つ人も見つけられる様になった。

(金原さん)この間、展示会にも出ましたが来場者は確かに少なかったです。でも驚いたのは、今回決まった案件が、今までで一番商談から採用に至るまで早かった。

—- へぇええ。企業も意思を持ち始めているってことか。

変化する 消費者 の 価値観

1.バイヤーが調べてきている

(金原さん)つまり、調べてきているんです。展示会といっても、今まではこっちが説明して、それからでした。向こうが理解して社内で説得をして会議をあげて、という過程を辿ります。でも、コロナ禍に入って、バイヤーのほうも商談ができなくなってネタもない。幸いにして、うちはカタログやバイヤーズガイドがあるので知る術があるんですよね。

これは決まるだろう。そう思ったのが、その企業のバイヤーが勉強してきているのです。「うちがどこに卸しているのか」を来る前から知っているんですよ。逆に言えば卸していない箇所を知っているわけです。だから、「その会社に今日、行くのだけど、サンプル一個借りていいですか」という具合に、話が整理されています。

「見積もりはいいです。卸単価だけ教えてください」と。その件、その日の夕方決まりましたよ。

2.消費者も調べてきている

—- それは今までにない動きですね。つまり、それは一般小売にも言えるよって話ですよね。

(金原さん)そうですね。例えば「○×ショップがなんとなく好きだから」って買っていた人も、自分が必要なものは何か?その発想を抱いてから、買いに行く。だから、もう少し絞り込まれて、「こういう商品なら○×ショップにあるだろう」という若干、指名買いに近い感じにはなっています。

—- 情報があるということは人も変えていくのでしょう。しかも、商品名で検索できるものであれば、ネットであれば優位です。でも、リアルだって「こういう商品を扱っている」という類のブランディングは必要でしょうね。今まで以上にもっと何が売られている店なのかを明確にする。そして、発信し続けていけば、消費者とお店の両方にメリットが生まれます。

(金原さん) そう。刺さるところに刺されば、いい。そういうことですね。

—–そうか。「受け身」じゃなくなって何が大事なのだろう。それは、「何を伝えるか」が大事になった。そういうことですね。それがきちんとハマったときに、がっちり売れる。

3.受け身ではなくなって伝える重要性が増した

(金原さん)いわゆる仕事も、受け身じゃなくなってきている。その「受け身じゃなく、、、」ってキーワードですね。その「受け身」って言葉が出てこなかったんですけど、僕が探していたのはその言葉かもしれない。要は、自分が「受け身」じゃなくて、しっかり攻めていれば、お客様もスタンスが決まるじゃないですか。そこで、相手を受け身にさせないというのはこちらの責任であって、今そこが問われているってことなんですよね。

—–そうか。消費者に限らず、企業においても同じなのか、、、。

(金原さん)以前、うちの会社で「フェイスパック」を作ったんです。そこで大抵がフェイスマスクって一枚、300円くらいだったのですが、うちは1200円以上で売れるものを作ったんです。それは原価も高くて600円で、それはサロンに提案したんですよね。原価がそれなりだから、サロンへの卸値も1200円で売っているわけで、相当高い。

 でも、例えば、車がそうであるように質も良いものだと分かって、その対価を払ってくれる人がいるはずです。本当に一番良いと思えるものを買ってくれる人はいるのであって、そこに提案していく事が大事だろうと思ったんです。あえて既存のブランドにあわせることなく、それを刺さるところに刺せたらと。それで、やってみたんです。

商品が売れるのに一番大事なことは何か?を考える

1.売らずにプレゼントして客数が増えた

—–なるほど。漠然といいものを作ったから、というのではない。戦略的に相手を定めて、あえて高いクオリティで攻めてみたということですね。

(金原さん)実は、この話にはちょっとした裏話があって。とあるサロンのオーナーさんは、その商品を販売していなかったんですよ。

—–え??販売していない??さっきの話でいえば、サロンオーナーさんは1200円以上で売れば儲かるわけじゃないですか。

金原さん 施術で使って、お客様にプレゼントしているので売っていないって。でもね、それで月の来客数が増えたのよっていうのです。

—–へぇぇえええ。

(金原さん)驚きますよね(笑)。「売れてますか?」って連絡を入れたら「売らないわよ。あんないいもの、なんで売っちゃうの?売るんだったら、あなたのところから買わないわよ」と。

—–そうか。そのオーナーさんは売る次元で商品を見なかったわけか。凄いな。最終的にお客様が喜ぶために、その商品ができることを考えた。それがプレゼントすること。つまり、全体最適を見た上での部分最適を考えて行動したわけですね。

2.お客様との接点から商品の扱い方を決める

(金原さん)オーナーさんいわく、もったいないと。もしも、それを売ったらその程度、と思われちゃう。確かに、いいものだけど、1200円以上で高いものを売られたというよりは、その方がいいと思ったのよと。

 結局、それで来客が増えているのだから、むしろそちらのが儲かっているわけです。それは本当に勉強になりました。そのオーナーさんのやり方がその商品にとっての価値なのだなあと。それをもし周りに流されて漠然と、売上を追い、妥協して成分を落とし提案していたらだめでしたよね。

—–なるほどなあ。こちらが「受け身」ではなくなると、相手もスタンスが決まる。

 そのスタンスにはそれぞれのやり方があって、プロフェッショナルがある。売り上げだけを追うだけでは見えない真実である。手持ちの材料を顧客満足度にどう繋げるかという視点。まさか商品を仕入れて、商品を売らない発想があるとは。

 でも、それが真実。お客様は決め打ちで自分のお店に来ているとすれば、自分たちのメッセージはそのお客様に対して、どうあるべきかを考えていくことにある。

 コロナ禍は色々な悲劇を生むと共に、人を成長へと駆り立てている部分もあると思う。この記事を読まれている人がこれを機に、一層「受け身」から抜け出して、この時代のピンチをチャンスへと変え、何らか攻めへと転じることを祈りたい。

 今日はこの辺で。

関連記事:オリバックチェア10万台 ヒットの理由 原点は鍼灸治療院

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