テクノロジーが拓く新たな小売のカタチ──無人店「TOUCH TO GO」の挑戦

いま、小売の現場が大きく様変わりしている。都心の百貨店が苦戦を強いられる一方で、地元のスーパーなどが活況を呈し、人手不足に直面しているという現実がある。その背景には、新型コロナウイルスの影響による消費行動の変化があるのはもちろんのこと、少子高齢化が加速する日本の社会構造が横たわる。そうした状況で、どのように人手不足を乗り越えていくのか。そこにテクノロジーが大きく寄与しはじめている。
TOUCH TO GO は AI の力で人手不足を解消
JR 高輪ゲートウェイ駅にある「TOUCH TO GO」は、その象徴的な存在だ。ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗で、店内に張り巡らされたカメラやセンサーによって、入店した顧客と手に取った商品をリアルタイムに認識。出口付近の決済エリアで商品と金額を確認し、タッチパネルで決済するだけで買い物が完了してしまう。
最新の発表では、その認識精度がついに 90% に到達したという。つまり、顧客の行動をシステムがほぼ正確に捉え、レジ業務を自動化できる段階まできたのだ。この事例が示唆するのは、小売の省人化・無人化が“未来の話”から“すぐ隣にある現実”へと変わりつつあるということ。
AIが支える“小売の当たり前”への変革
外出自粛や非対面が求められたコロナ禍で、こうした無人店舗は感染症対策としても注目を集めた。しかし、それは単なる一過性のブームではなく、人口減少で加速する人手不足や、業務の効率化を求める経営課題への本質的なソリューションでもある。
「TOUCH TO GO」も将来的には、無人AI決済システムを月額サブスクリプション型で提供するプランを見据えている。レジ打ちなどに割いていた人件費を大幅に削減でき、しかも在庫・売上管理までシステムに任せることで、小売業のオペレーションを最適化する可能性が高まるのだ。
ネット通販に象徴されるように、サブスクのビジネスモデルはすでに多くの業界で効果を上げており、実店舗でも同様のメリットが期待される。
地方を変えるインターネットとテクノロジー
こうした動きは、地方にも新たな光をもたらすかもしれない。テレワークやオンライン会議の普及によって、都心のオフィスに行かなくても仕事は回るという事実が社会に浸透した。結果的に、地方に暮らしながら働く人が増えつつあり、地域経済への注目度が高まりはじめている。
しかし、人口が急増すれば当然、店舗運営の負担も増す。
そこで必要なのが、無人化や省人化でより少ない人数でも回せる仕組みだ。インターネットや AI を活用して、何が変えられるのか。「インターネットは既存の社会に何をもたらしているのか」というテーマは、まさにこうした地方へのテコ入れにもつながるだろう。
一極集中を解消し、持続可能な小売へ
一極集中の是正は、都市と地方の両方にメリットをもたらす。地方では消費の活性化やコミュニティの強化が期待でき、都心では過密による交通や感染リスクを抑えられる。テクノロジーによる無人化や省人化は、こうした「新しい流れ」を根幹から支えるインフラになろうとしている。
“人が足りないからできない”で終わるのではなく、“足りないからこそテクノロジーを活用する”。
そんな新しい小売像を、私たちはすぐ目の前にしているのかもしれない。人口減少が進む日本において、地域の店舗がどのように生き残り、さらに魅力を高めていくのか。これからますます、「TOUCH TO GO」のような先進的な店舗づくりが注目されていくだろう。
今日はこの辺で。