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榮太樓總本鋪 “革新” は “伝統” を守る為に 細田副社長に直撃

 最近、ファミリーマートで「 榮太樓總本鋪 」の名を見かけた。200年の歴史を持つ老舗なのに、同店監修「あんこと黒みつのシュークリーム」が近所のコンビニで手軽な価格で買える事に驚いた。その“革新” には“伝統”を守るための覚悟を感じた。それで、僕は株式会社榮太樓總本鋪 代表取締役副社長 細田将己さんに話を聞いたのだ。彼らなりの“伝統”と“革新”とは何か。

榮太樓總本鋪 伝統 に裏打ちされた 革新

1.真逆の価値の接点で何が生まれたのか

 「榮太樓總本鋪」の原点は生菓子。故に百貨店や直営店など限られた拠点で、日持ちやその品質に配慮して販売されていた。一方で、ファミリーマートのようなコンビニはそれとは異なる。大量生産に重きを置き、近隣の工場からすぐに出荷し、補充できる体制が整っている。両者は真逆の個性で価値を持っているわけだ。

こちら、細田さん
こちら、細田さん

 だから、無理にコンビニで販売しなくてもいいじゃないかと思った。しかし、細田さんと話して気づいた。伝統を重んじ、それを貫こうにも、伝わる場所がなければ意味がない。

 お客さんとの接点を絶やさないように。その言葉を絶やさない。だから、変わりゆく流通に敏感になって、柔軟に適応していく。実は、そうすることで、伝統を重んじる事ができる。つまり、伝統を重んじることは、革新の上に成り立っている。

2.屋台から始まった

 振り返れば、彼らは最初、屋台から始まった。そして、百貨店に入るようになったが、それも時代を読んだ証だ。実は、東急百貨店本店の生みの親 五島昇さんに、名店街「東横のれん街」を提案したのも彼らを中心とした老舗仲間たち。勿論、その一角に自らも出店。それによって、デパ地下ブームの先鞭をつけた。そうやって、流通の変化をキャッチし、その時代の生活に溶け込むのは彼らのお家芸である。

 更に、今から30年前には、スーパーなどの量販店への進出に意欲を示した。代々伝わる飴を作る技術。そこに着目して、代表商品である黒飴を量販店向けに作り替えた黒みつ飴や、しょうがはちみつのど飴など、ヒット商品を生み出した。そこでも、「大量生産」と「日持ち」に応えるために工夫をして、企業価値を違った形で浸透させる事に成功したのだ。

榮太樓總本鋪の革新は伝統を今に伝える

1.コロナ禍を思えば、先手先手の意味が見える

 改めて、細田さんは実感を込めて、これには先見の明があったと讃えている。それもそのはず。今まさに新型コロナウイルス感染症の拡大の中、量販店での売上がダメージを軽減している。要は、外出自粛の中でも近所のお店で手にする事ができて、その部分をフォローしているのだ。

 しかし、これも一朝一夕でできることではない。百貨店と量販店、全く異なる市場に向けた商品開発を地道に試行錯誤を繰り返す中で、つかんできた。だから他に先んじて動く、その革新性が大事になる。

 このイズムは不思議と脈々と語り継がれている。

 そこで、最初に記載した「榮太樓總本鋪」監修の「あんこと黒みつのシュークリーム」に辿り着く。流石に百貨店で扱うような生菓子はコンビニ流通では難しい。

 だが自慢の「あんこ」や「黒みつ」であれば供給は可能。そこで、彼ら監修のもと味へのこだわりはそのままに、それらの原材料で再現させて、世に送りこんだというわけだ。

 味に対して妥協はなく、僕も食べたが「榮太樓總本鋪」らしいあんこの主張で、コンビニの他のお菓子にはない貫禄すら感じるものであった。流通への柔軟さの代わりに、味へのこだわりは微動だにしない。

2.榮太樓總本鋪の未来とは

 さて、だからこそ、僕は細田さんに聞いてみたのだ。「榮太樓總本鋪」の未来について。すると「希望を言えば」と前置きして、その一つとして「生協」の名前挙げた。

 「え?生協ですか?」

 その意図はどこにあるのだろう。「私たちの原点は生菓子にあります。ただ、それは冷蔵、冷凍が必要だから、自分達なりにも通販でそれをやってきた。けれど、その配送料がネックになるんです」と。

 つまり、生協であれば、日頃、生鮮食品などを運んでいる。だから、生協でそれらを冷蔵冷凍で販売できれば、それらと一緒に運んでもらえる。それであれば、配送にかかるコストを考える事なく、真に彼らの味へのこだわりが提供できるという事なのである。要は、裾野が広がるってわけだ。

3.新しいお客様に行き渡ることこそ、伝統を守る

 「はい。『榮太樓總本鋪』というブランド名は浸透している。だから、そこでもし購入してもらえたら、新しいお客様に伝統の味を実感してもらえますよね」。そう付け加えた。

 なるほど。考え方を変えれば、流通は手段である。繰り返しになるが、彼らの核心は流通に目を向けることにある。その味は守り抜く一方で、その新たな「流通」でそれを再現できるための努力を惜しまない。

 なぜなら、工夫次第でそこに乗せて、自分達の価値を伝えられるからである。そういうことなのか。「流通」って大事だ。通販という手段もまた、小売でありながら、形の異なるものである。その流通の変化に貪欲になることっで、伝統を守るための革新的な取り組みのバランスが保たれるのである。

 逆説的ではあるが、伝統を重んじる会社ほど、実は革新的要素を備えているという事だ。

 200年の歴史を誇る「榮太樓總本鋪」もまた、その “革新” は “伝統” を守る為にある。守り続けてきた「味」はブレない代わりに、時代ごとの流通を察知して、伝えられる手段を模索する。かくして伝統と革新のバランスをとっているのだ。

 今日はこの辺で。

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