プッシュピンで ピアスの痛みを軽減 「PIERCING NANA」の着眼点と工夫の跡
ファッションの一部として、定着している「ピアス」。誰でも当たり前に、使えるものだと思っていた。だが、案外そうでもないらしい。痛くて離脱した人も少なくないから、痛くないように、そのものの設計を変えて、作り替えたという。「PIERCING NANA」というボディピアス専門店の着眼点に迫ったのである。
ピアスの良さを知ればこその商品企画
この日、話に答えてくれたのは、店長 青井史織さん。高校2年生の時からおしゃれの一環でつけ始めて以来、彼女自身がピアスのファンであり、今の仕事は天職だと語る。さて、話を戻せば、彼女が着目したのが、痛くて離脱してしまったユーザーである。
冒頭話した通り、痛みを伴うのがピアスである。彼女曰く、耳にピアス穴を開けること自体が痛く、それ以外でも痛いと思うことは少なくない。例えば、髪の毛を洗っている時でも、引っ掛かるなどして、痛いのである。おまけに、ピンの先端が尖っているので、横向きになると刺さって痛いのである。
確かに痛いのだけど、ピアスの良さを彼女は知っている。それがあることで、華やかになるし、女性ユーザーの声を聞くと、結婚式などのイベントごとには欠かせないという話もある。
痛さを商品力で乗り切れないか
だから、そういう痛さを商品の仕組みで、なくしていけないものか。それで離脱せずに使い続けてもらう事を、ファンの一人として強く思った。そこで、考え出したのが、ねじ式のピアスである。
普通のピアスというのは、キャッチが後ろについていて、そこにピンを差し込んで留める。ただ、このねじ式のピアスは、後ろから前に通して、つけるのである。
だから、そのピンに相当する部分をボルトのような形にしていて、裏側が平になっている。
だから後ろからさして、前から通すわけである。ボルトで作りがしっかりしている分、ピン自体の長さが必要なくなる。ピアスの土台が最小限の大きさで済むから、ひっかりづらくなるというわけなのだ。
よく考えたものだ。先ほどの通常のピアスでは、引っかかりやすいから、着用するのも自ずと一時的にならざるをえない。しかし、形状を変えて、小さくなれば引っかからない。極論、お風呂につけたまま入り、上がってからもドライヤーで髪をとかす時すら、ピアスに意識が取られることもない。
さらに高みを目指してプッシュピン仕様
同時に、さらに、青井さんのピアスの研究は続く。というのも、今度は、一部のお客様から、つけてからの好評さはさることながら、初めのうちはつけられなかったという声を耳にしたからだ。
そこで、彼女は、プッシュピンのピアスも出したのである。今度は、ピアスをキャップ式にしたのであり、ねじ式と同じように後ろで支えてはいる。でも、キャップ式だから、簡単に抜き差しができるように、設計したのである。なるほど。
「前からさして、終わりです」
青井さんの顔はどこか誇らしげである。
ファッションは痛みを伴うけど、だからといって、去るもの追わずでは商売が成立しない。自らのピアス愛があるからこそ、それを商品力により乗り切ろうと工夫を重ねた事を讃えたい。
私も乗り切ってピアスを楽しんでいる
「思えば、私が高校2年でピアスに出会った時もそうでした。痛いのに加えて、私は金属アレルギーでした。ピアスをつけるには不利な環境だったけど、つけた時の気持ちの高まりの方が優ったんです。」
ちなみに、「PIERCING NANA」では勿論、彼女のような金属アレルギー対策もしっかりしている。すでに、インプラントなどに使われている金属ではない素材を使って、アレルギー反応が出ない商品が出ているのだ。
また、ピアスをつける耳への配慮も考え、4,6,8,10mmという具合に、耳たぶの厚みに合わせた提案もしている。少しでも多くの人に、このピアスの良さを感じてもらいたい気持ちの表れである。
楽しさも、その課題も。両方わかっているからこそ成し得たアイデアなのである。商品の裏側には、その商品への想いと愛がある。
今日はこの辺で。