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ECと実店舗の融合が小売を変える:デジタル武装の理由と未来戦略

 「インターネットを介して商品を買う」と聞いたとき、いまや多くの人が“当たり前”だと感じるかもしれません。しかし20〜30年前まで、買い物といえばリアル店舗に足を運ぶのが主流でした。わずかな期間でここまで大きく変貌したのはなぜなのか。その背景と、実店舗がどんな形で未来と向き合おうとしているのかを、「いま」という時代の事例を通して探ってみたいと思います。

1. なぜ「eコマースが躍進したのか」を考える意味

 私たちがデータを活用しようとすると、数字は年々アップデートされていくので「古くなってしまう」リスクが避けられません。しかし、ここで大切なのは「数値の裏にある因果関係を把握する」ことです。

 例えば、経済産業省が公表している「BtoC EC(企業から一般消費者への電子商取引)の市場規模」は、過去10年ほど右肩上がりを続けています。具体的な金額や前年比の伸び率は年度ごとに変わりますが、そこから得られる本質的な知見は「ECの存在感が加速度的に高まった」という点。

経済産業省ec市場規模2020年データ(2023年公表)

なぜなら、、、

ネット接続環境(パソコン→スマートフォン)の大幅な普及

 個人が(年収問わず)モバイル端末を常に持つという生活スタイルの変化

(出典)総務省「通信利用動向調査」

 これらによって“誰もがいつでもどこでも買い物できる”という新しい行動様式が生まれたからです。数字そのものが古くなったとしても、この背景や行動の変化という因果関係は将来を考えるうえでも普遍的なヒントになります。

参考)日本フランチャイズチェーン協会調べでは、コンビニエンスストア既存店(出店から一年以上経った店)の2023年年間売上高は 11兆 1,864 億円(前年比+4.3%)。つまり、eコマースはダブルスコアをつけているということになります。ちなみにコンビニは、2019年に初めて10兆円を超えています。

2. リアル店舗とeコマースの「コスト構造」の違いから読む未来

 データを引用するときは、その意味や背景をセットで理解すると役立ちます。

 たとえば、リアル店舗が抱える固定費(人件費やテナント料など)は売上の15〜20%にのぼると言われる一方、ECの固定費はそれより低いとされます。

 ただし、ECには決済手数料や広告費などの変動費もつきまといます。だから、単純に「リアルよりECのほうが安い・高い」と断言はできません。

 重要なのは「リアルであろうとECであろうと、投資すべき予算の種類がまったく異なる」という理解です。

 リアル店舗を拡大する企業が、ECでは思うように成果を出せなかった事例を見ると、往々にして「リアル店がもう1店舗増える感覚」でECにも予算配分をしてしまったことが原因だったりします。ここでの本質は「構造が違うビジネスに、適切な投資をしているかどうか」という点。

 これはこれからも変わらない視点です。

3. eコマース×実店舗の融合が進む理由

 さらに近年、大手流通企業の動きを見ると、実店舗とeコマースを“オムニチャネル”として一体運営し始めています。

 世界の小売業ランキングでトップを走る企業の多くが、ネット注文と店舗受け取り(ピックアップ)の仕組みを導入するのは「両方の強みを掛け合わせること」が成長の要だと気づいているからにほかなりません。

 ウォルマートは実店舗の圧倒的カバレッジを活かし、ネットで注文→店舗駐車場で受け取りを可能にしました。

 AmazonはEC発ながら、リアル店舗(Whole Foodsなど)を取り込むことで顧客との接点を増やし、オンラインとオフライン双方のデータを活用しています。

 JD.com(中国)やその他のプレーヤーも同様にリアル×デジタルを高速で進めています。

 この動向は「店舗の役割がネットでは埋められない体験価値を生むことにシフトしている」一方で、ネットは「広域にリーチし、個人の動線から詳細なデータを得られる」という強みがあるため。

 顧客体験の最大化をめざす企業が、すべてのチャネルを組み合わせるのは当然の帰結とも言えます。

4. 「人」の心理は変わらないが、「接点」は変わる

 ここで押さえておきたいのは「人のモチベーションや欲求は時代を超えてそう大きくは変わらない」という視点です。

  • • かつては「オタク」と言われていたカルチャーが、いまは「推し活」としてSNSで仲間を見つけやすくなった。
  • • 昔から好きなものを熱狂的に応援する人はいましたが、SNSなどの“接点”の増加によって、周囲との共感や情報交換が広がり、“市場”としても可視化されてきた。

 ここでの本質は、「個人の欲求」と「コミュニティの存在」が掛け合わさって新しいマーケットが生まれるということ。

 今後メタバースや生成AIなどの新しい技術が普及しても、個人の内面(何を面白いと思い、何を求めるのか)はそう変わりません。ただ、人と商品・企業が出会う“場”や“方法”は絶えず更新されるというわけです。

5. これからの小売で大事なこと

 データやトレンドは年々変化します。でも、そこから学び続けるためには、以下のポイントを忘れないことが重要です。

1. データの“数字”ではなく、その背後にある行動変化・因果関係を探る

• 例:「EC市場の伸び → スマホの普及 → 一人一台の購入環境 → 個人行動の最適化」といった流れ。

2. リアルとネットの特性を見極め、役割分担を考える

• 例:リアル店舗=体験の提供、対面接客の付加価値 / EC=広域、データ蓄積、24時間接点

3. 「人の心理は本質的には変わらない」ことを前提に、新しい技術との“接点設計”を最適化する

• 例:推し活×SNS×ECで市場が拡張、店舗イベントでファンコミュニティを醸成 など

4. 経営者や担当者自身が、デジタルに合わせた投資を理解する

• 例:モール出店やアフィリエイトの変動費にしっかりリソースを振り分ける、オムニチャネルのためのシステム投資を評価する など

まとめ:いまを読み解き、これからを構築する

「小売がデジタル武装する理由」は、単純に「ネットが伸びているからリアルを代替する」という話ではありません。

 “人”と“仕組み”の両面で「顧客体験を最適化する」手段として、リアルとネットが共存しているのです。

 ネットの普及が個人単位のデータを生み、それに基づいて顧客ごとの満足度を高める取り組み。それは、今後も新しい技術やメディアが登場するたびにアップデートされていくでしょう。

 しかし最終的に企業が目指すのは「人が何を求めているか」を深く理解し、適切な手段でそれをかなえることに尽きます。

 いま私たちが活用できるデータや事例は、「その背後にどんな仕組みがあり、なぜ今ここまで普及したのか」を知るためのツール。そこをしっかり読み解けば、「次は何が来ても対応できる」だけでなく、小売の未来を自分たちで切り拓くヒントにきっとなるはずです。

これから、あなたはどう小売に挑み、どう利用するでしょうか?

 デジタルとリアルが交錯する現在こそ、過去の因果に学びつつ、変わらぬ“人の心理”を見すえた挑戦をしたいものです。

 今日はこの辺で。 

 

 

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