FREDDY LECK の挑戦 その“洗濯ネット”が他にはなく、地球に優しい理由
「サスティナブル」という言葉をよく耳にするようになった。逆に言えば、それだけ僕らは無頓着で、だから身の回りを見渡して、気づき、変えていかなければならないという事だ。今回、取り上げる「洗濯」だって僕らが無意識にやっている行為の一つ。だから「FREDDY LECK」はその日常当たり前の「洗濯」で敢えて挑戦する。自ら「洗濯ネット」を新たな切り口で手掛けて、風穴を開け、地球を優しく守るのだ。
FREDDY LECKは洗濯で世の中を変える
1.「FREDDY LECK」とは
そもそも「FREDDY LECK」は、洗濯に関するブランドであり、それ自体が珍しい。お恥ずかしい話、僕はまだ知らなかったが、その起源を辿れば、海外発祥であり、ベルリン北部の運河に囲まれたモアビットという街から起こったのである。
なぜ、洗濯なのか。その理由は聞けば納得である。同ブランドが注目したのは僕ら日本人でもお馴染みの「コインランドリー」である。ただ、そこでこのブランドのオーナー、フレディレックさんは疑問を投げかける。今ランドリーは本来、あらゆるものを“きれい”にする拠点なのに、その場所自体が“きれい”とは言えない環境に置かれていると。その違和感がこの事業へと彼を駆り立てた。
だから、振り幅は大きく、ランドリーとカフェを一体にした拠点を生み出したのだ。その後、それが浸透するのに合わせて、オリジナルの洗剤や柔軟剤を開発して、洗濯で世の中を変えてきたのだ。
2.そのイズムをテコに日本にその文化を持ち込む藤栄
その視点は日本にはない斬新なもので、それをビジネスチャンスと捉えたのが藤栄。彼らは元々、インテリアなどを手掛け、リテールも兼ねて、広くライフスタイル提案をしてきた企業である。その洗濯という可能性に惚れ込んで、そのブランドの看板で、商品の展開を開始した。
「FREDDY LECK」が海外でその市場を確かに捉え、着実に拡大していくそのブランドの知見を取り入れて、自らもそのマーケットを日本国内で根付かせたいと。扱う商品は、洗剤や柔軟剤の他、ランドリーバスケットやハンガー、ブラシなど扱う内容は多岐にわたる。
藤栄はそれをベースに、彼ら自身も商品を手掛け、例えば、最近も「ランドリー洗剤(無香料)」を発売。
彼らもまた「FREDDY LECK」という冠を通して、過去とは違った洗濯での展開で挑戦を行うわけだ。同商品においても、それは洗浄力を保ちつつ、赤ん坊の服にも使える低刺激性を追求した独自の視点を取り入れたもの。チャレンジ精神に溢れている。
FREDDY LECKによる洗濯ネットでの革命
1.日本でも風穴を開ける藤栄
そんな藤栄だからこそ、商品もさることながら、その土台となる、ランドリー文化の醸成にも熱心で、その士気は高い。実はこの日、僕が会見会場としてやってきたのも、東京・学芸大学駅付近の「FREDDY LECK」のランドリーであった。そこはランドリーのイメージを覆す内装。
天井にはシャンデリア、サイドにはパンなどが購入できるスペースがあって、従来の「ランドリー」のイメージとは一線を画すわけだ。華やかで開かれた印象である。
2.なぜ洗濯ネットで地球が守れるのか
では、いかにして「洗濯ネット」で風穴を開けようというのだろうか。ここで藤栄が素晴らしいのは、「FREDDY LECK」の本体から何かを言われるわけでもなく、行動を起こしている点である。洗濯ネットを通して地球環境を助けるであろう、その根拠を添えて、必要性を説き、洗濯で革命をもたらそうとしている。
具体的には、「洗濯ネット」に絡んで彼らが注目したのは「マイクロプラスチック」である。
改めて「マイクロプラスチック」とは何か? それは読んで字のごとく極小のプラスチックの事である。広く使われている定義でいうなら、5ミリメートル以下のプラスチックのことを指す。これが実は海洋汚染を招いているという現実があるのだ。
その流出源の一つは服から落ちた繊維くずである。実は、海中に存在する「マイクロプラスチック」の30%以上が繊維由来である。つまり、僕ら何気なく洗濯する程、海を汚染しているという事になるのである。
そこで発表したのが「ランドリーネット マイクロ」である。
2.通常の「洗濯ネット」とは異なる仕様
写真でお分かりいただけると思うが、生地の目が細かいのが特徴である。
読者の人でも、通常、「洗濯ネット」を当たり前に、使っていることだろう。しかし、その用途として多くの人が挙げるのは「衣類を保護する為」である。網目が微細なので、その意味では通常のタイプより、衣類を傷めることはないと思う。
ただ、彼らが意図しているのはそれもあるけど、それ以上に、マイクロプラスチックの発生を抑制しようという事である。
3.マイクロプラスチックの流出を抑えるために
だから、微細の網目は洗濯時の傷みを抑える事で、その根本的な発生を控えていこうというわけである。しかも、ここがこの商品の真骨頂と言える部分だが、これ自体がフィルターとなる。つまり、発生源にメスを入れるだけでなく、そこから外へと、マイクロプラスチックが流れ出ないようにする。
結果、彼らがこの商品で流出する「マイクロプラスチック」を削減できた度合いは85%である。僕が最初、ブランドの冠がありながら、藤栄がそこまでして、自分たちの意志でこれをやり遂げたことを讃えた理由はここにある。
また、実現できた背景には社会の変化もあるだろうと思っている。実は、彼らとは別に伊藤忠ファッションシステムが「Less Micro Plastic」プロジェクトを提唱しているのである。その中身はこうだ。
- ・出る量を測定
- ・Lessな素材を作り、見つける
- ・Lessな素材・商品を広める
- ・lessな使い方(洗い方)を提案する
これも聞けば納得なのだが、伊藤忠商事も、繊維を多く扱う。だからこそ、その課題に着目し、自ら改善できることができないかと考えた先に、同プロジェクトがあるというわけだ。藤栄の動きは「ランドリー」というジャンルにおいて、マイクロプラスチックの削減という革命を果たそうと動き、それを支えるという部分では、このプロジェクトが寄与したことは大きい。
4.互いを補完しあって
まさにお互いがお互いの想いに共感する動きが為せる技。それゆえ両社は協力しあう形で、今回の「洗濯ネット」の誕生となったわけである。
社会は大きく変わっている。何より産業の発展は、工業化の中進んできたけど、それは一方で自然など、僕らが生活する大事なインフラを少し、蔑ろにしてきた。世の中はSDGsが叫ばれているけど、その言葉に関係なく、今本当に、行き過ぎた部分に対しての「より戻し」が必要な状況になっている。
この日、京都大学の地球環境学堂 准教授田中周平さんも参加していて、マイクロプラスチックによる生態系への影響について言及していた。小さな生物ほど、プラスチックを排出する量が少なく、深刻であると。魚であればエラや脳にも付着して、臓器にも影響していくと。今こそ、過剰な産業発展のために過去、犠牲になっていたそういう部分への配慮が必要である。
5.産業化のより戻し
その「より戻し」は誰か一人でなし得るものではない。メーカーや消費者、地球に関係する全ての人の想いがなければ、ならない。だから、ここからが本番だ。藤栄の提唱を基点に、消費者を変えていけるか。その意味で藤栄がここ数年、「FREDDY LECK」というブランドを通して、地道に向き合った「ランドリー」という文化の国内醸成は極めて大事である。
なぜなら、そこにはその価値を理解して受け入れる消費者が既に存在しているからだ。その土台固めがあるから、今こうして新しい「洗濯ネット」の提案ができると言ってもいい。今は頭ごなしに商品をマスメディアの力を通じて、訴求するのとは訳が違う。企業が自らの行動を通して、自らの想いに近いところにあるユーザーを作る時代である。
さあ、我々自身が行動を通して、変えていかなければならないフェーズにある。
これからはもう無頓着では済まされない。藤栄はランドリーブランドを通して、その意識を伝える。自らそのブランドのもと培った価値観と、お客様との関係構築。そしてそのマーケットでやり続けてきたからこそ、自らが気づけた今回の視点。自らやるべきことへの挑戦する彼らの姿勢を讃えたい。それらは、地球を変える、未来にとって大事な一歩である。
今日はこの辺で。